掃除機で吸えるのは埃とお化けだけ〜騎馬戦〜
長かった体育祭。
だが、この競技で最後だ。
『さアっ!今年の体育祭最後の競技にして1番の花形っ!その名も…騎馬戦だぁあああっ!』
「「「うおおおおっ!!!」」」
校庭がこれでもかと盛り上がる。
この学校の騎馬戦は1クラスにつき1組の騎馬だ。
騎手はクラスの智将が務める。
だから、俺達のクラスは夜神だな。
そして騎馬。これは3人だ。
俺と真照と九頭龍だ。
「えっ、僕が真照ちゃんに乗るの?逆の方が良いよ!真照ちゃんはお姫様なんだから!」
と夜神は訳の分からん事を言っていたが、ルール上変更は出来ない。
夜神は嫌々ながら騎手になっていた。
陣形は、俺が右、九頭龍が左、真照が前、夜神が上だな。
んで、今。
周りを見渡すと合計8組の騎馬がいた。
お、あそこにこころがいるな。
頭にはハチマキをしている。
この競技では他人からハチマキを奪い、最終的に持っているハチマキが1番多いクラスの勝ちだ。
『準備が整った様ですっ!それでは体育祭最後の種目1年生の部、スタートですっ!』
スタートと同時に笛が鳴り、音楽が流れ出す。
それと同時に夜神の神力が発動する。
これにより俺達の姿は1分間目視出来なくなる。
「うおー!すげー!本当に見えてないんだな!」
「急いで!1分間しかもたないから!」
俺達は慌てて走り出す。
1つ2つ3つ…誰にも気づかれる事なくハチマキは俺達の手に渡っていく。
そして1分後。
「あーっ!?俺達のがねえ!?」
「私のも無い!」
「消えた!?」
ハチマキが無くなっている事にようやく気付いた人達から驚きの声が上がる。
『な、なんとっ!いつの間にB組がハチマキを奪っていたっ!』
現在、俺達のも含めて所持数4個。
このまま逃げ切れれば勝ちだ。
だが、そうは問屋が卸さない。
「お兄ちゃん…。ハチマキは頂く。」
こころが俺達の前に立ちはだかった。
その手には、ハチマキが3個握られていた。
つまり、4個所持してるんだな。
現在、合計点数でA組とB組は接戦だ。
この騎馬戦が勝負所である。
「わたしも叶えたい願い事がある。だから手加減はしない。もし出来るなら勝ちを譲って?」
「奇遇だな。俺にも叶えたい願い事があるんだよ。いくら可愛い従兄妹の頼みだからって勝ちを譲る訳にはいかないな」
俺達は睨み合う。
先に動いたのはこころの陣営だった。
「委員長。」
「分かってますよ!」
そう2人が会話すると同時に俺達がいる地面が盛り上がる。
「回避ー!回避ー!九頭龍、追い風起こせ!」
「え!?何言ってんだ幸神!?普通の人が追い風を起こせる訳ねーだろ!?」
「至極まともな答えが返ってきたんですがあの」
さっきから色々やっているくせに自覚が無いのな。
とりあえず等価交換で速度を上げて回避する。
「あのな九頭龍。お前は天候を操れる能力がある…んだよな?」
「そうね。鑑定がそう出しているわね」
「何言ってんだ幸神!?ここに来て厨二病か!?」
事実を言っているだけなのにすっごい傷つく。
「じゃあ試しに『風よ吹け』って願ってみろ」
「う?それ願ったら普通に吹くだろ?」
「普通は吹きません!それが能力だよ!」
「おー?」
九頭龍、お前よく分かってないだろ。
「神力って言うんだがな…」
「神…力…?俺が?」
「知ってんのか?」
「……」
珍しく九頭龍の元気が無い。
どうしたんだ?と考えるが、それすらも遮られる。
「♪ごぉうっすとば○すたぁず。」
こころが掃除機っぽい物を取り出してスイッチを押した。
ごぉぉおおおっ!
と言う強い音がして、掃除機に吸い込まれそうになる。
「ふぬがぁあああっ!!」
吸い込まれまいとして足を踏ん張るが、まずい。このままだとハチマキどころじゃなく本当に吸い込まれかね無い。
そうか…コレが掃除機に吸い込まれる埃の気持ちか…。
「うぉおおおっ!!」
九頭龍が雄叫びを上げると同時に雨が降り出した。
その雨には段々風が混じり始め、そのうち暴風雨になった。
「く…。」
掃除機も雨風を吸い込むだけで精一杯の様だ。
雨風の音と掃除機の音が混ざってうるさい。
「うがぁあああっ!」
九頭龍がこれでもかと雨風の量を増やす。
校庭が洪水があった後の様に大変なことになっている。
『ぬああっ!前が見えませんっ!これは一体どうなっているのかっ!?』
実況の悲鳴にも近い声が上がる。
正しく天変地異だった。
「…あっ!?」
バキッという音がして容量をオーバーした掃除機が壊れた。
そして、雨風が止んだ時、試合終了のホイッスルが鳴った。




