1−6 超転回 もうちょっと続き
建くんと薊叔母さんの話の間、ダイニングで待つ。
テーブルに突っ伏して思う。
私は何を望んでいるのか。
帰ったらあの子がいないんじゃないかと毎日不安に思いながら帰ってきていた。
大人しく待っていて、食事をしてくれて、
庭の中だけで大人しく散歩してくれていて。
自分以外と触れ合う時間は胸の中がむずむずして。
でも、今まで通りに独りで暮らす方が楽ではあって。
あの子としてはどうやら同族らしい叔母さんと過ごす方が良いかもしれない。
あの子、なんて呼ぶ相手じゃなく、ヤマタイ朝廷の扱いは土蜘蛛かもしれないけど、
本当は神様の一族で。
もやもやする。
私は何を望んでいるのか。
…なんて世界にとってはどうでもいい事で。
望みなんか叶うものじゃないし。
英語の参考書を持って来て予習でもした方がいいんじゃないかな。
部屋から参考書を持ってきて、例文を覚える。
暫くすると、話が纏まったらしく、二人が客間から出てくる。
「来週の土曜って空いてる?」
「別に予定はないよ。」
毎週家で教科書広げながら居眠りしてるだけだから。
「じゃあ、霊場、秩父に行きましょう。」
「霊場?」
「そう、那賀建殿の霊力回復の為、霊場に行きたいの。」
「いいけど、建くんのこれからはどうするの?
薊叔母さんの関係者なんでしょ?」
「えーと、邪魔だと思ってる?」
「ううん。部屋は余ってるから邪魔じゃないよ。」
「じゃあ、暫く面倒見てくれる?」
「うん、いいよ。」
これからの食事について建くんと話をする。
鶏肉はほぐさないで良い事、
豚肉は細めに切ること、
牛肉は高いから食べないこと…は私の都合だね。
ネギで体調を崩したことはないらしい(本人談)けど、
念のため避けること。等など。
後、動物病院に行かない代わりに、
水浴びをさせる事が薊叔母さんの指示で決まった。
本人は嫌がっても、
やはり水に入れてみないとノミ、ダニの類が潜んている可能性があるため、
衛生的に週1は水浴びしてもらうことになった。
これは気になっていたから、薊叔母さんが強硬指示してくれて嬉しかった。
水浴びをしてもらった後、
秩父旅行(日帰りだけど)の移動用に建くんのためのケージを買いに行った。
子狐だから大きいものはいらない。
どのくらいで大きくなるのか本人に聞いたら、
「10年はこのままでいる積り。」
と言われた。
現状でももう少し大きくなれるらしい。