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薬師のシアンは今日も薬を売る  作者: 蒼月 ナユタ
薬師シアンは今日も薬を売る 《シアンは邂逅する》
9/42

番外編:とある研究者の日記

ピスリス 4の週7の日

新しい研究所とは名ばかりの、辺境の地へとやって来た。

好きでこんなところにやって来た訳ではない、所謂権力争いに私は負けたのだ。そしてよく分からない石ころ1つ押し付けられてこれの研究をしろとここに追いやられたのだ。

くそ、私の研究の素晴らしさが分からない愚か者ばかりめ…まぁいい、この中央の奴らが揃って匙を投げた『神の遺産』と呼ばれている何の変哲もない赤い石、解明すれば中央へと舞い戻れるだろう。今に見ていろ…

ここには何もない、日付の感覚がなくならないように定期的に日記を付ける事にした。


アーリアス 1の週3の日

とりあえず一通り石の成分分析は完了した。今この世に現存しているどの石とも異なる成分で構成されていることくらいしか分からなかったが…

そういえば『南の禁足地』と呼ばれる異形の神々の大地から出土されたとか言ってたな。当時はあんな危険な場所から誰が持ち帰れるんだ、と眉唾としか考えてなかったが、一考の余地位はありそうだ。


アーリアス 1の週5の日

この2日ほどかけて傷の1つでも付けられたりしないかと思い様々な物で試してみたが…何をしても傷1つ付くどころか生半可な物では逆に壊されてしまった。

試しに近くの廃城の監視塔から落としてみる。


アーリアス 2の週7の日

落としたら見つからなくてかなり探してしまった、2度とやるもんか。

しかし無傷とは恐れ入った、近くにあった頑丈な石の塊は木っ端微塵に砕けたというのに。本当に何で出来ているんだ、この石は。


アーリアス 3の週1の日

宛てがわれた研究所よりこの廃城の方が色々揃っているので何日かかけて持ってきていた物をこちらに移動させた。どうせ誰も来ない、どこにいても一緒だ。

今日は焚き火に入れてみた。昼飯を作っている間入れていたのに溶けもしていない、これ以上耐久実験はしなくてもいいだろう。

……これで壊れていたらどうしていたのだろうか、急に冷静になってヒヤリとした。


アーリアス 3の週2の日

これが出土されたという南の禁足地に行くべきか考える。しかしあそこは未だに異形の者どもが闊歩しているという、軽い気持ちで探索しに行った冒険者が皮だけになって見つかっただの脳だけを抜き取られて死んでいたとかいう嘘みたいな話も聞く。私のような奴が行った所でその様な末路を辿るのが関の山だろう。どうしたものか…


アーリアス 3の週6の日

最近狩りにも慣れてきた。自分でやらなければいけないからか中央にいた時よりちゃんと食べている気がする。

ふと石を観察していると何だか最初の頃より輝きが増している気がした、気のせいだろうか。


タウルス 1の週1の日

体調を崩していたせいでしばらく研究が滞ってしまった。しかしおかげで新たな発見があった。

石を身体の調子が悪い所にしばらく押し当てていると良くなるのだ。これがなかったら死んでいたかもしれない、命の恩人、いや恩石と言うべきか。


タウルス 1の週3の日

しかし研究が暗礁に乗り上げつつある。気晴らしに何かないかと城の中を探索すると隠し部屋を見つけた。…まぁそこへと続いていたであろう偽装された絵画が朽ちていたせいで気付いたのだが。

中には金銀財宝が貯めこまれていた、これがあれば冒険者に禁足地に行ってもらって土壌なりなんなり採取してきてもらえるのではないか…?


タウルス 1の週6の日

財宝の一部を持って街に出てみた。すると目論み通り何人かの冒険者が財宝に釣られて行ってくれるという、持ち逃げされないように前金と後金に分ける。

後金は城にある財宝を好きなだけ持って行っていい事にした。まぁある程度は分けてあるし生活も困らないだろう、彼らにはとりあえず見た事のない石などを持って帰ってきて欲しいと頼んだ。

帰りに日持ちする食料を買って行くのを忘れない、流石に肉ばっかりは飽きてきた。


タウルス 2の週2の日

石の輝きだけではなく、内包されている魔力も増えていることに気付く。一体何が原因でこうなっているんだ…?石が魔力を吸収して成長しているとでもいうのだろうか?

