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神様(仮)達の日常  作者: 葛葉 シナチク
5月
38/308

音楽室の無人で鳴るピアノ



「音楽室は…ここか」


場所は2階。ボロボロの看板には辛うじて読めるような掠れた字で『音楽室』と書かれていた。


扉に手を掛け、引っ張る。ギギ、と錆びた様な音がして扉は開く。が。


「MATTE」


俺は思わず変な発音になるくらい驚いた。何故ならば。


音楽室の中は様々な光で埋め尽くされていた。ボロボロの天井にはミラーボールがありピカピカキラキラ光を飛ばしている。何処からか聞こえる歌声。沢山の生徒用の机の前には立派なピアノ。カラオケの様な場所に似つかわしく無い一品だ。いや、ここがカラオケっぽくなっている方がおかしいのだけれど。


「……」


なんと言うか…凄く入り難い。カラオケで客が歌っている時に入って行かなければならないの店員さんの気分だ。


だが、入らないと七不思議の探索にはならない。真照を返して貰えないのだ。…真照は今、大丈夫だろうか。


意を決して足を踏み入れる。緑色の光が俺の靴の先に当たった。それだけなら良かったのだが…。恐るべき事が起きた。


光が当たった靴の部分が、溶けたのだ。


「あっつ!!??」


俺は熱さから逃れる為靴を遠くへ吹っ飛ばした。靴は廊下に上手に着地。おっ、明日は晴れだな…じゃなくて。


廊下に落ちた靴からは煙が出ていた。シュー、と物が焼ける匂いがする。変な匂いだ。近くに寄ってみると溶けて穴が開いていた。ナンテコッタイ。


「しっかし…。これじゃあ入れないぞ?」


これでは七不思議を調べる所か中にすら入れない。この光は一体何処から出ているのだろうかと思い音楽室中を見てみる。すると。


「えっ」


なんと、壁に飾られている肖像画の目の位置からビームが出ていた。


「我らは」「今」「誰が」「1番」「この中で」「歌が」「上手いのか」「決めている」「最中だ」「入って」「くるで」「ない」


お前ら仲良いな!上手に話している。そこで、若干空気と化していた夜神が声を上げる。


「僕が行こうか?」

「えっ!?かなり難しいと思うぞ?」


何処かの脱出型アトラクションみたいになっている。夜神に出来るのか?


「大丈夫大丈夫。僕には秘策があるから!」


自信満々に言う夜神。そんなに言うなら信じるが…。


そして、堂々と入っていく夜神。体を縮ませる事もしない。秘策があるって言ったよな!?なあ!?


夜神に光線が当たり、哀れ夜神はオダブツに…とはならなかった。


「危なーーえ?」


夜神は半透明と化していてビームをすり抜けていた。


「「「なん…だと…」」」


これには肖像画達もびっくりだった様だ。声が揃っている…。


あ、そう言えば部活に入りたいって言っていた時に透過できるって言っていたな。全然使っている所を見て無かったから忘れていたな。


そのまま夜神はピアノの前に立つ。ピアノはぽんぽろなっていた。何の歌かは分からない。時折楽譜がペラリとめくられる。


「何をしているんだい?」


夜神は見えない何かに向かって話しかける。だが、答えは帰ってこない。その代わり、肖像画達が答えてくれた。


「私達の」「作った」「歌を」「弾いて」「もらって」「歌い」「上手さを」「競っている」「所で」「あった」「のだ」

「そうなの?で、誰が1番上手いの?」


そう夜神が聞いた途端音楽室は声の渦に飲み込まれる。


「私である」「否、儂のである」「いや、俺のさ」「ノンノン!ミーのデース!」「僕のだよお」「俺様のだぜ!」「吾輩の…」「おいらのさ!」「ワッシじゃ」


ごちゃごちゃ言っていて聞き取れない。微妙な顔をした夜神はさっさと音楽室を後にした。


「これで…七不思議はあと2つだね」

「もうそろそろだな」


次の七不思議の『振り返ってはいけない廊下』を調べに行こうとしたその時、そいつは現れた。

第29話「可愛いもふもふには毒がある」の後書きにいたAAを消してイラストを投稿しました。もしよろしければ見て下さると幸いです。

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