増水して帰れない
対岸からの方が釣れるのでは
そう思ったのが今回の後悔につながることになった。
しばらく釣っていてアタリもなくなった頃、対岸では誰も釣っていないことに気づいた。
数日まとまった雨も降っておらず川の水も引いている。
渡れるのでは。
少し上流に上がり、瀬になったところを流れを受けて下流に流されながらも対岸に辿り着いた。
釣りをしてみると誰もいなかったせいかパタパタと鮎が釣れる。
夢中になって釣っているううちに気づいた。
水位上がっていないか?
どうやら上流の水力発電所が運転したようだ。
また、上流の川を渡った場所に戻り、足を進める。
だめだ。渡れない。
川の水位は川の真ん中に行くまでもなく腰の高さを越えた。
引き返そう。
渡るのを諦めて引き返す。
どうしよう。
発電するといつ停止して水位が下がるかわからない。
下流に小さく見える橋を見つめる。
歩くか。
それからの1時間がこんなに地獄とは思わなかった。
ウェーダーは水に入っているから涼しいのであって、外に出ると直射日光があたり、色も黒いのもあり下半身が熱い。
水分も取れず、ゾンビのようにフラフラと、熱中症を心配しながら移動をつづけた。