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ナイトメア  作者: SHIRO_KUMA
第一部
3/128

日常②



「いってきまーす」



「ママもすぐ出るけど、ゴミ出しおねがーい!」



「あいー」



うちは母子家庭だ。


父さんが他界して10年になる。

事故で死んだらしい。


外に出かけている最中、

トラックが俺と父さん目掛けて突っ込んできた。



実は、その時の事が原因で子供の頃の記憶がほとんどない。



どうやらその時のショックが原因らしい。


父さんが俺を庇い、そのおかげで俺には外傷ひとつなく助かった。


たまに母さんが話してくれる父さんのことを聞くことで、

ぼんやりと思い出すような感覚はある。


母さんなりに気遣ってくれていたのか、

つい最近まではそんなに詳しく話してくれることはなかった。


俺も当時の事を思い出そうとすると、

心がギュッと苦しくなってしまっていたから聞こうとはしなかった。


でも、今では父さんの話が大好きなのである。


“ヒーローショーのスーツアクター”


それが父さんの職業だった。


母さん曰く業界ではかなりの有名人だったようで、

定期公演の他にも各地の公演でも声が掛けられていたそうだ。


子供の頃の俺は、父さんのショーを観に行くことが何よりの楽しみだったらしい。


記憶を辿っても父さんの顔は思い出せない。


父さんはあまり撮られるのが好きじゃなかったのか、

うちにはまともに写った写真は残っていなかった。


だけど去年の暮れに大掃除をしていた時、1枚だけ写真が出てきた。


そこには自分とは思えないほどに満面の笑みを浮かべた俺と、

ヒーローショーの恰好のまま、ヘルメットを外して俺を肩車する父さんの姿のものだった。


この1枚だけで俺と父さんのすべてを感じられた。

父さんの顔も、記憶を無くしてからはじめて見たのがその時だった。


これがきっかけになって父さんの話を自分から母さんに聞くようになった。



母さんには特に感謝している。そして尊敬も。

女手一つでいつも明るくて、いつも厳しくて、いつも優しい。


父さんが事故に遇う前、

ヒーローショーの影響であろう俺はヒーローに憧れていたらしい。


小学校に入って間もなくのこと、

正義感のままに俺はいじめられっ子を庇ってはやたらとケンカして泣かされていた時期があり、

その度に母さんはいじめっ子の家に怒鳴り込んで回っていたそうだ。


その権幕と大声の為か、これは当時ご近所中で話題となり、

中学生になってから友達に聞かされた話である。



“狂犬ママ”



母さんには未だ内緒ではあるが、ご近所で伝わった異名だったそうだ。


初めてその話を聞いた時は顔が熱くなったけど、

今思えば、僅かしかない子供の頃の良き思い出である。




修正:230823A

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