願いは人それぞれ
ーーねえ、もし、もしもだよ?
ーーうん。
ーーどんな願い事も1つだけ叶うとしたら、何を願う?
ーーうーん…。そうだねえ…。やっぱりその時によるんじゃないかな?
ーーどう言うこと?
ーー願い事なんてころころ変わるもんなんだよ。1つ得たらまたもう1つ得たくなるのが人間なんだから。どうしようもない位欲深いんだ。
ーーうーん…?よくわかんないや。
ーー分かんなくて良いと思うよ?みんなみんな万能じゃないんだからさ。
ーーそう?そっかあ。
これは、どうしようもない位過去の記憶である。
☆☆☆
『集計結果が出ましたっ!1年生の優勝はーっ!?』
ダダダダダダと太鼓の音が鳴る。
『B組ですっ!おめでとーございまーすっ!!!』
「「「わぁああああっ!!!」」」
ジャン!と言う音と共に結果は告げられた。
よっしゃ!これで願いが叶えられる!
「うわわわわ!?え?え?」
あ、夜神が拉致られて胴上げされている。
智将だからか。
本人は目を白黒していて大変そうだ。
「やったわね!万!」
「ああ」
真照も嬉しそうにしている。
興奮しているのか頰が桃色だ。
嬉しそうに騒いでいる俺達のクラスとは対照的に、他のクラスは意気消沈している。
「……。」
その中にはこころもいたが、大して残念そうでも無い。
むしろ何かを思い出している様に心ここに在らずと言う感じだ。
「ねえ、万!万は何を願うのよ?」
「俺か?決まってるだろ?チーズだ」
「まあそんな気はしてたわよ」
何だ?急に冷めた目をして?
さっきまでキラキラした目をしていたのに。
「チーズって言ってもそんじょそこらのチーズじゃないぞ。世界で1番高いチーズだ!」
「ウワーソノハナシスゴクキキタイワー」
「思ってねえだろ」
顔に興味ありませんと書いてある。失礼な。
「ロバの乳から作ったチーズでな。作るのが大変で学生の身分で手に入れるのは難しいんだ」
「ふーん。いくら?」
「1キロ辺り約13万だな」
「チーズにしては高いわね」
あれっ!?そんなに驚かない!?
って真照はお嬢様か。このブルジョワジーめ。
羨ましい限りだ。
「そういう真照は何を願うんだ?」
「そうね。運勢を良くして貰いたいわね」
「運勢?」
そんなもの良くしてどうする。
「…最近あたしの家火の車だから金銭運とか勝負運、幸運を上げて貰いたいわね…」
「お、おう…。そうか…」
やばい。真照の目がどんよりしている。
ハイライトが無い…。怖い。
聞くんじゃなかったと思いつつ九頭龍を探す。
九頭龍は何を願うのか聞いてみようと思ったが、いない。どこ行ったんだ?
「真照、九頭龍がいないんだが、どこに行ったか知らないか?」
「九頭龍は保健室よ。体調不良だって言ってたわ」
「九頭龍が?」
いつもあんなに元気なのに体調不良とか…。
こりゃ雨でも降るかもしれないな。
「うへえ…。疲れた」
ボロボロになった夜神が帰ってきた。
特に髪がボサボサになっている。
「夜神は何を願うんだ?」
ふと気になったので聞いてみる。
「真照ちゃんの愛」
即答された。言うと思ったよ!
だが。
ブブー
どっかから否定の音が聞こえる。
よくよく見てみると、校庭の中央にあるオブジェから聞こえる様だ。
「ダメって事かしら?」
「そうかなんじゃないか?」
「そんな…」
夜神がショックを受けている。
どういう基準で願いが叶えられるのか分からんな。
「えーとじゃあ世界征服?」
「適当だな…」
ブブー
ダメっぽい。
あんまり大きな願いは叶えられないのか?
「真照ちゃんの心」
ブブー
「真照ちゃんの関心」
ブブー
「真照ちゃんの恋心」
ブブー
エトセトラ、エトセトラ…。
人の心とかはダメっぽいな。
最後に夜神が
「じゃあ…叔母さんの肉じゃが」
と言った途端、眩い光が満ちて夜神の手には肉じゃがが収まっていた。
肉じゃが…。それでいいのか夜神。




