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2−9 七井の池の弁財天

神田川の源流は井の頭公園にある。

七井の池と呼ばれた池から流れる水を神君が飲んだという確証はない。


その日、(仮)ヌサノオは一振りの古代剣を持ってきた。

薊が気になって聞いてみる。

「何か由緒のある剣ですか?」

「水薙の剣だ。」

バッタもんかいっ!!!

3人は心の中で突っ込んだ。

「大丈夫なのですか?」

「心配無用だ。」


心配するよ?愛未は思った。

オクで売ってる由緒あるアイテムは、

鑑定団から見ると大概ゴミなんだよ?

それで不吉に対応できるの?

と、ローカルタレントがオクで騙されたと決めつけていた。


とはいえ、今更三人に出来る事はなく。

薊の車で四人は吉祥寺方面に向かった。


この夜、弁財天近くに人が集まっていた。

(仮)ヌサノオが口を開く。

「必勝祈願か?

 この弁天は武器を持っておるからな。

 だが、どうせなら勝負事の神に祈願する事を勧めるぞ?

 氷川神社なんてどうだ?」


やる前から調子に乗ってるよ、この男!

こんなに調子に乗ってたら、私達じゃコントロール出来ないよ!

キツネーズの二人は閉口し、心の中で突っ込んだ。

神社の事を何も知らない愛未は、

知らない人に声かけて変質者と思われないかなぁ、と心配していた。


「政府の犬か…

 でも、既に遅い。」

若い女の声だった。頭巾で顔を隠している様で、

服も暗い色を上下で揃えていた。

他の者達も同じ装束の様だ。

その中に、若い女の横に、

背が高めの彼女より少し背の高い、

もこっとした体型の何かがこちらを向く。

濃い焦げ茶か黒の、熊の様な体型だった。

猫背のその存在に、

若い女が何か長いものを捧げる。

捧げものを掴んだその存在が、

捧げものを抜く。

暗い紫電が刀身らしきものを走る。

その暗い光に浮かんだその存在の顔は、

垂れ目の半目をこちらに向けた、

…タヌキだった。


神になっても呪われた姿そのままかよっ。

だが、あの刀は何か?

那賀建には知らぬ刀だった。


愛未にもあの刀らしき物が只ならぬ物である事は分かった。

刀は電気を帯びないのだから。

呪い?

建くんの一派だとして、

あんな昏い呪いの様なものにバッタもんの剣で対処できるの!?

愛未は本気でヌサノオさんを心配していた。

ローカルタレントさんには無理なんじゃない?


だが、(仮)ヌサノオは呪いの剣を知っていた。

奥多摩で禽獣の死体が次々と発見され、

調査が行われていたのだ。

その止めは刀傷だった。

そして、禍々しい事態に、

奥多摩の神社で厄除け祈願が特別に行われ、

そうして(仮)ヌサノオの知る所となった。


そもそも禽獣の遺体の処理の度に坊主が経を読んでいるから鎮魂は十分で、

人と違って遺族の怨念も含まれないその妖刀の呪いは大した物ではない、

と(仮)ヌサノオは見切っていた。



この物語はフィクションです。

登場する宗教上の名詞、地名などは実在する宗教、土地と一切関係ありません。


厄除け祈願やってくれるかどうかは知りません。

ごめんなさい。


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