第4話「キンニクとエミーネ」
「ふぁ、あふ、んぅ……」
朝から早起きしたエミーネは自分を温かく迎えてくれた家に感謝しつつ、ゲンシジン・スタイルで村周辺を回っていた。
魔法の触媒探しである。
(結局、一晩お世話になっちゃった……どうしよう。実家と連絡取る魔法なんて、此処からじゃ必要な触媒の数が多過ぎるし、集めてたら何か月掛かるか)
地道に触媒を集め、原始的でも幾らかの道具を借り、魔法に使う薬品や道具を造ろうとすれば、それは時間が掛かる事だろう。
だが、今はお金も無く。
無料で泊めて貰っている手前、早く何がしかの仕事でも見つけて、物々交換で必要なものを揃えていくしかない。
という事は彼女にだって解っている。
だが、彼女は学生であり、フィールドワークの時間にしても無限ではない。
帰って来なければ、校長が高笑いしつつ、学院への不登校を理由にさっさと強制的に退学させるのが彼女の脳裏にはアリアリと予測出来た。
「一刻も早く帰らなきゃ。でも、その前にこの村の人達の信頼を得て、協力して貰わないと……」
彼女が霧の出る最中、まだ白み始めたばかりの空の下で海岸線沿いの砂浜に降り立ち、必要な触媒の材料を集めていく。
「ええと、今日が確か新月だから、最もマナの濃い明け方前の朽ちたムラサキイモガイの殻を陽射しに当たる前に回収して……」
エミーネが目を細めて砂の上を地道に探している時だった。
『あ、シショー!! エミーネちゃんですよ』
「ん?」
道を走ってやってくるミゥナが自分のところまで息を弾ませもせずにやって来るのを見て、エミーネが声を掛けようとし……その背後の霧の中から現れる少女の容姿に言葉を失った。
リザである。
サラッサラな美しい艶めく髪の毛。
高貴な血筋と言われても頷ける整った鼻梁。
そして、健康的な肢体と鍛え抜かれた者特有の堂々とした姿。
「え、あ、ぅ……」
一番、彼女が苦手なタイプの人間に見えたのだ。
文武両道の貴族の子女とか。
不健康根暗系少女には眩過ぎる。
「エミーネちゃん。こちらがリザ・シショーです!! 私のキンニクを認めてくれた素晴らしい方なんですよ!!」
「キ、キンニクって。まさか、この子が?」
「ん? なーんだ。昨日の低文明人かー」
「て、低文明……?」
「シショー!! エミーネちゃんは魔法使いさんなんですよ!!」
「ああ、此処の人類が使う量子転写大系の劣化技術の使い手だったのかぁ。努力ご苦労。ちゃんと文明の産業革命期まで頑張るんだぞー。その後は大抵科学に淘汰されてお払い箱だけどネ(笑)」
「は……?」
「シショー。後でキンニクのすばらしさをエミーネちゃんにも見せてあげて下さい!!」
「任せといて!! キンニクはエミュレート系の魔法みたいな廃れる技術じゃないからネ♪」
「は?」
「ボクのキンニクがまた一人の迷い人を救う。これぞキンニク、これぞマイ・マッソー・マイソロジィィィ!!!」
「イエス!! マイソロジー!!」
「行くぞ。ミューラー!! 今日もボクと一緒にキントレに励もう!! この大陸の文明低レベル過ぎ人類にキンニクの加護を授ける為に!!」
「ハイ!! シショー!!」
2人が2人だけの世界で未来をキラキラ夢見る少女となり、一緒に楽しそうにジョギングというか。
全力疾走で去っていく姿を彼女は最後まで呆然として見ていた。
そして、その額には青筋が浮かんでいたのだった。
「は……? はぁぁあぁ?!! 何今の!? 何!? 今、超絶侮辱されなかった!?」
ブチ切れバッテンマークが無数に頭部を覆いそうな様子のエミーネが誰もいなくなった海岸線沿いの砂浜で完全に降り切れた。
「ぜぇええええええったい!! 魔法の素晴らしさを叩き込んでやるんだからぁあああああああああ!!? このゲンシジンのノウキンドモォオオオオオ!!!」
怒り狂う魔法少女はやけっぱちに海岸線沿いの触媒の材料を片っ端から集め始めるのだった。
―――数時間後。
