表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェリシニアの花嫁  作者: 古都里
第二章
14/17

三 祈りの末に

「そんな甘い話が通じる訳が無いでしょう?」


「何故だ?」


 ケセルトンは大きな紅い瞳でソシエルを見た。美しい瞳だった。

 そこには一点の曇りも無く、そしてソシエルが許されると本気で信じている。


「貴女は甘い。その甘さがいずれ我が身を滅ぼす元となるでしょう」


「私は死ぬ。お前がいなければ手当てをする者がいなくなるから自然に死ねるかもしれないし、そうでなければアリステアを挑発する」


 じゃらり、と、鎖の鳴る音がした。ケセルトンが身をよじった際に鳴った音だ。


「お前は姉上様を信じないのか?」


「信じられませんよ。あんな冷酷な女」


 ふんと、鼻を鳴らすとソシエルはぐいっとケセルトンの体を押して回し、自分の正面に彼女の顔が来るようにした。


 ざんばらの銀髪。大きな痣が出来た顔。引き裂かれた衣服は腰周りに辛うじて残っているにすぎない。上半身も傷だらけで、手毬のような小さな乳房も鞭の先を逃れる事は出来なかった。


「姉上様ぞ?」


 言うケセルトンに、ソシエルは唐突に口づけた。

 からからに渇いて皮がめくれた唇の奥は切れていて、血の味がする。


 ソシエルはひたすらにケセルトンの口腔内を犯す。

 汚してやりたい。穢してやりたい。もっともっとボロボロに!


「つっ!」


 ソシエルは顔を引き、唇を拭った。血の色。ただしケセルトンの血の色ではない。ソシエルの血の色だ。思いっきり、舌を噛まれた。


「心が伴わぬ接吻などしてどうする?」


 遥か昔、ケセルトンが甘受していたもの。

 しかしそこに愛がないのならばなんと空しい行為である事か。アーケイディスと出会う前にその行為を甘受していた己が信じられない。


 ぺっと、ケセルトンは唾液と血を吐き出した。そのケセルトンの顔を、ソシエルは思いっきり殴った。何かが砕けたような嫌な音がする。その音にソシエルははっとした。


「ケセルトン……様?」


 再び、ケセルトンは唾液と何かを吐く。その何かは血に塗れた真珠のようだった。


「……奥歯が折れた」


 ソシエルは恐怖に襲われた。何故そう淡々としている? 怖くはないのか? このまま自分に殺されてもおかしくはないものを。


「貴女は、所詮殺される。アリステア様はそろそろ貴女に飽いておいでだからな」


「それは重畳」


 ケセルトンは笑った。


「レントの民に自害は許されておらぬのだ。戦士として最後まで戦いぬけと。だが、私の命はそう長くはもつまい。いい加減、弄ばれるのにも飽いた」


 何故助けてくれと請わぬのだ? 何故逃がしてくれと請わぬのだ? 死ぬのが怖くないのか?


「お前がフェリシニアに戻るつもりが無いのは解った。最後に一つ、教えて欲しい。アリステアの赤子は元気か?」


「『シャーロット』様ならお元気だ」


「そうか」


 ケセルトンは目を閉じた。喋っていると随分と体力を消耗する。


 死ぬのは重畳だと言い放ったケセルトンだが最後まで諦めるつもりはなかった。

 それがレントの民の誇り。

 シャーリーが元気なら、私も頑張れる。


「私はもう行く」


 ソシエルは踵を返す。そのまま、彼はアリステアのほうに向かうのだろうかとケセルトンは考えるが胸の内は静かであった。


 かつんこつんと、靴の音が響く。

 ソシエルが刻む足音。


 だが、突然そこに違う足音が混じった。

 ソシエルは気付いていないようだが、アリステアの足音ではない、足音を隠そうとして猫のようにしなやかに走る、恐らくは男であろうモノの長靴が立てる音にケセルトンは紅い目を見開く。