試しに持ってみるが重さに変化はないように感じる、大きさも変化ない…と思う。これからはちゃんと測定しよう。


タウルス 2の週4の日

石の大きさ、重さ共に変化はなし。

薪に火をつけようとして発動した魔術が誤って石の方へ飛んでいくてしまった。するとなんという事だろうか、石に炎が当たったかと思うと吸収されるように消えてしまったのだ。

持ってみても熱くない、一体何なんだ…


タウルス 2の週6の日

石の大きさ、重さ共に変化はなし。魔力の増大を確認。

私が使える魔術をあらかたぶつけてみた。結果は同じだった、この石は魔術を無効化、ないしは吸収しているものと思われる。ただし広範囲の魔術に関しては周りの物は破壊されたので石のごく周りの1部のみのようだ。……お気に入りの机が壊れてしまった。


タウルス 3の週2の日

石の大きさ、重さ共に変化なし。

罠から逃れた獣があの石を飲み込んでしまった!

頭を抱えているとその獣がもがき苦しんだかと思えば次の瞬間には黒い泥状のような液体になって四散した。液体はすぐに蒸発してその場には石だけが取り残されている。

一体何が起きたんだ…?


タウルス 3の週4の日

罠にかかった獣に片っ端から石を食わせていく。結果はどれも同じ、あの黒い液体となって弾けてしまう。石を見ると最初は不透明な石だったのに今では半透明くらいになっている。

私は一体何を研究しているんだ…?

この石がとても恐ろしい物に見えて仕方がない、一体何なんだ…?


ジェニス 1の週3の日

しばらく石を放置していた、あまりにも恐ろしすぎて直視出来なくなってしまったのだ。

この石を体に押し当てていた少し前の自分を殴りたい。自分の身体があぁなってしまっていたかもしれないかと思うと怖くて仕方がない。

研究を放棄してここにある財宝を換金して故郷に帰ろうか…


ジェニス 1の週4の日

最悪だ、以前依頼した冒険者が数種類の鉱石は土を帰ってきてしまった。幸いと言っていいのか1人を残して壊滅したようで払う後金は減ったが。

生き残った冒険者も引退して田舎に引っ込むらしい、街であった時とは一変している彼を見送った。

その彼から「この研究から手を引いた方がいい」と言われた。その通りだろう…


ジェニス 2の週1の日

一応持ち帰ってもらった鉱石と土を解析して石と比べてみる。似通った成分が検出されはしたもののほとんど違うものであった。

しかし意欲が湧かない、荷物を纏めるべきか…


ジェニス 2の週5の日

石を眺めながらぼんやりと考えていたら、生物がダメなら例えばゴーレムのような人工的に造り出された物ならばどうなのだろうか、と興味が湧いた。しかし私はゴーレムを作った事がない。


ジェニス 3の週3の日

ゴーレムの作り方が載ってないか城の書斎らしき部屋でしばらく調べ物をする事にした。この城の城主は勤勉だったのだろうか、様々な分野の書籍だったり研究資料が多く存在した。

見た事もない言語の本まである、研究とは無関係に楽しめそうだ。


キャニス 1の週5の日

調べ物に没頭していたせいで日記を書くのを忘れてしまっていた。しかしこの城の蔵書は素晴らしいものばかりだ、ここを訪れたであろう盗掘家達は金銀財宝にしか興味がなかったのだろうか?