一応の準備が出来たエミーネは現地の子供達に珍しい生き物扱いされながらもミゥナ達の事を聞き出し、関わるのは止めといた方がいいってねーちゃんという忠告も無視して、昨日恐ろしい目にあった山の最中へと歩みを進めていた。
彼女の手には麻袋。
そして、簡易に精錬した触媒の入った袋が複数個入っている。
全部、ミゥナの家で借りたものだ。
「ふ、ふふ、あのノウキンちゃん達に魔法のスゴサを頭のてっぺんから足先まで思い知らせてやるわ」
魔法はスゴイ。
魔法はスゴイ。
魔法はスゴイ。
完全にブツブツ言うメンヘラ状態である。
『シショー!! み、見て下さい、脚の小指の先くらい動きましたよ!? クマーがちょっとだけ後ろに下がりましたよ!?」
『ミューラー。それがキンニクだ。成長したネ。ボクの一番のデシなだけあるぞー♪』
『はい。シショー!? 涙で前が見えません!!』
声が聞こえて来たので彼女がようやく到着かと固い艶めく土の道を昇り切り、現地に押し入ろうとすると。
横手に昨日の悪夢を発見した。
「ひぇ?!!」
イノシシの頭蓋骨で出来た骨塚兼寝台である。
「こ、こ、ここ、コケオドシよ!? こんなの!?」
お化けが怖くて10歳まで一人では夜のトイレに行けなかった少女である。
蒼褪めながら出来る限り後ろに下がりつつ、横を迂回した彼女がようやく草原に入り込むと。
「ひ、ひぇええええええええええ?!!!」
更に蒼褪めた顔が強張る。
昨日、彼女を捕食寸前だった巨大な魔獣が微動だにせず二本足で直立しており、その下では和気藹々とした様子で2人の少女が会話に興じている。
「ん? ああ、朝のマホーツカイ? どうしたの? は!? もしかして、お前もキンニクのシトに入りたくなって? ボ、ボクは今、第二の部下を前にしている!?」
「違うわよ!?」
リザの言葉に思わず叫んだエミーネが魔獣にガクブルしつつ、ちょっと腰が引け気味ながらもゆっくりと2人に近付き。
「そ、その魔獣。今は大人しいみたいね。フ、フン。わ、私は魔法のスゴサを証明しに来たのよ!!」
「あーそうですよ。シショー!! エミーネちゃんが魔法を見せてくれるって言ってました」
「へー」
一気にやる気無さげな顔になるリザである。
昔は散々に魔法なる技術体系は喰らった事があるので別にという感じであった。
「く、み、見てなさいよ!! 魔法!! いや、魔導のスゴサに恐れ慄くがいいわ!!」
ザッと袋の中から取り出した触媒の袋を片手に彼女が呪文を唱え始める。
基本的に大陸で魔法、魔導と呼ばれる殆どの技術体系は現象にアクセスする為のプロセスにおいて音声言語を用いるが、音声言語自体に魔法の過程があるわけではない。
簡単に言うと呪文というのは単なる音声での指示にしか過ぎない。
パソコンで一々長ったらしい契約に同意する為のクリック作業みたいなものである。
無論、それが当然で常識で魔法使いたる彼らはその原理の根本が触媒と音声にあると信じており、色々と便利に使っている。
「『我が名において命ずる!! 汝、炎の射手!! 偉大なる蒼き瞳の名において!! その力を我に貸し与えよ』」
瞬間、周囲のマナの急激な吸気が触媒を中心に発生して渦を巻き、袋が燃え上がったかと思うと内部から炎の矢らしきものが上空に撃ち上がる。
「おお~~~!!」
「『炎よ!! その身を七色に変じて華と化せ!!』」
第二次詠唱により、効果中の魔法が更に変化。
炎の矢が爆発すると花火のように散って大輪を咲かせた。
「お、おぉおおおおお~~~~!!? き、綺麗ですよ!? シショー」
「へーマスター言語がJPなんだ? 此処って、第四宇宙団圏内なのかな? それに主体が蒼き瞳だから、この星の中心にアレも埋まってるのかー。なるほどなー」
何かよく分からない事を言いながらノホホンと納得した様子で花火を鑑賞するリザである。
「く!? 何か感動されてない!? 見た事ある!!? ほら、アレはね」
「花火くらい知ってるしー説明必死過ぎ人類ウケルーwww」
リザの言葉にグッと詰まるエミーネだった。
青筋は今にも切れそうだ。
(このゲンシジン!? 花火を知ってる!? 田舎者の癖に賢いわね!?)