 気配を消そうとしているのだろう、ケセルトンでなければその気配にも足音にも気付かなかったに違いない。


――まさか……!!――


 叫び声を飲み込んだ。


 その刹那、見えたのは、膝を着いた頭部を失った身体と、ケセルトンの足元に転がってきたソシエルの頭だった。




◆◆◆

 城の見取り図を手に入れる事自体は案外簡単だった。


 第四諜報部──サーディシエントにおける諜報部アジト──にいた者達の内何人かがアーケイディスの顔を覚えていた為、疑いもせず、長年かけて作った城の見取り図の写しをアーケイディスと彼の小鳥達に渡したのである。

 しかし、皆じっと見詰めるだけで、誰一人受け取ろうとしない。


「もしまかり間違い、死ぬなり敵の手に落ちるなりした時にそれを持っていると、ややこしいですもの」


 とは、妾妃達が揃って言った言葉だ。

 見取り図は頭の中にある。だから大丈夫。


 そして、『籠軍』は動き――。


 アーケイディスはあっさりと城への侵入を果たし、そして呆気なさすぎる位に容易くケセルトンを見つけた。


 見つけたら歓喜を覚えると思っていた黒竜王は、しかし唖然とする。

 血まみれの銀髪を見た時にケセルトンがどう扱われているのか、ある程度覚悟はしていた筈なのに。


 夜でも明るい拷問場の光の為にケセルトンの傍にいるのがソシエルだと言う事がすぐに解った。解った時にはソシエルの首を跳ね飛ばしていた。許せなかった。自分の最愛をこんな風に辱めた男を許せる筈がなかった。冷静さの欠片が残っていたなら情報を吐かせる為に一瞬の生を許しただろうに、アーケイディスの心にそんなものは残っていない。

 

 すぐにケセルトンの元に走り寄ると彼女は絶句していた。

 紅い瞳が見開かれて、唇が確かに『あーけいでぃす』という言葉を紡ごうとし、そして叶わずげほげほと血を吐いた。

 苦しさに、段々紅い瞳が閉じられようとする事にアーケイディスはなんとも言えない恐怖を覚えた。


「ケセルトン!!」


 衛兵達を呼んでしまう可能性が頭から吹き飛ぶほど、アーケイディスは焦っていた。

 

 今、意識を手放したら死んでしまうのではないか!?

 

 ケセルトンの身柄を解放して、この禍々しい拷問場から出なくてはならない。

 アーケイディスの悲鳴のような言葉に、ケセルトンは再び目を開けた。しかし紅い瞳は既に焦点を結ばなくなっている。

 

 嗚呼、と、アーケイディスは思った。


 此処にいると見当をつけてすぐに見つけられたのは良いが、あまりに壮絶に傷を負ったケセルトンを見ていると泣きたくなる。


 だが、まずは彼女を解放しなくてはならない。


「ケセルトン、余が解るか? そなたの夫ぞ」


「───────────アーケイディス、助けに来てくれたのだな……夢か?」


 静かに、ケセルトンは答える。


「解るか。夢ではないぞ。助けに来た。では鍵は? その鉄鎖の鍵は何処にある?」


「ソシエルの、サッシュにある筈」


 そのまま、ケセルトンは気を失った。


「ケセルトン!? ケセルトン!?」


 何度呼んでも彼女は目を覚まさない。

 左の胸に耳を押し付けてみると確かにとくんとくんと音を立てていて、アーケイディスは一安心する。


 だが油断は禁物だ。

 後一日でも助けに来るのが遅かったのなら死んでいたかもしれない。


 アーケイディスはソシエルのサッシュを漁る。すぐに鍵束が出てきた。だがどの鍵だ?


