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幸せ  作者: yukko
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失恋

デュッセルドルク帝国・皇帝陛下がご崩御された。

長らく体調が芳しくなかった陛下だった。

皇位継承は少しずつ行われていた。

公務のほとんどは既に皇太子殿下が担っていた。

それでも、急変によるご崩御だったので、フラン大公は最期に会うことが叶わなかった。

弔問に訪れている王家は、フリーラン王国、エリーザベトの母の国であるイオニア王国、帝国・皇后の国であるイリュ二ア王国、そしてフラン公国である。

フリーラン王国からはフロリアン王太子が妃を伴って弔問に訪れた。

フロリアン王太子夫妻にとって初めての外交だったのだ。

デュッセルドルク帝国皇帝の葬儀はしめやかに執り行われた。

そして、新しい皇帝の即位が教会で行われたのは、葬儀の1週間後だった。

早い即位式の理由は、国内外の安定を保つためであった。

葬儀の1週間後に即位式が行われることを周知していたので、各国の王家は1週間後の即位式までデュッセルドルク帝国に滞在した。

この滞在の間に、フリーラン王国からデュッセルドルク帝国、そしてフラン公国との国交について条約締結を話し合われた。

今までは「不可侵条約だけだった」が、王太子は「同盟国になるための条約締結」を話し合いたいと申し出たのだ。

このことは王家同士で締結をしたいとの申し出だった。


「そちらの大臣には何も話されていないのですか?」

「はい。」

「それは、何ゆえに?」

「まだ、何かを成そうとする者が潜んでおります。」

「それは……大臣かもしれぬと?」

「はい。まだ、炙り出しておりませぬ故。」

「それは話されても良いのですか?」

「勿論でございます。お話せねば成らぬのです。

 その上で、ご協力を仰がねばならぬ時が参るやもしれません。」

「それは、どのような?」

「例えば、国境封鎖などでございます。」

「出さぬためですね。」

「はい。上手くいかぬ場合も考えております。

 出来得る限り、我が国内で対処したいと思っております。」

「王家転覆を?」

「その可能性が高いと思っております。」

「今、国王陛下のお身の安全は?」

「はい。父の傍には長年仕えてくれている将軍がおります。」

「して、その将軍は?」

「はい。我が父の従弟でございます。

 そして、海軍大臣・シモン将軍です。」

「誠に信頼できるのでしょうな。」

「今の大臣たちの中で一番信頼出来得る人です。」

「それならば良いのですが……。」

「シモン将軍は、父が命を助けたことがございます。」

「なんとっ?」

「幼き頃に一度と、戦において一度。

 幼き頃は遊んでいて父に大怪我をさせてしまったということでした。

 それを、父が助命嘆願したのです。

 二度目は、戦において作戦を過ち、オベール将軍達から処分を求められた時に、

 父は処分をしなかったのです。

 結果、オベール将軍は不満を抱き、あのようなことをするに至りました。

 ただ、結婚についても政略ではなく恋愛結婚を許したのも父でした。

 今までの長い様々なことがあり、シモン将軍は父を敬愛しているようです。」

「そうですか。それなら……ですが、安心は良くないと思います。」

「はい。肝に銘じます。」

「この条約については、我らだけで署名することは難しいが締結に至るまでの話し

 合いを王家だけで行うことは出来る。

 先ずは王家だけで条約の是非から始めましょう。」

「有り難き幸せでございます。」


条約についての是非委の話し合いが終わった。

フロリアン王太子が別の話を始めた。


「我が弟のことでございますが、条約締結が出来た暁には国に戻して頂くことは可

 能でしょうか?」

「勿論、可能である。」

「左様でございますか。

 私にとりまして、私の右腕になる大切な弟でございます。

 成人する前に返して頂ければ幸いでございます。」

「出来得る限り、希望に応えよう。」

「ありがとうございます。

 ………フラン大公、お願いがございます。」

「私に? さて、何でございましょうか?」

「貴公には、公女がいらっしゃると聞いております。」

「はい。二人おります。」

「その公女……エリーザベト様を我が弟の妃に迎えたいのです。」

「なんと……仰せになりました?」

「エリーザベト様を我が弟・レオポルトの妃に迎えたく存じます。」

「……勿体ないお話ではございますが、エリーザベトは先般婚約いたしました。」

「ご婚約を…………それは、どの国の王子で?」⦅レオ……遅かったよ。⦆

「我が弟の妻の甥でございます。」

「………そうなのですね。」⦅レオ……可哀想な我が弟………。⦆

「フロリアン王太子殿下、お許しを。」

「いいえ、知らぬこととはいえ、婚約者がおられる公女に申し出て……

 こちらこそ、申し訳ございません。」

「一つ、お聞かせいただきたいのですが……。」

「何でございましょうか?」

「それは……娘をフリーラン王国の第二王子との縁はどなた様のご意向でございま

 しょうか?」

「それは、我が弟の想いでございます。

 レオポルトはエリーザベト様に恋しております。

 私は弟の恋を叶えてやりたかった。

 ただ、それだけでございます。」

「レオポルト王子殿下が……エリーザベトを……そうでしたか。」

「はい。なれども、弟には諦めるように申し伝えます。」

「申し訳ない。」

「いいえ。

 ………では、条約締結までよろしくお願いいたします。」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」


⦅レオ……済まぬ。遅かった。

 レオ……そなたも私と同じように叶わぬ恋に身を焦がすのだね。

 いつか……癒えるその日まで………。

 レオの涙を見たくはなかった………。⦆


フロリアン王太子はレオポルト第二王子にエリーザベトの婚約を話した。

レオポルトの落胆は大きく……何も出来ない日を送った。

それでも、時は流れていく。

それはレオポルトの祖国も同じように時が過ぎて行き、その中で……再び暗雲が見えて来た。

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