しかしお目当ての本はまだ見つからない…


キャニス 2の週4の日

遂にお目当ての本を見つけた。本当に何でもあるな…

まぁいい。しばらくはこれを読み込んで自分で作れるようになろう。


レオルス 1の週3の日

完全に舐めていた。まさかここまでゴーレム作りの奥が深いとは思わなかった…研究所にいたサフィルス、あいつホイホイと作っていてそんな土人形ばかり作って何が楽しいんだか…と内心馬鹿にしていたのだが、考えを改めようと思う。


レオルス 2の週1の日

記念すべき一体目のゴーレムが完成した。とりあえず1日置いてみて問題がないか確認してからテストしてみる事にする。


レオルス 2の週2の日

朝起きてゴーレムを確認したら土塊に戻っていた、何が悪かったんだ…


レオルス 3の週1の日

2体目のゴーレムが完成した。すぐさま石を取り込ませて様子を見ようとしたがすぐに黒い液体になって溶けてしまった。ゴーレムでも無理なのか、それとももっと良質な素材で作られたものでないといけないのだろうか…


レオルス 3の週4の日

街に出ていい素材がないか見て回る。幸い金ならたんまりあるので多めに買って行く。研究所にいた時の給金ではこんないい素材買えなかっただろうな…

そういえば以前調査を依頼した冒険者が持ち帰った土、使えないだろうか…


ヴァニス 1の週6の日

もう面倒臭いので石を核にしてゴーレムを生成しようとしたのだが上手くいかない。素体を完成させて核を植え込む段階までは慣れてきたのだが石を入れると途端に黒い液体となって崩れてしまう。


ヴァニス 2の週5の日

ゴーレムの完成度を高める方にシフトしようと思う。街で買った素材はもっと腕が上がってから使おうと思う…もったいないし。

しかし少し前まではこんな気味の悪い石の研究なんてやめて故郷に帰ろうとしていたというのに何故私はまだ研究を続けているのだろうか。


ヴァニス2の週6の日

不思議な夢を見た。今まで見た事もない美しい男が「もっと石に命を捧げて、そうすれば君の願いは叶うよ。」と言って消えた夢だ。

起きてからふと石を見るともう宝石と言っても差し支えないほどに透き通っている。その輝きから目が離せなくなってしまう…


ヴァニス 3の週2の日

廃城に同僚が訪ねてきた。どうやら本国の情勢があまり良くないようだ、私が本来いるはずだった研究所も危ないようで様子を見に来てくれたようだ。しかし研究所に私がいなかったので探したようだ…申し訳ない事をした。

割と元気に過ごしている私を見て安心したようだ、少し話をした後彼は帰っていった。少し顔色が悪かったが大丈夫だろうか…


ヴァニス 3の週7の日

同僚と話して少し気分転換になったのだろうか、ゴーレム作成が捗っている。出来が良かったゴーレムは実験に使わず狩りや最近増えてきた魔物の討伐を任せている。これで研究に時間を使える。


ヴァニス 4の週3の日

廃城に盗賊が6人程で攻め込んできた。ゴーレムが数体犠牲になったが何とかなった、全員生け捕りにしたので実験に使おうと思う。


ヴァニス 4の週4の日

とりえあず1人に石を飲ませてみる。丸呑みしやすい手のひらサイズで助かる、あまり大きいと身体を切り開いて直接埋め込むしかないからな。

しばらくは人の形を保っていたがボコボコと身体が不自然に膨らんだかと思うとやはり液体になって四散してしまった。


ヴァニス 4の週7の日

生け捕りにした盗賊達6人を全部使ってしまった。1番屈強な肉体をしていた男が1番身体の形を保っていた、それでも5分あるかないかと言ったところだ。

「悪魔め、殺してやる!」と罵られたが自分達だって今までどれだけの人達を殺めてきたのかと思うと何も思わなかった。

石は輝きを増している、いつまでもこの光を眺めていたい…


リブリス 1の週1の日

また夢に男が出てきた。「この調子だよ、さぁウレクロワにその身も心も石も、全てを捧げて。」

男はそう言うと微笑む、あぁ私はこのために生まれてきたのかもしれない…


リブリス 1の週3の日

夜に旅の男が1日でいいから泊まらせて欲しいと訪ねてきた。しばらく話していると机に飾ってあった石を見て譲ってくれないかとふざけた事を言い出したので思わずゴーレムに命令して殺してしまった。しまった、生かして実験に使えばよかった。

石は渡さない、これは私がウレクロワに捧げるんだ。


リブリス 1の週4の日

昨日殺してしまった男の死体の処理をどうしようか、と悩んでいると石が目に入った。死体でもいいのだろうかと飲み込ませられないので腹を切り開いて石を埋め込む。

するとどうだろうか、ボコボコと切り開かれた腹の周りの肉が膨れたかと思うと傷が治って死んだ筈の男が生き返ったではないか!

