働け確率論
「いらっしゃいませー…ってなんだ。幸神 万かぁ」
「なんだとはなんだ」
あれから数日。
ゲームパッドを壊してしまった楽雪はコンビニでバイトをする事にしたらしい。
いつもニコニコしているから採用されやすかったとかなんだとか。
だが、こいつの事だ。
また加減を間違えて色々と粉微塵にするに違いない。
真照は真照でかなり腕力が現実離れしていたが、こいつはさらにその上を行くからな。
え?心配性?んなわけないだろ。
誰があいつの事なんて心配するんだ。
か、勘違いしないでよね!
べ、べつに楽雪の為なんかじゃ無いんだからねっ!
…やめとこう。
APP10のフツメンの野郎がこんなツンデレの真似をした所で絵的に苦しいだけである。
あれは美少女がやるから良いんだよ。
まあ楽雪は置いておいてさっさと用事を済ませるか。
えーと、チーズに、コーラに、ポテトチップスっと。
前々からレンタルをした映画を見ようと思っていたんだ。
そして、映画鑑賞のお供にとコーラとポテトチップスを買ったのだ。
チーズ?チーズは生活必需品だろ。とくに触れる必要は無い。
楽雪に言ったら多分羨ましがるんだろうな。
あいつ結構人生(?)をエンジョイしているから…。
だから言わずにバイトに送り出して、楽雪にこの布陣を見せて映画鑑賞を悟らせる。
当然人生エンジョイ勢の楽雪は地団駄を踏んで羨ましがるだろう。
「良いなあ映画!ボクも見たい!」と。
くっくっくっ…。それこそが俺の真の狙いだ!
ただ単に楽雪の悶え苦しむ姿が見たいだけなのだ。
性格悪い?どうとでも言え。
FPSが出来なかった事と殺されかけた事の恨みを思い知れ!!
恐らく極悪人みたいな顔になっているだろう俺はレジ待ちの列に並ぶ。
そこで幼児が俺を指差す。
くくく…怖かろう怖かろう。
「ママーあの人の顔へんー。おもしろーい」
「見ちゃダメよ」
くっくっくっ…。これから楽雪に降りかかる出来事を考えると楽しくてしょうがない。
そんな事が頭を満たしていた俺は列の俺の前にいる人物がおかしいと気付かなかった。
サングラスをかけたり黒い服を着たり、極力目立たない様にした服のその人物は、商品を何一つとして持っていなかった。
それだけならまだいい。タバコを買いに来たのかもしれない。
だがその人物は商品の代わりにある物を持っていた。
包丁だ。
その包丁を楽雪に向けて言い放つ。
「金を出せ!!!」
途端、コンビニは恐怖に包まれた。
逃げ出す人、恐怖のあまり足が動かなくなる人、何か怒号を上げる人。
反応は人それぞれだ。
そんな中、全く動じていないのが2人。
楽雪と俺だ。
俺は最悪刺されても等価交換でなんとかなるし、楽雪は鬼だしそもそも強盗如きに負ける様な存在では無い。
…実は楽雪がいる時点で強盗は詰んでいたりする。
「金?金が欲しいのかい?ボクみたいに働けば?」
楽雪は不思議そうに正論を言い放つ。
だがそれは強盗には逆効果だ。
印籠よろしく包丁を見せつける。
「良いから金出せ!この包丁が見えねえのか!?」
「え?見えるよ。君はボクをバカにしているのかい?それほーむせんたーで売ってる奴だよね」
「なっ…!?」
何で包丁の識別が出来るんだよ。
後で問いただすか。
「ぐ…なんで包丁見ても動じないんだよ!?」
「怖く無いから。むしろ包丁如きでボクをどうにか出来るとでも?」
「な、舐めやがってっ!!」
強盗を煽り倒した楽雪はその強盗から斬りかかられる。
勿論あっさり避けた。
強盗からしたら殺す気無いしな。
包丁は唯の脅しだろう。
「まあいいや。金だっけ?」
「ぅえっ、あ、おう…」
「はい」
チーンという音がしてレジが開く。
流石に金を渡すのは良く無いんじゃないか?
しかし、出て来たのは金ではなかった。
「はい、あげる。煮てよし、焼いてよし、そのままでもよし。万能食材ちくわだよ」
レジにはちくわがみちみちに詰まっていた。
ちくわ…。何故ちくわ?
見ろ、強盗も困惑してるよ。
カオス製造機かお前は。
「ふ、ふざけやがって…。ひさしぶりに…きれちまったよ…」
据わった目で楽雪を見る強盗。
あれ?やばくないか?
「らぁあああああっ!!」
「いっ!?」
強盗は思いっきり包丁を振りかぶる。
楽雪の喉に当たる、その瞬間。
光がその場を満たし、まるで影絵の様になった。
…光?
ドガシャァアンッ!!
「ふべらばっ!!??」
「ぎゃっ!?」
「うわわ」
車がコンビニに突っ込んで来た!
光って車のライトかよ!
今の出来事により強盗は気絶した。
後日。
強盗は逮捕され、楽雪は警察から感謝状を貰った。
コンビニに車が突っ込んで来た件では怪我人はいたものの軽く、死者、重傷者は無し。
楽雪はバイト代と危険手当でゲームパッドを無事に買えたそうな。
めでたしめでたし。
ツンデレで思い出したのですが、真照の初期設定がツンデレでした。
目がつり目なのはその名残だったりします。
え、今?見るも無残な脳筋ガールだよ…。




