表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『エンジェルフェザー』ようこそ既視感ファンタジーへ!  作者: T-time
第2章5節 ファドルスタンピート
63/104

063話『始まりの鐘』

 ついに、始まりの鐘が鳴った。


 ジョロモの街には南門、西門、東門と、大きく3つの門があるのだが。その他にもいくつかの小さい出入り口も存在している。


 大きな門だけ守っていても、何処から奇襲がくるか分からないため、ある程度の分散が必要になるわけだが。

 俺たちのようなぺーぺ-は、最低戦力として各所に割り振られる。


「東門、戦力揃いました」

 伝令が走り去っていく。


「鐘が鳴ったんは朝やのに、まだ攻めて来ぃへんな」

 時計は16時を過ぎているがまだ軍勢は動かないらしい。

 最初は緊張して、うろうろしていたトオルも、今では木箱を並べた上で寝転んでいる。


「こんなもんさ、だが新入り熟睡するんじゃないぞ?」

「ガハハハ!」

 銀色の鎧を着こんだ頑丈そうなおっさん達が、こっちをからかって笑っている。


 この門に配属された、第1陣のパーティだ。


 俺たちはその後ろで援護する第2陣に選ばれた。漏れ出たモンスターを狩る役割だ。

 そしてその後ろにもランクの付いていない、駆け出しストレンジャーが控えている。彼らの基本は補給だ。1陣の魔法使いが撃つ魔法のエンの補充や、弓、回服薬の補充等を担当する。


 これが西門の布陣だ。


 正面である南門に至っては、ランク7の化け物も待機しているらしいと噂で聞いた。ローズさんだろうなと容易に想像は付いたが。

 しかし、黒衣の魔法使いの噂は聞かなかった。彼らはこの窮地に来なかったのだろうか?彼らさえいてくれたらと、淡い期待は捨てきれない。


「暗い顔するんじゃないぞ」

 1陣のクルセイダーが声をかけてくれる。


「安心しろ、俺たち『銀鎧(ぎんがい)団』は、南門でも守れる鉄壁の軍団だ」


「八橋です、微力ながら奮迅します」


 『銀鎧(ぎんがい)団』は装備を銀で揃えたクルセイダーの軍団だ。

 構成人数は6人、その半数がクルセイダーという、少し変わった編成だが、後衛の2枚の魔法使いへ攻撃は届かせないのがウリだ。

 実際大人数の戦闘でもクルセイダー一人が4体の足止めをできるため、12匹のモンスターを一気に止めることができる。完全にダムだ。



 奥に控えている静かな集団は『レッドローズ』のメンバーだ。

 構成員はこちらも6人。

 なんと炎耐性持ちのドワーフが前衛で4人。

 後衛からはどちらも炎の精霊を従える魔法使い2人。

 《ファイアーサークル》と呼ばれる魔法を放ち、敵を蒸し焼きにしながら、炎耐性の高いドワーフがその内部に切り込むという斬新なスタイルのチームだ。



 個性のある2組と比べると、一番安定しているのが『ウロボロス』というパーティ。

 4名ではあるが、パラディンで守り、クレイモアで切り込み、2人の魔法で強化と攻撃と回復を兼ねている。

 そして一番ランクが高いのも頼れる要因だ。



 2陣は俺たちのパーティと、トオルのパーティだけだ。


「南門は激戦区やろな」

 寝転がったままトオルが呟く。

「俺は役には立ちたいが、せいぜい西門で死なない程度に頑張りたいよ」

 俺の役目はパーティメンバーを誰も死なせないことだ。


 一応、ジョロモからの依頼で、各門へエスケープの達人集団である、ミケーネ商会のメンツも居るが、即死の場合や、乱戦で近づけない場合は、どうしようもない時もあるだろう。


 そんな場面にならないようにも、東門で良かったと思わざるおえない。


「大丈夫だ、俺たち銀鎧が付いていれば、後ろに進む敵はいないさ」

 銀色に輝くフルアーマーが頼もしい。


「俺たちにも出番くれよな、銀鎧さん」

 ウロボロスのリーダーが、銀の鎧に肘をかけてよっかかる。

「攻撃は最大の防御だ、止めるより先にまっぷたつにしちまえばいいんだろ?」

 彼はオルタナ、クレイモアだ。


「俺たちがうまく防げば、敵はなにも出来ない、あとは好きに料理すればいいだろう」

 銀鎧のパラディン、ダンケルクも応戦している。


 二人の間には、火花が見える。


「攻守一体。臨機応変に動くためにはどちらに偏っても難しくなりますよ」

 拮抗状態に、つい口走ってしまう。


 ダンケルクとオルタナは二人してこっちを向いた。また地雷踏んだか?

「俺たちの間に割って入るとは……」

「若さか」

「俺の目指す方向性を言っただけですよ」


 二人は顔を見合わせて豪快に笑った。

「仲が良いなら喧嘩しないでくださいよ」



 その時、鐘を持った早馬が走ってきた。

「敵陣営動きあり、戦闘準備!」


 俺は深く息を吸い込むと、体の隅々まで酸素を取り込むように貯めてから、一気に吐き出した。

 守りきる。この街も、仲間達も!


 こうして人生最大の試練が幕をあけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