 この広い拷問場の鉄鎖一つ一つに鍵がかかっているのかと思うと、ケセルトンを拘束している鍵を見つけるのがどれだけ大変か、アーケイディスは、はやる心を抑え、震える手で一つ一つの鍵を鍵穴にさす作業に熱中した。

 しかし、真面目に数えた訳では無いが鍵は百近くあるのではなかろうか。


 そのとき、がしゃんという音がした。

 見回りの兵がランタンを落とした音だった。


 アーケイディスは何も言わずに剣を抜く。

 兵の口が大きく開かれるが、言葉が出せない様子。恐らく、ひどく驚いているのだろう。

 しかし可哀想だが生きていてもらっては困るのだ。ケセルトンの無事を確保しなくてはならない。


「あ、あが」


 兵が言葉にならない悲鳴を上げてあたふたと逃げようとする。だが、その場で転んでしまう。ランタンの油に炎。足元から兵は、自ら死のあぎとへと飛び込んでしまった。


「哀れな奴」


 小さく、アーケイディスが呟いた。

 たった今まで、自分達の安全の為だけに殺そうとしていた人間だが、生きたまま焼かれて死ぬのは哀れだとアーケイディスは情けを与えた。


「ふん!」


 外套に隠し持っていたナイフが兵の心臓を貫く。燃え盛る炎から逃げる術もなかった男は、悲鳴も上げずに死体へと変わった。肉のこげる音に脂の燃える匂いが加わる。ランタンの油ではない、兵の肉体の脂が燃えているのだ。勿論ランタンの油も燃えていて釣鉤から外された死体に引火するのもそう先ではないように思われた。

 しかもアーケイディスにとって都合が悪い事に、兵が焼死した近くには物言わぬ躯が六体ほど積み上げられていて。


 火が付けば、そうなったら、人が来る。


 アーケイディスは自分の持つ戦闘能力というものを考えてみた。狼狽えながらも何処か冷静な頭でアーケイディスは計算する。

 一人なら百人の相手が出来る。そうだ、百五十でもなんとかなる。だが二百となるとどうだ? 一人なら何とか、だが背後のケセルトンを守りながらとなると怪しい。

 いや、怪しいどころではない。

 二人そろって死体になるのがオチだ。


「鍵など悠長に探していたら我々も火に飲まれるか人が来るな」


 呟いて、アーケイディスは『陽華月華』で鉄鎖に切りつけた。

 鈍い感触がする。当然ながら切れてはいない。

 傷はついただろう。しかし刃と鉄鎖がぶつかった途端火花を散らすだけでなく相当賑やかな音を立ててくれた。


 万事休すか?


 しかし、アーケイディスという男は諦めたことがない。

 フェリシニアの始祖王は『陽華月華』で大地を割って見せたという。

 神に祈り、そして神の力を借りた『陽華月華』では、切れぬものが存在しなかったとすら噂される。


 ――神か。


 今まで祈った事も縋った事もない存在。

 それでも、愛する女を救える可能性があるのならば、これから毎朝毎晩祈りをささげるくらいの事、出来ぬ筈がない。


 アーケイディスは祈った。祈祷の文句も知らぬ傲慢なる人の王は、心の底から神の救いを求めた。


「──神よ、生まれて初めてあなたの名を呼ぶ。もし存在するのなら我が剣に、力を!!」


 その刹那、奇蹟が起きた。


 アーケイディスは一瞬何が起こったか解らないといった顔で瞠目する。


 半ば自棄くそだったのは否めない。だが心から祈った──。


 これが……自分が今まで否定してきた神の力か!?


 ぼうっと、『陽華月華』が纏う色を変えた! 色を持たなかった光が、鮮やかな白へ。赤より熱い炎の色へ。

 今なら、いける?