「シショー!! シショーはアレ出来ないんですか?」
「え~出来ないわけないじゃん。だって、花火とか単に光を操るだけじゃん。そんなのキンニクさえあればヨユーだもん。フフン♪」
「み、見せて貰ってもいいですか!?」
目をキラキラさせたデシに言われて、仕方ないなーとリザが立ち上がる。
「フ、フン。魔法でも使おうって言うの? この少ない触媒で花火を打ち上げて見せた私に勝負を挑もうなんて無謀ね!!」
そんな強がりを言うエミーネに哀れみの視線を微妙に向けた後。
ニヤリとしたリザがスッと半身で構えを取り、無駄にかっこいいポーズを決めながら叫ぶ。
「キンッ、ニクッ、華ぁあああああああああ!!!!」
ドンッと震脚めいた一撃が地面に撃ち込まれ、片腕が上に向けられた瞬間。
掌からキンニク波動が放出され、淡い輝きが上空にエミーネの花火よりも高い位置に撃ち上がったかと思うと。
ドッッッッ。
そんな爆光と共に巨大で複雑な色合いの大輪を咲かせた。
それは百合であった。
しかも、色だけではなく形まで再現されている。
「な゛―――」
あんぐりと口を開けて絶句するエミーネである。
「フフ。キンニクを侮るモノ。キンニクのオンチョーを感じるがいいぞー。ボクはいつでも待っている!! 君がキンニクのシトになるのを、ネ!!」
キランとリザの白くて微妙にギザギザした歯が煌めいた。
「な、なな、一体、今アンタ何したの!?」
「キンニクに出来ない事はない!!」
「シショースゴイ。うぅ……カッコイイよぅ!!」
胸を張るリザに目を輝かせて両拳を手前で握るデシである。
「マナもエーテルも感じなかったわよ!?」
「そんな化石燃料使ってるから進歩しないんだよ。人類」
「ぐく!? マ、マナもエーテルも無限の力なのよ!?」
「へー、今枯渇仕掛けてるから、人類滅び掛けてるのに?」
「え? な、何言って……」
「あ、知らないのか。じゃあ、自分で考え―――」
「教えなさいよぉおお!? 何その怪し気な術!! アンタ、邪法の魔法使いか何かでしょー!? もしかして、未知の反応って言うのも何か知ってるんじゃないの!?」
詰め寄る少女にまぁたメンヘラだよぉと疲れた顔になるリザであった。
「あーもう答えを他人にねだる甘々人類とか。やっぱり滅んだ方がいいのでは? しょうがないなぁー。ほら、教えてあげるからこっち来て」
「お、おぅ。す、素直じゃない。そうすればいいのよ。そうすれば」
実際にはもう面倒事はごめんなだけのリザが何も無い地面を脚で一擦りすると鏡面のように綺麗な状態の地面に仕上がった。
それにそこらに落ちていた石の破片を使って何事かを書き込んでいく。
「シショー。これ何ですか? おっきな岩?」
「本当に脆弱人類中で一番ミューラーが賢いなぁ。これは大陸。でっかい一枚岩。で~ここが村」
「お~~岩の一番端にあるんですね!?」
「そうそう。で~この大陸中に充満してる化石燃料が今たぶん3割切ってるかなぁ? 大昔にきっと愚かさMAXの連中が使い切れない燃料で面倒事をまとめて地中に放り込んで蓋してたんじゃないかなー? たぶん、ネ?」
「フタ?」
「この大岩の中央をテキトーに空間制御で窪ませてまとめて要らないものをぼーんと放り込んでオナベのフタをカパッと」
「カ、カパッと?」
「化石燃料の蓋だから寿命があるのは理解してたはず。だとすると、全部未来の子孫に丸投げとかマジで弱小人類バカすwww」
泣く子も笑うレベルで爆笑であった。
「―――な、何でアンタが古代の旧暦!? それも禁忌指定書庫の情報知ってるのよぉおお!?」
