新婚初夜
エリーザベトは用意された部屋で国王・レオポルトを待っていた。
新婚初夜でどのようにすべきかは教えて貰っていた。
待っている間、初めて会った夫の顔を思い浮かべていた。
愛妾を紹介した時の顔、挙式の時の横顔……。
どれも美しい顔だった。
愛妾のリヴィアと並んでいる姿は美しすぎた。
黒髪で瞳はやや黒みがかった青。
リヴィアは美しいブルネットの豊かな髪を肩から流していた。
⦅子を成すだけの王妃。
子を成せなかったら……ただの人質。
あぁ……子を成してもなさなくとも人質だったのだわ。⦆
部屋にあるバルコニーに出て夜の庭を見ていた。
庭に点々と明かりが灯っている。
⦅庭には出ても良いのかしら?
人質には無理なのかしら?⦆
「そこで何をしている!」
咎めるようなレオポルトの声だった。
「陛下! 勝手な事を致しました。
庭を眺めておりました。」
「夜で見えないのに?」
「はい。点々と点いている明かりを見ておりました。」
「そうか……こちらへ参れ。」
「はい。」
ゆっくりとベッドで待っているレオポルトの前に進んだ。
カーテンシーで挨拶した。
「新婚初夜までカーテンシーか!」
「いけませんでした?」
「否……。」
扉が少し開いていたのをエリーザベトは見た。
ベッドの向こうにある扉が少し開いているのだ。
「あちらは? どなたが控えておられるのでしょうか?」
「気になるか?」
「開いていては気になってしまいます。」
レオポルトは歩いて扉の前に行き、扉を開けた。
全開された扉の前に愛妾のリヴィアが居た。
「この部屋のお隣は、あの方のお部屋だったのですね。」
「否、朕の部屋である。」
「左様でございますか。」
「気になるのなら閉めるが?」
「陛下の意のままに……。」
「分かった。」
レオポルトは扉を閉めて鍵を掛けた。
⦅こちらから鍵を掛けられるのね。
あちらからは……どうなのかしら?⦆
レオポルトはエリーザベトに近づき、ベッドまで連れて行った。
⦅隣に愛妾がいる部屋で新婚初夜を迎えるなどと思わなかったわ。⦆
レオポルトは初夜を過ごしたが、朝までは部屋に居なかった。
初夜を過ごし終えると、隣の部屋に入って行ったのだ。
リヴィアが甘える声が聞こえてくる。
エリーザベトは眠れなかった。