招かれざる花嫁
教会での挙式が終わり、王城のバルコニーに国王・レオポルトと二人で出て国民に結婚を告げた。
その時、エリーザベトは歓声のないフリーラン王国の国民の前に立っていた。
誰一人喜んでいない結婚だと分かってはいたが、ここまでとは思わなかった。
少なくとも近衛兵たちが睨みを利かせていれば新しい王妃への憎しみの眼を向けさせなかったはずである。
しかし、誰にもとがめられない国民は、国王陛下にだけ歓声を上げたのだ。
そして、王妃・エリザーベトがレオポルトの隣に進み並んだ時に、歓声は無くなり、暫くすると罵声が飛び交ったのだ。
「敵だ―――っ!」
「返せ―――っ!」
親を子を返せという国民の心からの叫びだった。
エリーザベトは一歩前に出て、カーテンシーで国民に挨拶した。
それを見た国民たちが急に大人しくなったのだ。
静けさが広がった。
そして、国王・レオポルトは声を発した。
「そなたらは親を子を亡くした。
言いたいことは多かろう。
なれど、この結婚は平和の礎とするためのもの。
それを忘れないで欲しい。
朕は、ここにエリーザベトを王妃に迎えたことを国内外に発する。」
歓声が巻き起こった。
「レオポルト陛下、万歳~!」
「フリーラン王国よ。永遠に!」
その声を聴きながら、エリーザベトは自身の真後ろにいる女性に意識が行っていた。
真後ろに居るのは、国王の愛妾であるリヴィア・デ・メディシスだった。
そして、新婚初夜が待っていた。