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幸せ  作者: yukko
9/37

着手

資料は膨大だった。

この国の収支を記されている。

それだけでは役に立たない。

エリーザベトは財務大臣・ディディエに問うた。


「度重なる戦で赤字に陥っていますね。」

「はい。」

「そなたは如何に対処をするつもりですか?」

「税を課すしかございません。」

「民からですか?」

「はい。」

「貴族からは税を徴収していないのですね。」

「それは、貴族から徴収すべきと仰っておられるのですね。」

「単に徴収しても、その税の分だけ民に重税を課すでしょう。貴族は……。」

「左様です。貴族に税を課すことの意味はありません。」

「民への税は国が決めていないのですか?」

「国税は決めておりますが、別途、領主は税を課しております。」

「それを廃止できないのですか? 王命により……。」

「廃止しても無意味です。彼らは課します。」

「王命に背くような貴族が必要でしょうか?

 陛下に伺っておいてください。そなたから……。

 貴族に税を課すという選択をご考慮頂くように。」

「……承知いたしました。」

「そなたからの進言とすることにより、そなたは貴族たちから恨まれるでしょう。

 たが、国民からは称賛を得られるでしょう。」

「……恨まれる方が遥かに身の危険を感じます。」

「やってください。この国のために……。」

「何故、そのようなことを?」

「民なくして国は無いからです。

 貴族は民の上に立っているのではない。

 立たせて貰っているのです。

 そうでしょう? 何も生み出していないのが貴族なのですから……。

 勿論、私もその一人です。」

「王后陛下………。」

「それと、この資料によれば、敗戦国の賠償金を帝国と公国から得ていますね。

 それには、まだ手を付けていない。」

「はい。」

「その賠償金から施設の費用を捻出します。

 施設で働く者は、家族を失った妻や母にします。

 戦死者の家族を路頭に迷わせてはなりません。

 この旨、陛下に進言してください。

 私は夜しかお会いできませぬ故、そなたから……。

 いいですね。」

「はい。承知しました。」

「陛下のご英断を賜ることが出来れば直ぐに着手します。

 その手筈も、そなたの知恵を私に授けて欲しい。」

「御意にございまする。」


その日は夜になっていないのに、レオポルトの先触れがあった。

そして、初めて国王・レオポルトが王妃・エリーザベトの部屋を訪れたのだ。

カーテンシーで夫を迎えたエリーザベト。


「陛下におかれましてはご機嫌麗しく恐悦至極に存じます。」

「挨拶なぞ不要!

 そなたの試みは聞いた。」

「して……陛下は如何に思われたのでございましょうか?」

「気が急いておるのか?」

「はい。子らを救わねばなりませぬ故。」

「してみよ。

 あの賠償金全て、そなたに任せる。」

「陛下、ありがたき幸せに存じまする。」

「貴族への税だが……朕も考えておった。

 やり方を間違えてはならぬ故に……なかなか出来るまでには至らぬ。」

「御意にございまする。」


その日、国王・レオポルトは翌朝までエリーザベトの部屋に居た。

長く話をし、ベッドの中でも様々な話をして過ごした。

結婚して初めて夫と心を通わせられた一夜だった。

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