006話『始まりのギルド』
森を抜けた頃には、ちらほらと民家が見えてきた。骨組みが木で出来ている簡素な一戸建て、屋根は茅葺きなどで、科学が発展してた俺の時代からすると、質素で貧弱、これは家ではなく「小屋」と表現しても良い。
しかし、そこに生きる人々は牧歌的で、酪農や農業をして暮らしているようだ。
「この人達は市民ではないんだ。街の外は土地代がなく、好きに使って良い。しかし魔物に襲われる危険がある」
魔物というのはきっと、洞窟のなかでタブラが戦っていた蒼白いもの。フラウと言ったかな。平和に見えてもこの時代には、人を脅かすモノが沢山あるのか。俺の時代では考えることが出来ない生活だ。
「周辺の警護や、モンスターの討伐もストレンジャーが一役買っているの。景気のよい農家なんかは専属契約を結んでいたり、自分でストレンジャーの資格を取って、自営をしたりしているところもあるんだから」
ストレンジャーという職が、この世界を回していること、様々な選択肢があることをラスティからも教えてもらったり。
そんな話をしながら進んでいると、視界の奥に白く横線が見えてきた。
「あそこがジョロモって街なんだよ」
ラスティがピョンピョン跳ねている向こうの、その横線が巨大な城壁だと気づいた頃には、自分達の回りにちらほらと荷馬車などが見え始めた。
「壁の外で収穫した作物を、ジョロモで売るために運んでいるようだ。ほら見てごらん、回りをストレンジャーが護衛してるだろう?」
よく見ると、頭や肩にラスティと同じ羽根飾りを付けている。鎧を来た戦士や、ローブを纏った魔法使いまで、とても判りやすい格好で歩いている。
まばらだったキャラバンたちは、同じ大きな城門が近付くにつれて、一列に並んでいった。
ファンタジーの定番だと、入り口でひと悶着ありそうだが、通行料も無くすんなりと通過できた。
「あっさり通れてビックリしました」
「魔物ならすぐわかっちゃうし、悪い人が入り込んでも、ストレンジャーだらけだと袋のネズミでしょ?」
そりゃそうか。
「人同士のいざこざも有りそうですけど」
「あるが、街は静観している。自分達で解決するよ」
「じゃあ法律は無いんですか?」
「天使が法律を決めてはいるが、殆どは古代兵器には触れるなって程度だな、勝手に他人を殺しても知らぬふりだ」
人殺しもOKとは……しかし大きな問題にはなっていないんだろう。
実際にこの街を見ていると判るが、殺伐としている雰囲気は全く無い。建物もしっかりしていて、レンガや石造りの建物がメインで、橋のアーチなども上手く出来ている。
そこには沢山の人がいて活気があり、人類が一度破綻したなんて思えないほどのパワーがあった。
特に街の中央を通っている大通りの活気がすごい。馬車がすれ違える土の道、その脇には人が歩く石畳が通っている。更に脇にはずらっと露店も並んでいる。
まるでお祭りのような雰囲気で、自然とテンションが上がってくる。
馬車に乗せて貰いギルドへと向かうと。歩くと数時間掛かるらしい道程を一気に走り抜けた。
「これが、ギルドか」
高さが5メートルはある門が、待ち構えていた。
息を飲む俺を、ラスティは「取り敢えず中に入ろうよ」と強引に引っ張って行く、とにかく俺の守護を見たいようだ、浮き足だっている。
かくいう俺も心は浮き足立だっている。
なにせこの入り口をくぐれば、俺は冒険者になれる!
マンガやアニメで見てきた主人公のように活躍出来る!
人生という名の冒険の第一歩なのだから!
思ったよりも簡単に開く、ひときわ荘厳で大きな門を開けると。
広いロビーに、いくつもの椅子があり、全て右側のカウンターに向かって並んでいた。
そして、館内に鳴り響くアナウンス
「157番でお待ちのお客様、二番窓口へお越しください」
「いや、市役所じゃん!!」
タブラは改まった顔で言った。
「よし、番号札を取ってくるんだ」
「いや、市役所感!」
お願いファンタジー戻ってきて。
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