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Sugartownは恋の都  作者: びん せんと
10/31

第10章~夜間旅行記~

時は、昭和五十八年八月二十六日。

朝早く、震度四の揺れで目覚める。

今日から五日間、夏休み。

同時に、東京へ出発する日。

時が刻まれる毎に、緊張感が増す。

昭吾の家族も、ソワソワしている昭吾に気づきながら、

程よい距離を保ちながらシカトしている。


刻々と、出発の時間が近づいて来る。


シャワーを浴び、コロンを身体に振りかけ、

長い髪にクシを入れ、


「平常心、平常心、」


整髪料で、サイドを後ろで整え、鶏冠を作る。

いつものようにと、心で叫ぶが、

手が少し震え、うまく整わない。

整髪料が、若干多めにはなったが、

真っ赤なボーリングシャツを羽織り、


これで準備OK!!

鏡の中の自分に、惚れてしまいそうな昭吾。


「行って来まぁ~す」


元気よく、家を出た。


広島駅までは、いつもの通勤コース。

夕方の出発だからか?

気持ちが違う緊張感だからか?

通勤コースとは、思えない。


いつものローカル線なのに、


ツアーの待ち合わせ場所は、広島駅の新幹線口ロビー。

夜八時半なのに、

臨時列車に乗り込む人は多い。


いつもの広島駅五番ホームなのに、

なんとなく、違う。


添乗員に尋ねる。


「東京駅の何番ホーム到着ですか?」

「七番ホームです。」


すぐに桃子に電話する。

電話には、桃子のお母さんが出た。


「はじめまして、広島の掛井です。」

「昭吾くん、明日こちらに来るんだね。」

「はい、今から夜行に乗ります。」

「桃子に代わります。」


凄く、緊張した。


「モシモシ、昭吾くん?いよいよだね?」

「桃子、待っててね。一〇時一〇分、七番ホームだよ。」


「うん、わかった。」

「目印にちあきちゃんが表紙の週刊梵凡持ってるからね。」


「わかりやすいね。何両目なの?」

「三両目。後ろの扉から出るからね。

じゃ、また明日ね。」

「おやすみなさい。」


「また明日」か?

桃子に初めて使った言葉だ。

何か、凄く心地よい。


九時五五分、五番ホームに青い夜行列車が、

力強く入って来た。

行き先は『東京』と、表示していて、

その二文字に感動。早々に列車に乗り込む。


次にこの列車から降りる時には、

扉の前に桃子が居てくれる。

昭吾は凄く嬉しくなった。


寝台車ではなく、リクライニング式の普通の座席。

指定された席に着席。

椅子を倒したが、緊張感で目が冴えてしまい、

なかなか眠れない。

臨時列車なので、快速電車並みに停車駅が多い。


家族旅行の子供たちが眠りにつき、

ガタゴト線路の上を走る音だけになっても、

昭吾は眠れず、窓の外をじーっと見ている。


列車は、確実に桃子の住む街、東京を目指している。

日付が変わった頃、昭吾も眠りについた。


目覚めたのが、浜松あたり。

時間は午前五時前。

席の回りを見回すと、

いろんな人が乗り込んでいる。


前にはネクタイをしめた紳士。

横は、友達同士?

綺麗なお姉さんが二人。

その後ろは、寝ているおじいちゃん。

ヨダレが光っている。


待ちに待った、暦の○(マル)の日。


昭吾は洗顔を済ませ髪型を整え直し、

再び席につき、タバコに火をつけた。


静岡で停車し、朝食が配られた。

朝から仕出し弁当は、喉を通らない。


左側の窓には、富士山が見える。

車内で数時間ぼーっとしていた。


横浜を過ぎた頃から、景色は騒々しくなり、

多摩川を渡ると、大都会になって行く。

到着を知らせる車内アナウンスが流れる。


「当列車は、定刻どおり一〇時一〇分、

東京駅に到着します。

九番到着ホームに到着です。」


「はぁっ?」


昭吾は車内で声を上げ、

最後車両の車掌室へとかけ込んだ。


「あの~、七番ホーム到着じゃなかったんですか?」

「すみません、東京駅の指令から指示がありまして、、、」


国営得意な平謝りを済ませ、アナウンスを続行する車掌。

昭吾は、慌てた。


「桃子、パっ、パニックじゃあ!!」





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