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日常①
「ダイスケーー! 遅刻するよーー!」
家中に響く母さんの声だ。
いつものようにその声で目を覚ます。
視界はぼんやりとしていて、
頭が回っていないことがよくわかる。
――――ッドタドタドタ! ガチャ!
階段を駆け上がり俺の部屋のドアを勢いよく開けると同時に、
母さんはいつものように吠える。
「起きろっつってんの!!!」
「はい……」 逆らったら怖いのだ。
鼻息を荒くフーッと吹き出しながらカーテンをザッと開けて、
母さんは来るときの勢いのままに階段を降りていく。
ベッドから這い出て制服に袖を通しモゾモゾと着替える。
部屋を出て洗面所の鏡と向かい合う。
その顔はまだ半分寝ていた。
顔を洗い、歯を磨く。
直せなかった寝癖をいじりながら食卓につく。
何てことのない。 いつもの日常。
「あんた今日はサボんじゃないよ?」
テーブルにトーストされた食パンが置かれる。
俺の好きなイチゴジャムはすでに塗られていた。
「もう18歳でしょ、しゃんとして。」
話を流すようにして、
こんがりと焼けた食パンをかじりながらテレビに目を向ける。
「―――うん」
いつもと同じ。
修正:230823A