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葦の茂みで遭難する。
コロガシ釣りをしてるうちに最初に釣り始めた場所よりかなり下流に来てしまった。
背中には自分より背が高い葦が生えている。
釣ってる時にチラッと見たけど護岸に向けて20mくらいは生えていたか。
川の縁まで葦が生えており、葦が生えていない上流まで流れに逆らってまで移動するのはかなりしんどい。
突っ切るか。
決断して葦の中に身を投じた。
葦をかき分けながら2分も歩いたか。
出れない。
20mしかないはずの葦の茂みから抜け出せない。
心臓がバクバクし、炎天下の中スーッと血が下がっていくのがわかる。
神隠し?
それとも狐が鮎を置いていけと言ってる?
急に恐怖を感じ闇雲に手足を動かし前進する。
2、 30分たっただろうか。
急に目の前が開け川に突進しようとなり、慌てて足を止める。
川に背を向けて葦の林に入ったのに、目の前に川があった。
どうやら釣りを終えたところより50m下流のようだ。
真っ直ぐ進んでいるつもりだが周りが全て葦の中で方向感覚を失い、弧を描いて進んだようだ。
再度、葦の林に挑戦する気力はなく上流に向けて歩くため水面に足を踏み出した。