男はしばらくボーっとしていたが事態に気が付くと発狂したかのように金切り声を上げて暴れ始めた。

煩いので口に布を詰めて手足を拘束して地下牢に放り込む。


リブリス 1の週6の日

1日放置していた男の様子を見に行く。大人しく寝ているのかと思って近付くとこちらに気付いたのか再び暴れ始めたのでとりあえず1発蹴っておく。

…しまった、男から石を取り出さないと実験が出来ないではないか。仕方ないかと男の腹をまた切り開いたが、切ってもすぐ再生してしまう。困ったな…


リブリス 2の週1の日

あれから何とか殺そうとしたが上手くいかない。心臓を滅多刺しにしても首を刎ねてもすぐ生き返ってしまう。男も最初は抵抗していたが数をこなす内に全く反応しなくなってしまった。


リブリス 2の週4の日

男の方は完全に手詰まりになったのでゴーレム製作の続きをすることにした。この調子で行けばサタニスに入る頃には街で買った素材で製作しても問題ないレベルになりそうだ。


リブリス 3の週1の日

一応1日1回のペースで男から石を取り出す為に殺害を試みる。

反応もしなくなったので布を外してやると小さな声で「声が…ずっと聞こえるんだ…殺してくれ…」と懇願された。私だって石を取り出したいので男には死んでほしいのだが…声とは誰の声だろうか?


リブリス 3の週3の日

そういえば男に一切の飲み食いをさせていなかったことに今更気が付く。

まぁ餓死でもいいのだが…と思ったがふと人間って何日も飲み食いしなかったら普通死ぬよな…と思い至りゾクリとする。

一応水だけを持って男の所に行ったが男はいらないと言った。

「飢えも渇きも感じない」そうだ…石の影響だろうか?


リブリス 3の週4の日

男をよく観察する。この城を訪ねてきた時とほとんど変わってないように見えるが…鏡で確認させたらまた発狂したのでそれ以上は追求するのはやめた。


リブリス 3の週6の日

落ち着いたのか男がポツポツと話し出した。

「ずっと男の声がする。」

「昨日は夢にまで出てきた。」

「美しい男だった、その男が君はもうすぐ解放されるよと言われた。」

まさか私の夢に出てきた男だろうか…似顔絵でも描いて見せようかと思い筆を取るがその手が止まる。

その男の顔が、思い出せないのだ。男も同様のようで2人して首を傾げる。


リブリス 3の週7の日

男にウレクロワ、と言う言葉に聞き覚えはないかと尋ねるといつも聞こえる声が言っていたと答えた。

その言葉自体は知らないかとも尋ねたが男は知らないという。

というか自分で言うのもなんだが、何回も自分を殺した男と何を呑気には話しているんだろうか、彼は。


リブリス 4の週1の日

あの男が夢に出てきた。

「今日、彼は消えるよ。よかったね、これで石は君のものだよ」と言うのであの石は一体何なのか聞いてみた。

「あれは神々の遺産。その名を命与えるもの(ウレクロワリア)というウレクロワ神の命そのものだよ」

男はじゃあ後はよろしくねと言うと消えていった。

起きてすぐ地下牢に行くと男の姿はなく、石だけが落ちていた。


リブリス 4の週3の日

書斎に何かないだろうかと時間も忘れて引きこもって調べていた。

神々の遺産、という事は南の禁足地の神ということだろうか、しかしあの大陸の事を記した資料なんてあるのだろうか…


リブリス 4の週5の日

あの大陸の事を記した資料はもちろん見つからない。時々ゴーレムが私に食事を持ってきてくれる。なんて優しいのだろうか…


スコルス 1の週2の日

探すのを諦めてゴーレム製作技術を磨く事にした。そういえば作ったゴーレムに素材を追加して強化していく方法もあるという記述があったな、私の腕で出来るか分からないが1度試してみようか…


