すべきこと
新婚初夜の痛みが続くエリーザベトを侍女が急がせた。
レオポルトと会う予定もない。
何も予定がないのに、朝早くに起こされたのだ。
「今日の予定はありますか?」
「いいえ、ございません。」
決まった時間に食事をとるだけがエリザーベトの日常になると分かった。
夫・レオポルトは夜だけやって来る。
後は、何をしているのか全く分からなかった。
誰も教えてくれないからだ。
⦅本当に人質なのね。
何か私に出来ることは無いのかしら?
………祖国だけではなかったのね。
家族を失っている民は……。
戦なのだから、どちらの国にも戦死者が居る。
その当たり前を私はフリーラン王国の国民に教えて貰ったわ。
癒したい。民を……。
何かを成さねば……この国に来た意味が無い。⦆
レオポルトと共に歩めない。
夫の隣に居るのは愛妾・リヴィアなのだから……。
でも、役に立ちたい。
そう願った。
そして、親を亡くした子らの施設の充実をしたいと願った。
それを今夜、夫の部屋に呼ばれた時に願い出るつもりだ。
夫が入って来る部屋に招き入れられた今夜は、叶えて貰えない可能性が高いが……願い出ると決めていた。
「早よう。参れ!」
カーテンシーで挨拶をした。
「もうよい! 挨拶なぞ不要ぞ!」
「陛下、お願いの儀がございます。」
「願い?」
「はい。」
「そなたは何が欲しいのだ。……宝石か?」
「いいえ、宝石は要りません。」
「では、何をそなたは欲する。」
「先の戦で親を亡くした子らの施設に赴きたく存じます。」
「施設?」
「はい。」
「そのような物、無い。」
「無いのでございますか?」
「無い!」
「恐れながら……陛下、子は国の宝でございます。
その子らが育つ国でなければならないと存じます。
施設が無いのでございましたら、私が作りたく存じます。」
「作る?」
「はい。その施設で無事に育った子らは必ず……陛下に深い感謝を致しましょう。
そして大人になれば…陛下の恩為に身を捧げましょう。
どうか、私に作らせてくださいませ。」
「我が王国は……先王の代から戦をしておる。
故に親を亡くした子が多いかもしれぬ。
して、その費用は如何するのだ?」
「それも考えねばなりませぬ。
考えるにも資料がございません。」
「資料を寄越せ!ということか?」
「はい。」
「……やってみよ。任せる。」
「ありがとうございます。」
「ただ、失敗は許されぬことと心得よ。」
「はい。」
「失敗すれば、そなたの命は無いと思え。」
「この命……承知いたしました。」
「それよりも……子はまだか? 懐妊の兆しは無いのか?」
「はい。残念ながら……。」
「そうか………。」
その翌朝、私の部屋に資料が届いた。
そして、説明をする者たちも……。