表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様(仮)達の日常  作者: 葛葉 シナチク
5月
37/308

筋肉部の大兎



「次は…体育館か」


暫く休んだ後、七不思議の探索に戻った。炎を纏った剣で切られたら死にそうなものだが、幸運にも傷は浅く、探索に戻る事が出来た。


「なぁ…筋肉部ってなんだ?」


俺は前々から思っていた疑問を夜神に告げる。聞いただけでは部活の内容が分からん。


「ええっとねぇ…僕も詳しくは知らないんだけれど、筋肉を…育てる部活?だとかなんだとか。要するに筋トレかなあ?」

「な…なんじゃそりゃ」


それは部活なのか?俺は筋肉ムキムキの人が沢山いる図を想像する。なんか…嫌だな。


「その筋肉部がなんで兎を育てたんだろうな?」

「さあ…?兎がひょろっちかったからじゃない?それを見て『なんだ!その体は!けしからん!鍛えてやる!』みたいな?」

「ええ…」


兎からしたら理不尽極まりない出来事だっただろう。だから恨んで今も出てくるのか?


体育館は1階の端にある。理科室、職員室、校長室も1階にあるが、体育館とは反対側だ。時間がかかるな。


幾らか歩いた後、体育館の前に着いた。重いドアを開ける。すると中から熱気がムワッと出てきた。


「う熱っ!?」


何だこれ!?サウナなんて生ぬるい物じゃない!熱湯スチームかってくらい熱い!


これは暫くドアを開けて置かないと進め無さそうだ。汗の酸っぱい匂いが漂う。


やがて煙幕みたいになっていた水蒸気が晴れて人影が見えて来る。


そこには…なんか、ロ○ー君人形みたいな奴がいた。顔は○ビー君並みにファンシーなのだが、体は…異常な程にムキムキしていた。ポージングを決めてこちらを見ている。ちなみに顔に血はついていない。服はオーバーオールではなくふんどし一丁。兎の定義を寝底から覆している。


「さ、幸神くん…。あれ、何…!?」

「知らねぇよ…。俺に聞くな」


夜神もそれを見て目を見開いて驚いている。俺も同感だ。


「初めまして、でござる…。某、ぴょん吉と申す者…。以後、よろしくでござる…」


外見の割に名前が可愛い!ギャップ萌え?いやいやいや、無い。


「某、この学校の七不思議の一つ、『筋肉部の大兎』を司る者…。お主らは、一体…?」

「おっ俺は1ーBの幸神 万です!」

「ぼ、僕は1ーBの夜神 月宵、です…」

「ふむ、そうでござるか…。よろしくでござる…」

「「は、はい」」


声に威圧がこもり過ぎていて思わず自己紹介してしまった。本人…と言うか本兎は自覚は無いだろうが。


「お主ら、見た所…入部希望者でござるな…?」

「「いえ、違います」」


間違ってもこんなクトゥル○も真っ青な奴と一緒の部活になんて入りたくない。


俺達は踵を返して帰ろうとする。確認し終わったし、良いよな?


「ちょと待つでござる…」


しかし、肩をぐわしと掴まれて逃げられなくされてしまった。うわ、手が湿っている…。肩がビショビショだ。


「まあ、茶でも飲んでけ、でござる…」


そう言って出されたのは、プロテインだった。


茶…。うん。茶だね。ココアの素敵な香りがするけど、茶だね。うん…。


「茶だけではなんでござる…。某の話でも聞いていくでござる…」


「いえ、良いです」とは言えない空気だった。ぴょん吉からオーラが出ていて、逆らったら殺されそうだった。


「某、昔はこの学校の飼育小屋で飼われていた一羽のただの兎だった…でござる」


あ、これ長くなるやつだ。


「キャベツを食べられれば良い、特に望みも無い。そんな兎だったでござる…」


あ、茶柱だ。ラッキー。


「そんなある日、某は恋をしたでござる…。可愛らしいメスの兎だったでござる…」


お、今日は満月か。青白く光っている。


「某は求婚したでござる…。しかし、振られてしまったでござる…。その兎は、筋肉ムキムキの力強いオスが好きだったのでござる…」


zzz…。


「当時の某はひょろひょろのヘナチョコだったでござる…。だから、好きなあの子に振り向いてもらう為に、筋肉部に入部したでござる…」


ちーず…。もぐむしゃあ…。


「最初は兎という事もあって困惑されたでござる…。しかし、幾多の試練を乗り越えるに連れて、仲は深まっていったのでござる…」


かまんべーるもいいが、ぶるーちーずもすてがたい…。


「その内、そのメスなんてどうでも良くなり、筋肉第一となったでござる…。聞いてるでござるか…?」

「おぼあっ!ききき、キイテルキイテル!ダイジョウブ!」


あっぶね!危うく寝る所だった!本当に聞いていたから、こっち見ないで?


俺の祈りが通じたのか、今度は夜神の方を見る。そしてビッ!と夜神を指差した。


「そして…お主!某が見て来た中で1番素質があるでござる!筋肉部の名にかけて、是非とも入部して貰いたいでござる!」

「えっ、ぼ、僕ぅ?」


夜神に筋肉部の素質?ムキムキになった夜神を想像してみる…。うーん。変!


急にぴょん吉の手が伸びて夜神を掴もうとする。


「ぬ!?面妖な!」

「危ない!いきなり何すんの!?」


それをひらりとかわす夜神。手には何か持っている。八尺瓊勾玉ではないな。


「お主を捕まえて入部届けを書かせるでござる!その為に捕まえようとしたでござる!」

「…ふーん?」


あ、夜神から笑みが消えた。


「つまり君は、目的の為ならば、何をしたって良いと言うんだね?」

「極論ではござるが、そうでござる!この世は弱肉強食でござる!」

「そっかあ。なら、手荒な真似になっちゃうけれど…はっ!」


そう言って夜神は何かを投げる。その何かは…注射器だった。


「ぬっ!?」


ドス!ドス!と言う音がして二本の注射器がぴょん吉に刺さる。そして倒れこむぴょん吉。一体何が…?


「ああ、それはね、麻酔だよ。死なない程度には調節してあるから大丈夫だよ。肉体を持っていたから効いたね。良かった良かった」

「お、おう…」


なんで麻酔なんか持ってんだよとは思うが、言わぬが花だ。


「僕も目的の為ならば何をしたって良いって言うタイプだけれどね。でも、基本的に相手がそういうタイプじゃ無かったら暴力は働かないよ。でも、今回は同じタイプだった。合意の上での結果さ」


手をパンパン鳴らして埃を払う動作をする。夜神は敵に回しちゃいけない奴だと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