思わずエミーネがリザの襟を掴んでガクガク揺さぶろうとして自分だけが揺れる。
「大陸中央には破滅が封じられてるってのは国の最重要機密!! マジでスゴイ秘密なのよぉおお!?」
「え~でも、燃料密度見れば、分かると思うけど。それくらい」
「どーいう事よ!? マナもエーテルも目視観測なんて普通出来ないのよ!?」
「キンニクで見れば、一発ですしおすし」
「何!? キンニクって!? それにフタが外れ掛けてる理由がマナやエーテルの枯渇ですって!? だ、だとしたら、今みたいに戦闘でバカスカ魔法使ってたら……」
「ん? 解ってて滅ぶか滅ばないかゲームしてたんじゃないの人類?」
リザが小首を傾げる。
「んなわけないでしょぉおおおおおおおおお!? あああああ、どうしよう!? もしこれが事実だったら!? それにフタって大陸中央にある大奈落上の天空都市でしょ絶対!? クソぅ!? これ論文にしたら、絶対魔法学会で最優秀賞よ!?」
思考が栄誉方面に傾き掛けた少女がブルブルと首を横に振る。
「と、とにかく!? アンタ!? どうやら裏情報に色々詳しいじゃない!! その情報の出所は敢て聞かないであげるわ!! その代わり、アタシを首都に連れて行きなさい!!」
「えー却下」
「何でよ!? アンタ、魔法使いでしょ!?」
「キンニクです!! それとボクにはキントレというスーコーなシメイがあるもん♪」
「キ、キントレ?」
「そうそう。だから、『残念だけど、遠慮します』♪」
「キィィィィィ!!? もしアタシが首都に返ったら官憲ケシカケルわよ!?」
「キンニクに敵は無い。キンニク・ノー・エネミー。キンニク・イズ・ジャスティス!!」
「何なのよ!? 何でアンタが魔導の高等言語、高位言語の類を知ってんの!? やっぱ、アンタ邪法のヤバイ魔法使いでしょ!?」
ガヤガヤやっていると途中から飽きたらしいミゥナがイソイソと昼時の食事。
イノシシ肉の原始人風串焼き(マンガ肉)を持って来た。
「シショー。ご飯ですよー」
「ああ、ミゥナは本当に賢いなぁ……こういう頭でっかちの魔法使いとかより、ネ」
「こ、このぉ!? 世界が滅びたら、アンタだってキントレ出来ないんだからね!?」
「―――なん、だと?!」
劇画チックに固まったリザである。
「世界が平和じゃないとキントレとか意味分かんない事してる余裕なんかないんだから!! ついでにキンニクとやらだって、その内に見るヤツいなくなるわよ!?」
「ッッッ!!!?」
目からウロコ。
いや、むしろキンニクからウロコ。
「む、むぅ……ボクのキンニクを認める者がいなくなってしまう? そうなれば、ボクのキンニクを世界に見せ付けると言う壮大な計画が!?」
愕然としたリザである。
「く……それは阻止セネバ!! よし、じゃあ、適当に弱小人類をお家まで送って、大陸中央の穴の中を掃除するという事で。ボクこれでも綺麗好きだからネ!!」
リザ、サムズアップである。
「よ、よし!! 何か分からないけど、これで協力する気になったわね。じゃあ、アタシを国の首都に運んで頂戴!! そうしたら、色々やって色々準備して色々―――」
「イノシシうまー(゜д゜)」
「うまーです。シショー」
「肉喰ってないで聞きなさいよ!?」
師と弟子は動じずにモクモクとイノシシ肉を齧るのだった。
―――数分後。
「あ、本当に美味しいじゃない。く、何だか負けた気分だわ……」
結局、空腹には抗えず。
エミーネはモクモクと最高の火加減で火入れされ、塩しか振られていないシンプル・イズ・ベスト・イノシシ肉を齧るのだった。
