表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/21

【10話】レオン様とケーキを食べる


 お菓子屋さんに向かうと、一時間前は閉まっていたドアが今は開いていた。

 

 やっと入れるわ!

 

 胸の前でガッツポーズを決め、意気揚々とお店の中に入る。

 

 私を迎えたのは、店内にいっぱいに満ちている生クリームの甘い香り。

 最高のお出迎えに、私の興奮度はさらに上がっていく。

 

「どれも美味しそうですね!」


 うーん……どれにしようかしら。


 ショートケーキ、チョコタルト、モンブラン。

 ショーケースに並べられているケーキは全部美味しそうだ。

 どれにしようか迷ってしまう。

 

「迷っているなら全て買ったらどうだ? 我慢していた分、好きなだけ食べるといい」

「……いや、それは」


 本音を言えばそうしたいが、今日はレオン様と一緒。

 欲望のおもむくままにたくさんのケーキを食べる姿を見せるのは、ちょっと恥ずかしかった。

 

「レオン様はどれにしますか?」

「実を言うと、甘すぎるのはそこまで得意でなくてな。おすすめはあるか?」

「でしたら、こちらはどうでしょう」


 私が指したのはレアチーズケーキ。

 生クリームを使っていないので、甘いものが苦手な人でも食べやすいはずだ。

 

 レオン様は、私がおすすめしたレアチーズケーキ。

 私はショートケーキを購入する。

 

 店内には喫食スペースが設けられていた。

 テーブル席に向かい合わせで腰を下ろした私とレオン様は、さっそくケーキをいただいていく。

 

 う~ん! 最高!!

 

 口に入れた瞬間、ふわふわなスポンジが広がっていく。

 滑らかな生クリームの味わいが、それを優しく包み込んでくれた。

 バランスの取れた、極上の逸品だ。

 

「おお。これなら俺でも食べられるぞ。しかも、かなりうまいな」


 対面に座るレオン様も、レアチーズケーキを絶賛している。


 美味しいと言ってもらえて良かったわ。

 

 じー……ゴクリ。

 私の視線が、レオン様の食べているレアチーズケーキを捉える。

 

 白き輝きを放っているクリームチーズの層はなんとも美しく、まるで芸術品のよう。

 これは絶対に美味しいやつだ。食べなくても分かる。

 

 食べなくても分かる……けど、食べたい!

 

「…………食うか?」

「よろしいのですか!? ありがとうございます!」


 大喜びで、レアチーズケーキを一口いただく。

 

 やっぱり美味しいわ!

 

 濃厚なチーズのコクと酸味が最高にマッチしている。

 思っていた通りの、至極の美味しさだった。

 

「レオン様も私のショートケーキを一口――って、ごめんなさい。甘いもの食べられないんですよね」

「いや、好きではないというだけだ。食べられない訳ではない。……せっかくだ。一口もらおう」


 ショートケーキを食べたとたん、レオン様は目を見開いた。

 美味しくて感動している――というよりかは、ビックリしているように見える。

 

 やっぱりお口に合わなかったんじゃ……。

 

 心配になった私は、心の声を聞いてみることに。

 

【お、美味しい……! でも、どうしてだろう。……あ、分かったかも。きっとオリビアと一緒に食べているからだ!】


 なんだ。心配する必要はなかったわね。

 

 口角をわずかに上げた私は、

 

「もしかすると、そうかもしれませんね」


 心の声に対しての応えを小さく呟いてみた。

 そんな根拠はどこにもないんだろうけど、もしそうだったのなら素敵なことだと思う。

 

「うん? なにか言ったか」

「いいえ、なんでもありません。……レオン様。楽しいですね!」

「あぁ」


 私とレオン様を包むのは、柔らかくて幸せで楽しい時間。

 このままずっと、二人でこうしていたいような気持ちになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