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『エンジェルフェザー』ようこそ既視感ファンタジーへ!  作者: T-time
第3章5節 タブラ=ラサ=タイム
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103話『必要なもの』

 ごたごたした後片付けは、全てミケーネ商会に任せることにした俺たちは、タブラの住み処に戻ってきていた。

 もちろんクロネは悪態をついていたが、タブラは意に介さない。


「お土産を受け取れば気が変わるさ」


 火薬の事だろうが、本当にそうだろうか……持っているだけで天使に狙われる厄介事、そのものなのではないだろうか?

 まぁ、この二人の関係性の問題だ、放っておいてもいいだろう。



「さぁ、次の行く先はタイガ地方だ」


 もう付いていくのは決まっているらしい。

 確かにタブラと一緒に行動できるのは嬉しいことだが、堕天使教の戦いの精鋭が待ち構えている思うと気が重い。


「確か、知り合いの領主が困っているって事でしたね」


「そうなんだ、彼は変わり者でね。領主と言ってもそこには殆ど人間は暮らしていないんだ」


「アミラックさんっていう優しいおじさんなんだよ」


 領主といえばハウスベルグ家やモナンヘーゼル家のように、民を危険から守るようなイメージがあるのだが。

 殆ど人間がいないとはどういうことだ。奇人変人の予感がする。


「急ぎたいのはやまやまなんですけども、もう少ししたらうちのパーティメンバーが到着する手はずになってるんですよ」


 もちろん、カリンとバッシュの二人だ。

 きっと馬車ではなく早馬で来るのだろうから、そう時間はかからないだろう。

 もし、懸念があるとすれば、カリンがジョロモの街を出られないかもしれないということ。となり街ならいざ知らず、早馬でも数日かかる道程だ。

 こういうとき携帯やメールが使えないのは辛い。


「それにこの街でしか手に入らない情報も欲しいですね」

 そこにウノが助け船を出してくれる。


「俺も少しだけ準備に時間が欲しいんです」


 急ぐ旅だとは理解している。

 こうしている間にも、堕天使教は力を蓄えているのだろう。


「判った、準備もあるだろう。それに、君の仲間だったらきっと大きな手助けになるはずだからな」


 快諾してくれた。

 そうと決まれば、やりたいことは山ほどある。

 早速指示を飛ばす。なかなかリーダーも様になってきたんじゃないか?


「ウノとピノは組んで情報を集めてくれ。堕天使教のメンバーや、教主の現在の居場所など判る限りでいい」

 情報量として、使用できるように崩した1万エンを持たせる。

 ピノは苦笑いしながら受け取ると。


「これに見合うくらいは働いてきますよ」

 と言い、早速出ていった。


「フィオナちゃんは、武器を新調してくれ」

 俺が地下に潜っている間に、かなり敵を倒したのだろう。斧は刃をすり減らしては研ぎを繰り返し、だいぶスリムになっていた。

 それでも斧頭だけで15キロくらいはありそうだが、これからは切れ味も必要になってくるだろう。

 杖等は消耗が少ないが、近接武器や鎧は消耗品だ。


「そうですね、名残惜しい気もしますけど……」


「ラスティ、良かったら付いていってくれないかな」


「いいよー、どんなの買う?」


「フィオナちゃんのレベルで出会う敵なら、全てにダメージが通るくらいの武器で、精霊の加護があるやつがいいかな」


 これから出会う敵はその上をいくかもしれない。しかし、無理に大きな武器を背負っても戦える訳じゃない。


「うえ、結構高いと思うけど……」


 俺鞄から虎の子の、ドラゴンの牙を取り出した。

 そう、雷の魔法を撃ったときのあれだ。

 価値で言うと2万エン……つまり日本円で200万円程の金額。


「足りなければ、これを担保にあとで残りを払うよ」


 まるで大富豪にでもなった感覚だ。

 しかし、自分の欲求のために使おうとは思わないし、今はそんな余裕もない。


「わかった、色々見て回ってくるね」


 ラスティはその金額に物怖じすることもなく受け取ると、お使いを頼まれた子供のように玄関を飛び出して行く。

 遅れてフィオナちゃんがそれを追いかける。

 誰が誰の買い物に行くのか判ってるんだろうか……


「さて?」


 タブラが、満を持して俺に次の言葉を催促する。


「少し付き合って貰えますか?」


 そういうと、俺達は近くの人の少なそうなダンジョンへと移動した。



 鬱蒼とした森を分け入ると、急にぽっかり口を開けたダンジョンが出現する。

 前にも説明したとは思うが、ダンジョンは個人で製作できるもので、街の外であれば許可すら必要ない。


 ただし、収入のエンが消費エンを下回ると、大地に吸収され消えてしまうため、放置し過ぎて誰も来なくなったダンジョンは勝手に無くなるのだ。


「ここなんか良い感じだな」


 寂れて、今にも消えてしまうそうな雰囲気を醸し出している。


「推奨ランクとかの看板壊れちゃってますけど」

 多少の不安が残る。


「まぁダンジョンでは死にはしないからな、負けるのも良い経験だぞ」


 その口振りから、タブラを負かす存在が居るのかと冷や汗が流れた。昔の話だろうか? 今の姿からは想像できない。


「入場料は高くないですし、そう強いモンスターも出てこなさそうです」


 そう言いながら二人分の料金200エンを放り込むと、扉が開いて中に吸い込まれていった。

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