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2−10 呪いの行方

(仮)ヌサノオは件の水薙の剣を抜く。

すると、糸を引く様な太刀筋で東昭狸が斬りかかる。

対する(仮)ヌサノオは力任せの振りで弾き返す。

暗い紫電が霧散する。

弾かれた剣をそのまま東昭狸は袈裟がけに斬りかかる。

(仮)ヌサノオもまた再び力任せの振りで叩き返す。

両者の剣技には明らかな差があった。

反りのない古代剣を振るう(仮)ヌサノオと、

反りのある日本刀を振る東昭狸。

普通に考えれば獣の振る剣が荒く、

人間の振る剣が洗練されているべきだが、

剣も発達していない古代剣術と

斬る事に特化した日本刀に適した近代剣術では、

当然斬る事に特化した剣術に流れる様な美しさがあった。

それは最も効率化され、

力任せの振りなどでは対応出来る筈のないものだった。


神君が色々武芸の師匠に教えを乞い身につけた等というのは、

泊付けの伝説に過ぎないと薊は考えていたが、

この見事な太刀筋が事実と伝えていた。

(いざとなったら、愛未ちゃんを連れて逃げないと。)

薊はもう(仮)ヌサノオの必勝を確信できなくなっていた。


流れる様に連撃を続けたい東昭狸だったが、

一撃毎に(仮)ヌサノオの剛腕が跳ね返す。

東昭狸はその剛腕にも驚かされるが、

何より問題なのは、

妖刀ムラマサの呪いが相手に効かない事だった。

最高の切れ味を誇るムラマサは、

斬る相手と使用する者を同時に呪う。

それを三百有余年に溜め込んだ神霊力を消費して防いでいるのだが、

相手も呪われないというのは不測の事態だった。


その呪いが(仮)ヌサノオに届いていない事に那賀建も気づいた。

水薙の剣が操る清浄なる水が呪いを浄化しているのか?

なら(仮)ヌサノオは事前にあの妖刀を知っていたのか?

それが元天津神の神通力なのか?

高位の神々の見切りが甘かったのか、と建は自省した。

…誤解だけど。


薊もどうやら紫電に乗った呪いが(仮)ヌサノオに届いていない事に気づいた。

カミナリのエネルギーを水を電気分解させる事で防いでる?

…薊はあまり科学的な思考ができない人間だった。


(仮)ヌサノオの見解は違った。

もちろん、水薙の剣を持ち出したのは、

清浄な水で浄化の効果を狙ったものだった。

それでも、完全に呪いを無効化することはできないと考えていた。

しかし、神々は元の力に加え、信者の信心が力となる。

今は巫女の愛未が彼を思う心が力となる。

彼女が本気で彼を心配してくれている。

その思いが妖刀の呪いから彼を守っていた。


(感謝するぞ、愛未!

 心優しいそなたが我が巫女で良かった。)


…オクでバッタもん掴まされる様なローカル芸人を心配するのは普通だと思います。

 

と、言う訳で、予測外の助力に、

(仮)ヌサノオは調子に乗った。

何せ調子に乗って色々やりすぎちゃう男である。

「気」は大事である。

物質社会で鉄と鉛と火薬で勝負する現代戦ですら、

兵士の士気が勝負に大きく影響する。

ましてや霊力などで勝負する神々の勝負なら。

そして今、東昭狸は自分と自分の武器に疑念を抱いてしまっていた。


(仮)ヌサノオは示現流よろしく、連撃を叩き込んだ。

三連撃だ。

東昭狸は不覚にも守りに入ってしまった。

今まで通りに振りで対処していれば連撃は止まった筈だ。

戦術上必要な守りならよいが、

後の戦の流れを考えぬ守りなど、外部の助勢なき籠城である。

続く連撃に対しても勢いなき防ぎの構えだけな東昭狸に対し、

(仮)ヌサノオは揺さぶりをかける。

ペースを変えて横薙の振りを右から左に見舞ったのだ。

今度は上からの振りで対処した東昭狸だったが、

(仮)ヌサノオの振りは少し上向きだった。

斜め上に跳ね上げられた剣に体勢を崩した東昭狸に対し、

(仮)ヌサノオは剣を跳ね返された勢いを利用して左足で東昭狸の足を刈った。

体勢が崩れている東昭狸は簡単に地面に転がった。

闇雲な振りで近づく相手の足を斬ろうとする可能性から(仮)ヌサノオは距離を取った。


東昭狸は忿怒の表情で立ち上がった。

名乗りもなき、名もなき男に地べたに這いつくばらせられたのである。

武将としてこの恥辱に耐え難かった。


偽名使ってるから名乗れなかっただけですが。


この物語はフィクションです。


バトルものを読まないから流儀が分かりません。

とりあえず流れと理由を書いてます。

…が、「女主人公」ジャンルのこの小説、

みんなバトルは読み飛ばしてますよね…

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