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034話「科学の力」

 ワイルドボアのクエストを受けるまでに、俺は一人で準備をしてきた。


 そんな俺が居るのが『ダンジョン』で、相対するのは、有名なモンスター『スライム』だ。

 お察しの通り村人でも撃退できるレベルの敵である。


 純粋なスライムは、攻撃も遅いし魔法も使ってこない。

 強いて言うなら、その粘液に溶解性があり、直接皮膚などにくっつかれると火傷のようなダメージを負う。

 そこにさえ気を付けていれば、特に問題はない。


 また、この世界のダンジョンと呼ばれるものは自然生成されるものではなく「人工的な施設」だ。


 実際、俺のいるダンジョンは入り口に大きく看板がでていて……


「スライムダンジョン 推奨レベル1~ 料金10エン」

 と書かれている。


挿絵(By みてみん)


 入り口にはポスト状のものがあり、その中に指定の金額を入れると扉が開くのだ。


 つまり「経験値の無人販売所」ってこと。


 そんなワクワクドキドキを返してくれ的なダンジョンは、個人でもある程度の魔力……つまりお金を使って作ることができるらしい。

 人気のダンジョンには行列ができる程だ、それで生計を立てている人も居るとか。


 んな訳で、わりとあちこちにダンジョンの入り口がある。

 今日はその中でも簡単に攻略できて、人気が無いものを選んでみた。


「このダンジョンは三階層、取り敢えず一階はスライムか」


 必ず数匹で現れるスライムを、一匹残して倒した。

 ようやくここに来た目的を開始しよう。


「まずは魔法だな」

 俺は手をかざし、スライムへ向ける。


―爆ぜよ小さき炎―

「バクチク」


 呪文を唱えると「パン!」と音がなった。

 フォルネウスの鱗が10枚程粉になって消える。


 バクチクは炎魔法。炎の守護がなくても、持っている松明の炎程度で問題なく発動する。しかし攻撃力はほとんど無く、素肌に直接触れると「あ、痛っ」って声が出るくらいのダメージだ。レザーアーマーを着ていればダメージは無いだろう。

