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神様(仮)達の日常  作者: 葛葉 シナチク
7月
85/308

神様(?)の日常 いのち短し恋せよ乙女 陰

(19.6.21)考神 案智の外見描写を追加しました。

眼鏡!眼鏡!



半髪頭を叩いてみれば、因循姑息の音がする。

ザンギリ頭を叩いてみれば、文明開化の音がする。


時は()正、天皇の御代。

この国は急速に発展しておりました。

これも、当代の天皇様のお陰でございましょう。


そんな事を教室の窓から空を見ながら考えます。

綿飴の様な入道雲が葉月(はちがつ)の八日の空に浮かんでおります。

…ちょっと飾り(おぶじぇ)が邪魔でございますね。

あの飾りは学舎が出来る前からあったらしいのです。

壊そうとしても壊れなかったという噂もございます。

一体何で出来ているのでございましょう?


外国にはさまぁばけいしょんなる物が葉月にあるそうですが我が国には有りません。

これも諸外国に追いつく為に必要な事でございましょう。

追いつく為には努力が必要なのでございます。

休む暇などございませぬのです。


「ではこの問題を…こら!追神(おいがみ)さん!余所見をしてはいけません!」

「うひゃいっ!?し、失礼いたしました!」


先生の放った白墨(ちょおく)がわたくしの額に命中します。

い、痛いです。目から涙が出そうです。


わたくし…追神(おいがみ) 夕姫(ゆうき)は中等女学校二年生でございます。

制服である葡萄茶式部を着ております。柄は蝶でございます。

橙色の瞳と髪を持っております。

髪は便削ぎの髪型を最近流行りのついんてえるなる物にしております。

そのついんてえるを赤い帯状布(りぼん)で結んでおります。

この帯状布は照彦様から頂いた物でございます。


照彦様は…ふふっ。

わたくしの許婚でございます。


日神(ひのかみ) 照彦(てるひこ)様。

軍服を着ておられます。

眩しいまでに白い髪を持っておられます。

鋭い空色の瞳の中心に輝かんばかりの金色があります。まるで太陽の様です。

現在陸軍士官学校一年生でございます。

日神公爵家の跡取り息子様でございます。


「こら!追神さん!ちゃんと授業を受けなさい!」

「うひゃいっ!?」


白墨二撃目。

わたくしは撃沈しました。


…撃沈といえば戦争を連想いたしますね。

不穏な言葉ではございますが。

最近我が国は露国と仲が悪いそうです。

照彦様が心配でございます。


☆☆☆


「御機嫌よう」

「御機嫌よう」


授業も終わって放課後となりました。

ぞろぞろと皆様帰って行かれます。


「御機嫌よう、案智(あち)さん」

「ん。御機嫌よう。夕姫。」


今わたくしと挨拶をいたしましたのはわたくしの友人の考神(こうかみ) 案智(あち)さんでございます。

同じく制服である葡萄茶式部を着ております。柄は藤でございます。

水色の髪と目を持っておられます。

目はQの字を連想させる様な目でございます。

目が悪いそうで、眼鏡をかけていらっしゃいます。

顔立ちは大層麗しく、男女問わず恋文(らぶれたあ)支持者(ふぁん)が絶えないお方でございます。


今も後ろに支持者の方がついてきておられます。

無言の圧力がわたくしの体にのしかかります。

が、慣れました。もう何も感じません。

わたくしが案智さんと仲良くして何が悪いのでしょうか?


「珍しく今日は全然集中してなかったね。どうしたの?」


不思議そうにわたくしに尋ねられます。

その動作一つ一つが非常に麗しく…いえ、いけません。わたくしには照彦様という素敵な婚約者がいるのです。

間違っても友達、しかも同性に惹かれるのはどうなんでしょうか?

魔性の魅力というのは時に困るというものでございます。


「実は…今日は照彦様と逢瀬(でえと)の約束をしているのです。それで浮き足立ってしまい…お恥ずかしいです」


今日、葉月の八日はわたくしの誕生日でございます。

その日を祝いたいと照彦様から逢瀬のお誘いを頂きました。


それを聞くと納得した様に案智さんは頷かれました。


「そっか。気をつけてね。こないだも花子さんが…。」

「あれは…嫌な事件でしたね…」


数日前。

校舎内の御手洗にて変死体が発見されました。

血が鼻より下の体全体に付着しており、腕に何かを大事そうに握りしめていたそうですが何を持っていたのかは血に染まっていた為分からなかったそうです。


鼻より上の顔から花子さんと断定されました。

死因は出血多量だそうです。

事件なのか事故なのかはまだ分かりませんが、不思議なのは恍惚とした顔でお亡くなりになっていた事だそうです。

恐ろしい話でございます。


「流石にあんな事は無いとは思うけれど…。本当に、本当に、気をつけてね。」

「心配性ですね。そんなに心配しなくても何も起こりませんよ。それでは御機嫌よう」

「……。」


去り際に案智さんの酷く心配している顔が見えました。


この時のわたくしは照彦様に会える事に心を躍らせておりました。

この後、忠告に耳を傾けておくのでしたと後悔することも知らずに。

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