―――数日後。
「元気でなぁ~~」
「ちゃんとエミーネちゃんをお届けしてくるんだよぉ~~」
「風邪引かないようにねぇ~~」
村の桟橋では村人総出で横断幕が掲げられ【エミーネちゃんをお家に返す旅に向かう勇者を見送る会】なる文字が書かれていた。
簡単に言うとミゥナが賢く立ち回った結果である。
エミーネちゃんをお家に返してあげたいの→一人じゃ不安だから私達が一緒に旅をしてあげるね→子供達だけで大丈夫なの!?→ボクのキンニクさえあれば!!→なら安心ね→路銀はどうするのかね?→少なくとも娘の旅を応援する仕立て屋がいるさ。此処に1人な!!(キメポーズ)→出航(今ここ!!)。
誰もが超速理解である。
「うぉおおおお!? 愛娘よぉおおお!? その最強フリフリ頑強ドレスで旅をしてウチの事を宣伝しつつ、首都でもちょっと持たせた品を売って来るんだぞ~~」
「ミゥナ~~ちゃんと道中はみんなで仲良くするのよ~~」
「嬢ちゃ~ん。【オーバー・ドゥーム】で道中魔物に襲われたら、戦うんじゃぞ~~後、帰ったら使い心地聞かせてくれ~~」
正しく船旅を見送る村総出の送り出しであった。
「あねなるものー。お土産一杯買うね~~」
「うぐぐ!? これはイワユル、ゴスィック・ロォリータァアなのでは? ボ、ボボボ、ボクのカッコイイというアイデンテテーがぁあああ!? ふぐぅ!? メンヘラに装備の準備を任せるんじゃなかったよぅ!?」
現在、リザ一同はお揃いで黒ゴスな上に背中には先日の髑髏マークよりは更にリアルで恰好良さげな髑髏が描かれていた。
これからバンドか黒ミサでも始めるのかというイデタチである。
どうやら娘の為に日々夜なべしてチクチクお針子をしていた暇人の父親が無駄に制作意欲を出して頑丈なものを何着も作っていたらしく。
エミーネを送り出す会が発足後は全員分仕立て直したとか。
ミゥナの背中には大きなカバンとダンベルよろしくムジョーさん特性の両剣が布を巻かれて背負われており、『何か違う気がするけど脱出成功!!』と喜ぶエミーネは『これで校長をぶっ殺……ぎゃふんと言わせてやるわ』と仄暗い喜びに魔族染みた嗤いでウケケケと妄想に浸っている。
そして、それを背後から見ている月に一回しか村に寄らない商船の船員達が村から出て来た可愛いんだか不気味なんだか分からない黒い少女達の背中を『あの村、邪教でも流行ってんのかな……』と通報するべきか、せざるべきか悩む事になったのだった。
『………』
そして、1人タウィル君はリザの鞄の中で回想する。
そう言えば、此処ってどいつのシマだったっけなぁ?と。
まぁ、別に宇宙に無数生息する人類種の傍系が一つ潰れたくらいで種族の絶滅は有り得ないのだから、滅んだら滅んだで構いはしないのだ。
大宇宙の最中では種族の興亡など無数の星の瞬きに等しい数ある現象の一つでしかないのだから。
こうして魔法とかクソ程役に立たない技術を根絶し、素晴らしきキンニクを見せ付ける旅(元竜談)が始まったのだった。
「泳いで圧した方が早い気がする……行くぞ!! ミューラー!! 港街までレッツ・キントレ!!!」
「はい。シショー!! あ、エミーネちゃんも一緒にやりましょう」
「え゛?」
「あ、そーれ♪」
「い、いやぁああああああああ!? またドザエモンはいいぃいぃぃぃやぁああああああ!!!?」
こうして今度は荷物をちゃんと船に降ろす事が出来た根暗ヒキコモリ系優秀魔法使いのエミーネさんはまた死にそうな目に合いながら、沈みゆく意識の中でキントレなのか溺れているのか分からない状況へとどっぷり嵌っていくのだった。