 実際にスライムにもダメージは出ていなさそうだ。


「これだけじゃダメか」


 独り言を言いながら、スライムの攻撃をかわす。

 そして、懐より銀色の筒を取り出す。


 これは彫り師のよろず屋で購入したものだが、片方の端を塞いであり中に丸い金属を入れている。

 バクチクの魔法で撃つ鉄砲が出来ないかと考えたのだ。


 実験のためもう一度魔法を唱える。


ー爆ぜよ小さき炎ー

「バクチク」


 パンっと音がするが、筒から金属が勢い良く飛び出ることはなかった。

「威力が弱すぎるのか……」


 その後も何度か挑戦してみるが

 4倍掛けにしてようやく飛び出るようになったが、フォルネウスの鱗は、10枚×2×2×2になるので、80枚かかった。

 そのくらいの攻撃が出せるなら、直接当てた方がダメージ出るんじゃないか? という残念な結果になってしまった。


「難しいもんだなぁ」


 この世界で銃を作ることはできない。

 火薬の所持や製作を天使が見張っており、それを犯すと強制的に正義を執行されるのだ。


 銃自体は古代兵器とされており、遺跡などでたまに見つかって、飾りやコレクションで取引される他、ギルド経由で天使が買い取り、破棄するそうだ。

 その買い取りが破格だということで、使用を考える者は居ないのだろう。


「魔法との複合で、近いものができると思ったんだけどなぁ」

 というわけで、鉄砲については一旦保留してみる。

 500年の間に、同じ事を考えた人が居なかった筈もないだろうし。現在、その技術がないということは、そういうことなんだろうな。


「こっちはどうだろうか」

 今度は手に取った小さな袋を取り出し、スライムめがけて投げつける。

「ライター」

 と呪文を唱えた。


 袋がぶつかった瞬間に破れ、中から細かな粉末が飛び出した。

 その瞬間にライターの魔法が着火。

 炎は一瞬で燃え上がり、天井に届くまでに火柱が上がったが、一瞬で消えた。


「ありゃ? 昔呼んだ漫画とかでは、爆発する筈なんだけど……」


 そう。これは粉塵爆発(ふんじんばくはつ)の実験だ。

 空気中に可燃性の粉を一定量漂わせた所に火をつけると、一気に燃え上がるというものだ。

 しかし、思ったより効果が薄い。


 この後何度も実験をして分かったことなんだが。

 粉塵爆発は、閉じた空間一杯に粉が充満していないと、爆発せずに威力は低い。

 開かれた空間で、手に乗るほどの粉では大した威力にはならない、目眩ましや脅し程度が関の山だろう。


「参ったな、こんな事ならもっとしっかり勉強しておけば良かったよ」

 スライムの懸命な攻撃を避けながら、ため息をつく。

 この時代には無い科学を持ち込めば、他人よりも戦闘で優位に働くと思ったのだが、そう簡単にはいかないようだ。


「他に、何か激的な反応をするものはなかっただろうか……」


 マグネシウムの燃焼、テルミット反応、色々名前は思い付くが、この時代で()()()()()金属が簡単に手にはいるとは思えない。

「もっと簡単に爆発を起こすもの……水蒸気爆発なんてどうだろう」


――熱を加えると体積が増える物質はいくつもある。

 しかし空気の膨張率は低く、273℃でようやく2倍になるのに対して、

水は100℃以上で水蒸気に変化し、その体積は一気に1244倍になる。一瞬で水を熱すれば爆発的に巨大化するのだ。


 これなら筒の中で金属の玉を押し出せるかもしれない。

 しかし、バクチクは音だけで熱量は低い。


 熱する、と言えば……

『ヒートブラックスミス』か!


ーメラメラと揺れる炎に

  お前の体は包まれて

   新しき命に生まれ変わるー


「スチルヒート」


 一瞬の間を置いて、筒から見えないほどのスピードで金属の玉が弾き出された。スライムに穴が開き、背後の岩にめり込んでいる!

 スライムは原型を留めることが出来ずに自壊し、ダンジョンの床に吸い込まれていった。


「よしっ!」


 実験は成功と言えるだろう!

 この武器があれば立ち回りに展開が増える。


 ヒートブラックスミスの魔法名を変えてみたが、熱量も変わらないようだ。

もちろんテンプレのまま使っても良いのだが、敵に魔法の詳細を分からせない効果もあるし、格好よけりゃモチベーションも上がるだろ?


 このヒートブラックスミス、何度も試してみたのだが。

 魔法の()にする温度程度まで一気に上がるようだ。

 松明であれば1000℃、体温だったら40℃前後だ。

 今回は松明で出したが、体温以外火種がない場合は、三倍掛けしてようやく150℃、4倍掛けで300℃だ。

 このくらいだったら、なんとか水蒸気が作れるだろう。


 また、この魔法は3行詠唱だ。

 4倍掛けで消費EP8倍

 三行詠唱をキャンセルする場合消費EPは8倍

 合わせて消費EPは64倍という激しい倍率。


 一応このスキルはランク2の魔法なので、基礎の消費EPが少ないのが救いだが。


 40×64=2480

 わりと高いコストにはなるが、威力と比例させるとかなり軽いだろう。

 しかも、予め彫っておけば、ノータイムで出すことができるとくれば、これはかなり高いイニシアチブを取ることができるだろう。


 これでいい。

 万が一の時の切り札が出来た。


 そうと決まればこんなダンジョンなんかはやくクリアして、あの彫り師に頼んで、スチルヒートの魔法を刻んでもらおう。

 また嫌な顔されるだろうけど。


 気負うことなく、このダンジョンはすぐにクリアできた。

 最後はでかめのスライムを倒して終わり。結局最後までスライムしかでてこなかった。


 ちなみに、ダンジョン内のモンスターは、死ぬとダンジョンに吸収されるので、ドロップ品も死体も残らない。

 人気のダンジョンは、ボスを倒した後に出てくる宝箱が貰える仕様になっている。そのレア物を目当てに人が集まるわけだ。


 では、ダンジョン内で惜しくも負けてしまった場合だが。

 その場合もダンジョンに包み込まれるように吸収され、入り口に強制排除される。ダンジョンでは死ぬことはまずない。

 しかし、その際に身に付けていた剣や魔道具は帰ってこない事もあり、ボスを倒した後の宝箱に入っている仕様もある。


 仕様は作者によりそれぞれだが、基本的には宝箱の「キャリーオーバー」制度に使われているようだ。


 そしてこのダンジョンの宝箱には、数十本の「ひのきのぼう」が入っていた。


 誰だよここで負けまくった奴は!

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