ジュリの性格と稀なスキル
それは、わたしのネー、アカリが婚姻する三日前のことーー。
わたしはこの時16歳になったばかり。
ネーの嫁入り道具を不満げにもせっせと整理をしていた。
どこにいったのかーー姿をくらましていたネーがわたしに駆け寄り、
「冒険者になるわ」と。
赤碧の瞳を輝かせながらあっけらかんとした笑みを溢す。
もちろん動揺したし、困惑もする。
けれど、ネーの性格を熟知しているわたしは、心では呆れめていた。
ネーは一旦言い出したら梃子でも動かない。
仕方なしの言葉を漏らす。
「どうせ、曲がらないんでしょ?」
わたしの言葉に、ネーが喜びを顕にした。
わたしたちはその夜、屋敷を抜け出し夜道を歩いていた。
夜風は冷たく、舞い散る桜の花びらが月夜に照らされていた。
ふと、背中を襲う悪い予感。その瞬間、目眩とともに意識が薄れていった。
「ジュリ、大丈夫?」
ネーの揺さぶりに気がついたわたしは、ハッと目を開いた。
何が起こったのかもわからず、周囲を見回す。
だが気がつけば、
そこはわたしたちが以前いた『ヤマト』とはーーどこか違う。
見慣れない建物、夜空には”二つの月”が浮かんでいた。
「どうやら、私たち何かに巻き込まれたみたいね。
大丈夫よジュリ、心配しないで」
そう言ってネーは、わたしの桃色の髪を優しく撫でた。
「もしかして、母様が言っていた、これは”ねじれ”?」
わたしの言葉にネーは静かに頷いた。
「今さら、引き返せないわ。とにかく、この『ヤマト」から出るしかないわね」
ネーはそう言って立ち上がった。
わたしも軽く頭を振って現実に目を向ける。
「 ふふふ、この世界ーー不思議ーー道は変わってないようね」
ネーがその瞬間、あることに気付いた。
不思議なことに、地形自体は何ら変わってないようだった。
わたしたちは、すぐに『ヤマト』で唯一の港ーー清水港へと向かった。
夜も開け、空が墨色に変わる中、そこには、我が『巫代家』が懇意にしている貿易船が停まっていた。
船内に駆け上がり、ネーが交渉を始めた。わたしも後に続く。
交渉は長引いたが、
「船長。どうかこれで」
ネーはそう言ってダークエルフのグリッド船長の手に、大判金貨を握らせた。
「責任は持てませんからね。野郎どもーー出航だ!」
グリッド船長は、額に冷や汗を朝日に光らせながら声を張り上げた。
「ボーー!」
汽笛を鳴らし、潮風を受けながら貿易船は、大陸を目指して進んでいった。
貿易船は荒波を切り裂き、大陸目指して突き進んでいた。
朝焼けの海は、希望と同時に未知の恐怖を孕んでいる。
甲板の隅で、わたしは揺れる船体に慣れない身体を必死に支えていた。
隣ではネーが、潮風を全身で受け止めながら、好奇心に満ちた目で水平線の彼方を見つめている。
この時、わたしはまだ、この先で何がわたしたちを待ち受けているのかーー
正確には理解していなかった。
ただ、ネーの隣にいることが、わたしの唯一の安心材料だった。
その時だった。
「船長! あれをご覧ください!」
見張り台からの叫び声が、一瞬にして船内の空気を凍らせた。
グリッド船長が顔を青ざめさせながら指差す先には、
海面に巨大な影がうごめいていた。
漆黒の鱗を持つそれは、海竜か、あるいは神話の怪物か。
異世界の猛威が、わたしたちに牙を剥き始めた。
「くそっ、こんな時に限って! 野郎ども、戦闘準備だ!」
船員たちが慌ただしく動き出す中、ネーはすでに船縁に立ち、腰に差した【桜刀・黄金桜千貫】の柄に手をかけていた。
その桃色の髪が風に靡き、瞳は獲物を捉える狩人のように輝いている。
わたしは、震える足でネーの傍に駆け寄った。
「ネー、危ないわ! わたしたちが戦う必要はないでしょう!」
「ジュリ、これが私たちの初めての冒険よ。
それに、この船は私たちを乗せてくれたんだもの。
見捨てるわけにはいかないわ!」
ネーの言葉は迷いなく、彼女の決意を揺るがすことはできないと、
わたしは知っていた。
巨大な怪物が船に迫る。
その圧倒的な存在感に、船員たちは次々と腰を抜かし、
弓を構える手も震えている。
「このままでは……!」
怪物は唸り声を上げながら、巨大な顎を開き、船を丸呑みにしようと迫る。
ネーが刀を抜き放ち、得意の【巫代流舞刀術】で切り込もうとする寸前、
ふと、頭の中に熱い痛みが走った。
――『巫代の血を継ぐ者よ。その力を解き放て』
耳の奥で、そんな声が聞こえたような気がした。
わたしの身体から、これまで感じたことのない黒いオーラが立ち上り始めた。
それが何なのか、全く理解できなかった。
だが、このままではネーが危ない。船が、皆が危ない。
「っ……はあああ!」
わたしは無意識に、右手を突き出す。
手のひらから噴き出した漆黒の魔力が、
目に見えない楔となり、巨大な怪物の影を船体へと縫い付ける。
怪物は、まるで巨木に縛られたかのように身動きが取れなくなり、
その巨体が海に沈んでいく。
ーー沈黙。
そして、甲板に響く船員たちの驚嘆と歓声。
「ジュリ、すごい……! 今の、あなたの力なの……?」
ネーのその言葉に、わたしは震える息を整える。
『月刀・常闇ーーあなたはそれを持っていなさい』
脳に響いた柔らかい女性の声ーー。
その瞬間目の前には、すでに【月刀・常闇】が握られていた。
いつの間に、それがわたしの手にあるのかもわからない。
冷たい刃の輝きは、海面の月光を吸い込み、漆黒に輝いている。
これが、巫代の力が目覚めた瞬間だった。
そして、わたしの「黒き守護者」としての旅が、始まったのだーー。
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【ジュリ・ミシロ(樹里・巫代)】
〝桃髪の黒の戦慄〟
パーティー『リリゴパノア』の攻撃・治癒魔法担当の『魔導師』。
イラストはジュリ17歳。
『ヤマト』出身でミシロ家の次女。
アカリの五つ歳下の妹。
武者修行の旅から帰って来ない義理の兄ナガラを探す為に、
姉のアカリと一緒に『ヤマト』の国を出て冒険者になる。
自身が保有するとてつもない魔力量で、【多重魔法】や【広範囲治癒魔法】ーー【火属性・水属性・氷属性・雷属性攻撃魔法】を駆使する。
イラストはジュリ19歳。
この時の冒険者ランクは『A級』。
ーー【転移魔法】まで使いこなす【魔導士】としては超一流の冒険者。
初対面や知らない人には、生意気な態度を取りがち。
実は姉想いの優しい性格。
小さい胸が常にコンプレックス。
『ヌーブラン』のおかげで『Cカップの胸=小谷山』ができて喜んでいた。
ビヨンド村の新ダンジョンをクリアして『S級』に昇格した。
ーー胸はないが綺麗な美脚の持ち主で『作家』を夢見るキュートな美女。
黒色やボーダーの下着を好む。
一人称はわたし。
ゴクトーに想いを寄せアピールしようとするが、いつも裏目に出てしまう。
巫代家の女性は代々ーー『ボイン』の家系。
最後のイラストはジュリの未来の姿、25歳ーー。
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