スコルス 1の週4の日

普段炊事をさせているゴーレムに少しずつ素材を足していたが身体が崩壊してしまった。やはり今の私では難しいようだ…


スコルス 1の週6の日

新しいゴーレムを製作しようにも魔鉱石が尽きてしまった。街に買いに行ってもいいが、実験用の魔物を捕獲する為にも何体かゴーレムを連れて何処か行ってもいいだろうか…


スコルス 3の週3の日

しばらく城を離れて魔鉱石等の素材を採取したり魔物を捕獲して石を飲み込ませたりして過ごしていたらかなり時間がかかってしまった。ずっと研究ばかりで身体を動かしていなかったしいい気分転換になったしたまにはやろうかと思う。


スコルス 3の週4の日

持ち帰った素材を用いて新しいゴーレムを作ってみた。土地の魔力も影響するのだろうか、街で買った素材よりもいい物が作れた自信がある。これからはなるべく採取する方面でいこうか。


スコルス 4の週1の日

久しぶりに侵入者が現れたが…子供か。さすがに子供を実験に使うのは気が引ける…

ここの事は口外しないように言い含めて何個か宝飾品を握らせて帰らせる。


スコルス 4の週3の日

城主の部屋でかなり古ぼけた古文書を発見した。読めないこともなさそうだが解読にかなり時間がかかりそうだ…作業の片手間に読み進めようか。


スコルス 4の週6の日

味をしめたのかこの前の子供が仲間を引き連れてまたやってきた。1度見逃してやったというのに…そういう事なら遠慮は一切必要ないな。


サタリス 1の週2の日

泣き叫びながらやめてくれと懇願する子供達に無理矢理石を飲み込ませる。良心の呵責など一切ない、私は警告したんだ。あの子供は1番最後にしよう、自分がやった事を後悔させてやる。


サタリス 1の週3の日


私はなんという事をしてしまったんだ。


サタリス 1の週4の日

今私は部屋に立て籠ってこれを書いている、私はなんという事をしてしまったんだ。

そういえばゴーレムの素材に人間を使ったことはなかったな、と思いあの選んだ子供を素材に製作した。

サフィルスが「生物を素材にしてはいけない」と言っていた気もするがまぁいいだろうと思ったのだが…出来上がったものを見て後悔してしまった、これは最早ゴーレムではない。ただの化け物だ。

石を飲ませていつもの様に黒い液体になってくれたらと思ったのにアレは不気味に膨らんだだけでピンピンしている。


サタリス 1の週6の日

アレが周りを破壊しながら私を探している音がする。一応防御魔法を施しているがいつまで保つか…

あぁ、こんな事なら故郷に帰っておけばよかった…


サタリス 2の週1の日

あの男が夢に出てきた。彼はこちらを一瞥するなり「お疲れ様。」と言いながら醜悪な笑みを浮かべた。

あぁ、私は…


あぁ、音が近付いてくる。このまま私は






「彼は禁忌を犯した。この末路は罰だねぇ…」


その先は文字が酷く乱れていて読めない。苦虫を噛み潰したような顔をしながらアーシャはその日記をそっと閉じる。

ゴーレムの素材に生物を使ってはならない。それは1度でもきちんとゴーレムについて学んだ者ならば知っていて当然の事だった。

理由も原理も全く分からないのだが生物を使えば異形の化け物が産まれるのだ。


「それはともかくとして、これはヤバいな…」


彼はナスターシャから大体の位置を聞き出し城を探し当て、荒れ果てたこの廃城をくまなく探索してこの古ぼけた日記を発見した。

そこに書かれていた内容は目を疑うものだったが、まぁ昔はこれよりもっと酷い事してる人いたしなぁとアーシャはあまり気にしていなかったが問題は石の事だ。


「こんな危ない物…シアンに捨てさせなきゃ…」


そう呟くと彼は身を低くかがめて小さく何か呟く。すると瞬時にその姿は美しい銀色の毛並みを持つ狼へと変化した。

そのまま窓から飛び出し廃城を後にする、しかし今から急いで戻ってもあの事件は防ぐ事が出来ないという事をアーシャは知らないのである。

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