1−3 承 続き
薊叔母さんに電話してみる。
「もしもし、愛未です。
薊叔母さんですか?」
「珍しいね、愛未ちゃん。
どうかした?」
「うん。あの、家の玄関の前で動物を保護して、
獣医さんに連れて行こうか相談したくて。」
「野生動物を保護するのは危険なんだけどね。
まぁ、獣医さんと相談して場合によっては保護してくれそうな団体を紹介してもらった方が良いかもしれないね。」
「すごく人に慣れてて暴れたりしないから、飼われていたのかな、と思うんだけど。」
「それで、何なの、それ?狸とか?」
「狸というよりは薄汚れた黄色っぽいから狐かイタチかもしれない。
犬にしては何となく毛並みが綺麗じゃないの。」
「分かった。土曜の朝に獣医に連れて行こうよ。
8時頃に行けば良いかな?」
「うん。それじゃあお願いします。」
「車で行くから、駐車場の門扉を開けといてね。」
「はい。お願いします。じゃあ。」
その子用のトイレを綺麗にしてからお風呂に入って、
ベッドに入る。
叔母さんに相談できて、凄く気が軽くなった気がする。
命を育てているという事で、凄く重圧が掛かっていたのだろう。
お母さんも私を育てていて重圧が掛かっているのだろうな、とは思っていた。
両親が離婚した直後に、学校でいじめにあった。
両親が離婚した事は女の子の友達にしか言っていなかった。
それなのに、男の子がそれを知っていて、
数人で「父なし」といじめられた。
職員室で待っていた私を迎えに来たお母さんが、
家に帰ってテーブルに肘を付いて両手で顔を覆っていたのが忘れられない。
お母さんが一番辛いのに、
私が更に問題を起こす。
それは途方に暮れると思う。
問題を起こさない様にしばらく保健室登校になった。
5年になった時は担任の先生が気を使ってくれたのだと思う。
いじめはなく、私も普段は問題なく振る舞えていると思う。
話しかけられれば話すけれど、自分からは決して話しかけない。
そもそも話しかけられないけれど。
だって、信用して話した女の子の友達が面白おかしく男の子達に話していたと思うと、
怖くて何も話せなくなってしまった。
そうして、高校生になっても個人的に話す同級生はいない。
それで問題が起きないなら、それが一番だと思っている。