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銀杏の香り
夏の暑さが和らぎ、朝は肌寒く感じる頃。
いつものように川に出ると見知らぬ人が川にいた。
そりゃあ釣りをしていれば見知らぬ人はたくさんいる。
それでも見知らぬ人と言うのは、釣りの格好ではなく短パンに白いシャツのまま川にいるからだ。
しゃがみ込んで四角い箱を揺すっている。
近寄ってみると銀杏の匂いがしてきた。
聞いてみると、取った銀杏の身の部分をとって種の部分を取り出しているとの事。
川底にはオレンジ色の果肉が積もっていた。
そのまま釣りを続けているといつの間にかいなくなっていた。
銀杏は毎年出来るが、会ったことはその時の一回きりだ。