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神様(仮)達の日常  作者: 葛葉 シナチク
7月
66/308

足藁町の鬼姫伝説 陰



「くふふふふ…」


真っ暗な部屋の中。少女の笑い声が響く。

提灯がぼんやりと光るものの、顔を照らすには至らない。


現世(うつしよ)はどうだったのですの?」

「面白かったよー。銃を向けただけで人が逃げ回るんだもの。でも、その銃が壊されちゃったのは予想外だったかな。予備ので良かったよ」


少女は二人いる様だ。

片方はお嬢様口調で、もう片方はおちゃらけた様に話す。


「あらあらまあまあ、不安ですわね」

「心外だなー。ボクそんなに信用出来ない?」


片方の少女はくるりと回る。

着物の蝶柄が提灯に照らされる。


「そんな事ありませんわよ。…頼めますわね?」

「もっちろん。任せてよ」


突然、提灯の明かりが強くなった。

照らし出した片方の顔の額には鬼の角が生えていた。


☆☆☆


時は7月、気温は38度。


「ぅあっつい…」


ミーンミンミンミン…


蝉の鳴き声が暑さを更に感じさせる。


制服は皆半袖の夏服になった。

6月までは夜神がセーターを着ていたが、流石に今は着ていない。


シャクシャクとアイスを食べる。

こうでもしないと暑すぎて溶ける。


万万万(よろずよろずよろず)!面白い噂を聞いたわよ!」


そんな中、暑さに負けず動き回るのが若干一名。

真照である。


「ああ、真照か…。アイス食うか?」


そう言って俺は自分のアイスを真照に見せる。

真照は真っ赤になった。


「ふえ!?いいいいい、いただくわ」


驚く真照に俺は封を開けていない同じ種類のアイスを渡す。

途端、真照はガッカリした顔になった。


「あ…ありがとう」


真照もシャクシャクとアイスを食べ始める。

顔は元の肌色に戻っていた。


自分の食いかけのアイスを渡す訳無いだろ。

アレだ、間接キスになっちゃうだろう。

真照は嫌で怒りで顔が赤くなったんだな、きっと。

今度から気をつけよう。


「それで…。噂って何だ?」

「どうやらこの街には鬼が封印されているらしいのよ」

「鬼?」


あの角がある天パの半裸お化けか?


「あー、僕も聞いた事あるよ。天神橋の方だっけ?に出るんだって」


夜神が情報を付け足す。

天神橋はこの街の北東の方にある橋だな。


「ね、早速調べに行きましょうよ!」

「態々自分から危険を冒しに行くのか?この前のヒトリカクレンボみたいになるぞ」


あの時は怖かった。

こころはあれがトラウマなのかぬいぐるみを見るだけでびくりとする。


「むぅ…つれないわねー」


真照を頰を膨らます。

それを見たこころが首を傾けた。


「真照さん…何か別の目的があるんじゃないの?」

「ぎぎっくう。そ、そんな事無いわよよよ」


思いっきり真照の目が泳ぐ。

分かりやすい…。


「ち、チーズの特売が橋の近くのスーパーでやっているらしいわよ」

「行く」

「お兄ちゃん!?」


即断、即決。

チーズがある所なら何処へでも。

鬼?何それ美味しいの?チーズに勝てる?


☆☆☆


ふう…危なかったわね。


あたしは確かに「天神橋の近くに鬼が出る」と言う噂は聞いたわ。

でも、それと同時にもう一つ噂を聞いたのよ。


それは「天神橋の上で贈り物をすると男女が一緒になれる」というものよ。

それを聞いてチーズを万に渡そうと思ったわ。


ちなみに、スーパーの特売は本当よ。


…最近、万の事を考えると胸がドキドキするのよ。

彼の前で普通通りに接するのも一苦労だわ。


☆☆☆


青い空!白い雲!肉が焼けそうな程に熱いアスファルト!

端的に言おう!あっつい!


こんな気温でチーズを買ったら焼きチーズになってしまう。もしくはチーズフォンデュ。

…それはそれで美味しそうだな。


「よし、まず先にスーパーに行くぞ」

「お兄ちゃん、調べるんだったら荷物が少ない方が動きやすいよ?」


む…。それもそうだな。


そう思い、俺は橋の欄干に手をかける。


「ぬわっ!?」


その瞬間、ぼばふ、という奇妙な爆発音と白煙と橙色の光に満たされる。


「えほえほ…一体何なんだ!?」


煙が目に染みる。

煙が徐々に晴れて行くと同時に薄っすらと人影が見えてくる。


「やあ!ボク楽雪(らせつ)!悪い鬼じゃ無いよ!」


煙が晴れた時、その少女はわざとらしくそう言った。

ボクっ娘です。

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