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ノアンの日常

作者: ながいら
掲載日:2026/02/24

 町外れの小さな平屋に住んでいる。

朝の散歩帰り、それほど距離が離れているわけでもないのに、少し歩けば辺りの喧騒は虫や鳥のさえずりに置き換わった。


 のどかだ。こんな日は、窓辺に座ってゆっくりお茶でも飲みながら本を読むのがいい。


 しかし、お金が無ければそんな生活も儚い夢だろう。

あいにく、今日の予定は依頼を受けることとなっている。


 ……仕方ない。本を読むのはまたいつかの楽しみとしておこう。表紙が擦り切れるほど読みこんだ本は内容もほとんど覚えてしまっているし、そろそろ新しい本を買ってもいいかもな。


 確か、近々本屋に新しい本が並ぶと店主が言っていたはずだ。


「帰りに立ち寄ってみるか」


軽く身支度をし、玄関の扉に鍵をかけた。


―――――――――――――――――――


 依頼を受けるためやってきたのは、冒険者ギルドだ。

冒険者と言えば、森へ行って魔物と戦ったり 有事の際には高ランクであれば国から招集がかかったりなど、花形と言える職業だ。


 冒険者を生業とし 日々を生きる者は、この町でも4割ほどを占めるのではないだろうか。


 そんな冒険者ギルドで 今日受ける依頼は――――町のゴミ拾いである。張り切っていこう。


 冒険者ギルドで張り出される依頼は、大きく分けて二種類。戦闘系と雑用系。戦闘系は、その名の通り魔物を狩ることが主の依頼で多くの冒険者はこれをこなし生計を立てている。そして雑用系は、これも名前の通りだが 内容としては脱走した猫の捜索から町の側溝の清掃まで、幅広く張り出されている。


 そうこうしているうちに、ゴミ袋が二袋も満タンになっていた。この辺りはポイ捨てが多かった、絶好の狩場だな。覚えておこう。袋の口を縛り、冒険者ギルドへと歩く。


―――――――――――――――――――


 満タンのゴミ袋二個は、銅貨15枚に代わって懐に戻った。

日が落ち始めて、空に朱色がにじむ。その景色にしばらく見惚れていたが、子供のにぎやかな声でふと我に返る。


 そうだ、本屋。これを楽しみにしていたんだった。ゴミ拾いをしているときも本が落ちていたりしないか血眼になって探していたものだ。


 あの本屋の店主は気まぐれだ。昼に店を閉めるときがあれば、明け方近くまで開いていることもある。そういう時は大抵 店内で寝入っているのだが。


 あれで盗みの被害にあっていないのが不思議でならない。

だから、一度試してみたことがあった。本棚から一冊抜き取り、そのまま店を出るふりをした。


 だが背後に気配を感じそっと振り返った。そこには鼻提灯をぶら下げながら見たこともないくらい重厚な本を片手に構えた店主が立っていたのである。恵まれた体格も相まってものすごい迫力だった。


 今にもその角を振り下ろそうとしている店主に命の危機を感じた僕は、咄嗟に店の中へとヘッドスライディングをかまし そのままの勢いで本を棚へ戻した。するとどうだろう。店主は何事もなかったかのように穏やかな顔をし、いつの間にか戻っていた帳場にて豪快ないびきをかいていた。


 そりゃ盗みなど起きないわけだ。あのまま押し通ろうとしていれば、あの本の角を食らってお陀仏だったかもしれない。怖かった。本当に怖かった。


 そんな店主が営む本屋は今日開いているのだろうか。

もうすでに新しい本の口になってしまっているのだ。お預けをくらえばどうなってしまうか。家の柱に頭を打ち付け、鍋とお玉で騒音を奏でる、狂人になり果ててしまう。


 幸い家の周囲には遠くの森が見えるほど開けた草原とまばらに生えた低い木しかないため、隣人に迷惑をかけるようなことはないだろう。


 店の看板が見えてきた。道に面した窓から明かりが漏れている。今日は開いているみたいだ。どんな本が入荷しているのだろう。お金は足りるだろうか。

先走った心を追いかけるように小走りで本屋へ向かった。

初投稿でしたが、いかがでしたでしょうか。今後も気分が乗れば続きやほかの作品を投稿させていただくかもしれません。もし続きをお待ちくださる方がいらっしゃれば光栄の至りでございます。

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