「はっ!!」


 アーケイディスが再び剣を振るう。先程とは違い、まるでチーズのように、やすやすと鉄の鎖は切れた。ケセルトンが体勢を崩して倒れ掛かってくるところをアーケイディスは抱きとめ、手首足首の枷からも『陽華月華』の力を借りて解放する。


 剣の帯びる光が再び無色になるのを見届けてから、アーケイディスは剣帯に剣を仕舞った。

 そしてアーケイディスは両腕でケセルトンを抱き上げると、神に短く感謝を捧げた。


「有難う御座います。あなたは確かにおわしになった。我が声に応えて下さった事、未来永劫、子々孫々、忘れませぬ」

 

 自分は傲慢だった。確かに在る存在を信じようともしなかった。

 だが、救いの御手は伸ばされた。


「ケセルトン」

 小さく囁くとこのような場所に用はないとアーケイディスはさっさと闇に身を翻した。




◆◆◆

 今日の十七時、アーケイディスと妾妃達は城に潜入した。アーケイディスは詩人を、妾妃達は踊り子を名乗って。


 妾妃達は、普段殆ど楽園から出る事が無かった。幸いな事に顔を知っているものはフェリシニアの城内でも少ない。サーディシエントの門番達が知る由もなかった。一人一人が一騎当千の強兵である彼女らでも最初の段階で躓いてしまったらどうしようもない。


 問題はアーケイディスであるが彼は色硝子の片眼鏡と化粧で『フェリシニアの王とは似ているものの違う人間』を装う事に成功していた。化粧は妾妃達が腕を鳴らして取り掛かったものだ。そう簡単にばれる筈がなかった。


 潜入はあっけなかった。


「女王陛下のその麗しきご尊顔を拝したく思いまして」


 そうアーケイディスが言った瞬間、門番は気の毒な顔をして彼らを通したのである。


 その『気の毒な顔』の意味を、黒竜王と妃達は遂に知る事がなかった。

 旅芸人たちは飽きるまで城に閉じ込められ、飽いたら殺されるのが通例だったから、というのがその意味だったのだが、そんな事に頓着していられなかったのである。


 外門を突破したと思ったら、その姿を彼等は完璧に隠した。

 内門の外側にある一寸した突起を押すだけで、二枚の青銅を張り合わせたその内門の間に、青銅と青銅の間に、音も立てずに隙間が出来る。そこは人が十人は隠れられるようになっていた。諜報部の仕事は正確だと思いつつ初代サーディシエント国王が何を思ってその様な仕掛けを作ったのかはようとしてしれなかった。城はそんな仕掛けだらけだったのだが。


 アリステアが立って以来夜中でも城門は閉められないと言う情報も得ていたがもし万が一閉められそうになったら……戦くアーケイディスの隣で、妾妃達は静かに時を待っていた。


 そして二十一時、人もまばらになった場内に黒竜王と彼の持つ最強の手駒、籠軍が乗り込んだのである。


 二十二時半にはアーケイディスは外門の下、水路のほとりへたどりついた。此処が見張りの死角らしい。門の下、城への正式な通路たる橋の真下にあたるのだ。

 勿論その腕には自分の外套でくるんだケセルトンを抱きしめ。


 しかし静かな夜である。

 何故此処まで静かなのだろう。


 城の中で警備兵と出会った時は、後で狂女に責め立てられるのも可哀想だと一閃したが、その警備の兵も少ない。


 フェリシニアの賑やかさとは全く違う。王都だというのに、民家の明かりは殆ど消え、城の明かりもそう沢山煌いているわけではない。

 昔、父王の命でサーディシエントを訪れた時は活気のある美しくも賑やかな国だったことを覚えているだけに、アーケイディスはただただ奇妙だと感じる。


 自分は無事だったが小鳥達はどうしているのだろうとアーケイディスは不安になった。


 宴を催し、夜な夜な男と女が絡み合うという噂があり、それは事実だと諜報部員達も言っていたが、今日はそんな狂宴とは無縁の様だ。その分だけ、アーケイディスはもう一度神に感謝した。


 籠軍も一人で五十人は相手に出来る精鋭である事から、アーケイディスの私軍として今までも何度か危ない仕事を任せた事はある。

 しかしそれはあくまでフェリシニアでの、相手の戦力が解った上でのことであった。


 もしサーディシエント側にケセルトンの様な戦闘力を誇る者がいたなら、と、そう思うと気が気ではない。


 鐘が鳴った。零時になったのだ。

 零時に、全員集合だという事になっている。


 まず現れたのはティーローゼとエンディアであった。


 その次にミスティリカ、マジェーンと次々に妾妃達がアーケイディスの無事に気づき足を速め、そしてすぐに楽園の小鳥たちは自分達の王を取り囲んだ。


 だが、皆、お互いに口を閉ざす。

 アーケイディスの街灯に何かがくるまれている事は解っていた。皆目も良ければ月も星も味方した。


 だからこそ思うのだ。

 抱いているその方は生きておいでか?


