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2−1 幕末の恨み

「それで、あいつらが何に焦っているのか分かったのか?」

「まあ、聞き取って来たけどね…」


薊は陰陽寮の狙いを探るため、

関係部署に聞き取りを行ってきた。

陰陽寮自体には近づけない為、

業界筋の噂話を聞いてきただけだが。


「長年放置してきた私を今更処分する理由がわからん。」

那賀建は愛未の前以外での一人称は私だ。

「暴力主義者は唯物論で生きてるからね。武器以外に興味ないでしょ。

 物部の分家筋の私が言う事じゃないけどね。」

「愚民教育として、武器があれば何でも手に入ると言った嘘を

 自分も信じてしまうミイラ取りがミイラのパターンだからな。」

「それはともかく、聞き取って来たのは、

 どうやら幕府の亡霊が動いているらしいという事。」

「幕府?足利か?」

「いや、それ戦国に滅んでるから。

 当然、徳河家だから。」

「ヨシノブは政府に恭順を示して野球をやってたと思うが?」

「なんかごっちゃになってるよ!

 もっと古狸の方。」

「狸といえば、人生は重荷を背負ってとかもっともらしい事を言いながら、

 謀略の限りを尽くして恨みを買いまくって

 呪いをたっぷり背負って死んだあいつか?」

「それ。

 奴の遺骸と言われるものが東昭社から盗まれたらしいって。」

「臭い話だな。」

「300年も立てば骨だけだから臭わないでしょ?」

「…あのな、山梨では割と最近まで土葬をやっててな?

 骨が周囲の悪意を吸って瘴気を出すことが時々あったんだ。

 そういう時はこっそりと掘り返して、穢れを祓ってやるんだが、

 独特の臭いはするな。」

「うわぁ!寄るな!穢れが伝染る!臭いが移る!」

「50年以上前の話だから、もう臭わんわ!」

「あんたにとっては50年なんて昨日の事だろうが!」

「50年経てば消えるって!

 話を戻すぞ。

 狸の骨を使って、誰が何をしようとしてるんだ?

 サルの手でも使って亡霊でも喚ぼうとしてるのか?」


「よく分からないの。

 そもそも、分葬により東昭社に祀られているのは単なる形骸、

 という説によれば、

 それ、蘇り様がないよね。」

「傀儡に鬼が宿る例もある。

 300年に渡りお参りした者たちの念が力となる。

 警戒する気持ちは分かるが…」

「だったらその本命を叩くべきで、

 こっちに手を出して損害を受けたら、

 本命が動いた時に対応できなくなるでしょうに…」

「一度、話をすべきだな。」

「危険だけどね…」

「豊島区まで近寄るとあいつらの頭に血が昇るから、

 練馬あたりで何とかならないか?」

「ちょっと調べてみるわ。」


薊はよく家に来て客間で建と話をするが、

一族関連、チーム・キツネーズの話なのか、

愛未は蚊帳の外だった。


この前みたいに危険な事もあるから、

巻き込まない様にしてくれているのだろうけど…

ダイニングのテーブルに突っ伏して思う。

二人は私に気を使ってくれる。

それは申し訳ないんだけど、

有り難いことなんだけど。

見ている参考書が頭に入らない。

学校で隣の人達が大きな声で喋っていても宿題はできるのに…


頬をテーブルにすり寄せてしまう。

わたし…わたしだって…

思う事が心の中でさえ言葉にならない。


二人が客間から出てくる。

「話は終わった?」

「うん。来週は建を借りて外出するから。

 とりあえず、今日はランチ食べに行きましょうか。」

「え、来週は出かけるの?」

「うん。ちょっと野暮用で。

 来週は待っててね。」

「うん…」


この物語はフィクションです。


あくまで物語に関係ないリアルの話ですが、

物部氏は武器の製造者だったという説があります。

つまり、旧支配者の武器製造者達が、

新支配者の下でも武器製造に携わる事で一定の権力を持ち続けたのだと思われるのです。


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