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016話『ベアウルフの正体』

 ダッシュで山を降りてきたので、予定より大分早くギルドへ戻ってきた。時刻は夕方の6時くらいだ。


「早かったですね、山頂まで登ってこられたんですか?」


 さすがに汗だくでは怪しすぎるので、午前中に探索した川の辺りで、少し休んでから息を整えた。


「はい。山頂までいって折り返してきました」

「何か異常はありませんでしたか?」

「ベアウルフという動物がが出たとの情報を得ました」

 自分達で対処できる生き物か分からない以上、報告してギルドに判断を仰いだ方が得策だろう。


「ベアウルフ? 潜んでいても滅多に人に姿を見せることのない動物なんですが……」

 そうなのか、だったら辻褄があわないことが出てくるぞ。


「山道を探索中、薬用の苔を取っている商人とすれ違いまして、その人が遭遇したと言っていました。しかも威嚇されたと」

「それはおかしいですね、ベアウルフ自体は急遽対処しなくても良い動物ですが、少し引っ掛かりますね」


 フジさんは何やらカウンターの石板に羽ペンで文字を書いてゆく。そしてこちらに目線を戻すとこう言った。


「報告ご苦労様でした、今回の報告に私は違和感を感じました。貴方達嘘は付いていないわね?」


 俺達は首と両手を振って、絶対に違うとジェスチャーした。


「この時期に苔を取りに行く商人はまずいないでしょうし、ベアウルフの行動も普通じゃない。じゃぁ何故商人はそんな嘘を付いたのか?」

 口調はきついが、怒っているふうではない。

 むしろ教育してくれている母親のような口調だろうか。


「苔の生える時期、ベアウルフの生態……貴方達はまだまだ勉強しなきゃならないことがあります。剣や魔法の腕を磨くだけで立派なストレンジャーにはなれないわ。早く一人前になれるように頑張ってね」


 最後は優しい笑みを見せてくれた。

 フジさんは機械的に仕事をこなす受付嬢だと思い込んでいたが、厳しいけどちゃんとみんなの事を見てくれる良い受付嬢さんだ!


「ありがとうございます」

 未熟さを突きつけられた形ではあるが、心地よいプレッシャーがやる気に変わっていくのが分かる。


「さ、貴方達の今日のお仕事は終わりよ。あとはこの報告書を元に、より高レベルのスカウトを募集します。

 何もなかったらそれで良いし、何かあったら貴方達の報告が意味のあるものだったということなんだから」


「俺達でもお役に立てたなら、嬉しいです」

「仕事ってそういう気持ちでやるものよ、明日も頑張ってね」

「はい、頑張ります」


 フジさんはにこやかに手を振り、業務に戻っていった。



 9番カウンターで今日の報酬を受けとると、待合室の席で、半分に分けた。


「フィオナちゃんお疲れさま」

「ちょっと怖い思いをしましたけど、何ともなくて良かったです、私たちの仕事が役に立つって思うとやる気がでますよね!」


 確かに。500年前の世界では、皆がこういう充実した瞬間を、仕事に感じていたのだろうか?

 自分達が社会のためになると、いつの間にか思わなくなってしまうのではないだろうか?

 この気持ちを初心とし、なるだけ忘れないように昇進しようと心に誓った。


「トキヒコさん、パーティの件なんですけど。よかったら組んだままで良いですか?」

「えっ、それは願ったりかなったりだけど、いいの?」


 たしか、このクエストの間だけと言ってしまったが。話しているうちにだんだんと友達になったような気がして、解散するのは勿体ないと思い始めていたのだ。


「よかった、私逃げるだけで何もしてないから、役立たずだって思われてるんじゃないかなって心配でした!」


 いや、それは俺も同じだったと思うんだけど。


「トキヒコさんはカイフォン持ってますか?」


 え、急になに、そのヤバそうな響き。


魔法機構(アーティファクト)かな? 持ってないなぁ」

「結構高価ですもんね、私も持ってないです」


「俺、田舎育ちだったから、カイフォン自体知らないんだ」


 ちゃんと聞いておこう。

 知ったかぶりは危険な気がする


「離れたところで、話せる通信魔法機構ですよ」


 ちゃんと聞くと。

 二枚貝の一種である、ハナレハサミ貝というのがいて貝は、二つに分かれても生きているのが特徴で、お互いに引き合うそうだ。そしてそれを一人づつ持っていれば、離れていても連絡が取り合えるというものらしい。


 カイフォン……

 響きはやばかったが、齧りかけのリンゴとの関係は無さそうでほっとした。


 まぁ、結局持ってないので、取敢えず明日もギルドで集まろう、とだけ約束して今日は解散になった。


 帰り際見えなくなるまで手を降ってくれたフィオナちゃん。


 ああ、女の子のパーティメンバーっていいなぁ。




 宿に帰ると、タブラ達も帰ってきていた。

 ギルドに行くでもなく、いつも出掛けている。


「ただいま帰りました」

「どうやら、上機嫌のようだが、クエストが上手く行ったのかな?」


 目ざとく俺の調子を察知してくる、これが一流の洞察力か。


「はい、同レベル帯のパーティメンバーも出来て、山岳地域の方の偵察に行ってきました」

「ふむ、さてはメンバーが女性だったのだね」

 口のはしをクイッッと上げながらいじってくる。


「え、なになにー、どんな子なの?」

 ラスティはストレートに聞きすぎでしょ。


「今度ローズさんの所に、連れていく時紹介しますね」

 見透かされてるのも、根掘り葉掘りも困るので、はぐらかして鎧を脱いでベッドの横に置きにいった。


「山岳地域のクエストは上手く行ったのかな?」

 その様子にタブラも上手く話をそらしてくれた。ラスティは少し物足りなさげだが。


 俺はギルドでした報告を、もう一度してみた。タブラはフジさんと同じように首を捻って「この次期に苔は取りに行かないだろう」と言う。やはりそうなのか。


「しかもその商人がベアウルフに威嚇されたと言ってて」

「ベアウルフは大人しい動物だ、人を恐れて逃げるのが普通なんだがな」


 やはり同じことを言っている。

「あ、そう言えばその商人、袋は大きかったけど中は空っぽだったんですよ」

「収穫がなかったと考えるべきか」

「逆に山に何かを置いてきたのかも知れないよね」


「明日、私たちもその山に調査に行ってみることにする」

「はい、なんか思い出すとモヤモヤしますねこの話」


 モヤモヤで思い出したんだが。


「所でベアウルフってなんですか?」



 カメ石にあった写真を見せて貰うと。


 なんか昆虫っぽかった。


 ああっ! もやもやするっ!

ようやく次は戦闘シーンです。

主人公は空気です。


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