 それ程までの血臭であった。


 だが、アーケイディスが何とか笑みを浮かべると小鳥達は漸く安堵したようだった。

 全員が無事であった事にアーケイディスは安堵していた。怪我もなさそうだ。


「皆、大変だったであろう。余の我儘を聞いてくれて有難く思う」


 アーケイディスが労うと、小鳥達は誰からともなくお互いの顔を見つめ、微かに笑んだ。そして小鳥達の目は、アーケイディスの抱くもう一羽の小鳥に向けられる。


「ケセルトン様は御無事ですか? その、随分と酷く痛めつけられているみたいですが」


 エンディアが、その場の他の小鳥達が恐ろしくて確かめようのない質問を放った。

 だが何事もなかったかのように、エンディアの言葉に、アーケイディスは頷いてみせる。


「多分大丈夫だ。早めにアジトに戻って傷の手当てをしてやりたいのだが、先に報告を聞こう。せっかくのそなたらの戦果、聞かずにはおれぬ」


「では皆様、歩きながらお話しましょう。アーケイディス様、余り長時間此処にいるのは得策ではないような気がします」


 言いながらミスティリカは城壁を見上げた。


 うむ、と答え、アーケイディスはすっかり軽くなってしまったケセルトンを抱く腕に力を込め、一歩を踏み出す。


 ああ、ケセルトンは酷く筋肉質な女だった。

 抱けば確かな重みが伝わってきたはずだ。

 なのに今はどうだ? まるで羽のような軽さではないか。

 この軽さが真実であるわけが無い。自分は今頃悪夢を見ているのだ。

 朝になって目を覚ませば、隣に長い銀髪を広げ眠るケセルトンが見えるだろう。


 泣きたいのに泣けなくて、アーケイディスは唇を噛むとまた一歩、踏み出す。

 

 王は泣いてはならぬと、母は言った。


 小鳥達もそっと後に続く。


「では、わたくしから。今日静かなのはアリステアが軍議を催していたからですわ。お蔭様でわたくし達、自由に城内を動きまわれましたのですわ。しかし何故でしょうね? 侵入者に気を配らないのは。此方は気楽ですけれども。余り人を手にかけるのは気持ちがいいものではありませんものね」


 マジェーンが言う。


「軍議?」


 アーケイディスは鸚鵡返しに問い返す。


「明後日辺りに我がフェリシニア軍が此処メイリア目指して、サーディシエントの関所を破る事をお忘れですか? アーケイディス様」


 マジェーンの言葉にああとアーケイディスは頷いた。

 妾妃達は自軍が関所を破れず敗退するという発想は無い。それは何故だろう?

 率直に聞いてみると、マジェーンが笑った。


「わたくし、会議室の隣の部屋で色々盗み聞き致しました。アリステアはわたくし達小鳥以上に戦争について何も知りません。将軍やその他の軍人の台詞を悉く遮り、彼らを牢に籠めてしまったのですわ。まだフェリシニアの関所が破れたという報告を聞かないのは何故だといって。それで、アリステアは自分の愛人達を取り立てたのですわ。元気な若駒達は言葉こそ勇猛ですがアリステア以上に何も解っていませんわ。だって、軍人達を牢に籠めてからは自分の軍服には何色を用いようかとか、そんな話になっているのですもの。でも不思議ですの。アリステアは明らかにおかしいのに若駒達は全くそれに気付いた様子がありませんの。むしろ絶対服従と言いますか」


 その言葉にアーケイディスは気が抜けるようだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