鏡の虚像
令和ですね。
珍しくバトルシーン入ります。
「幸神くん…」
「はい…」
「君のせいだからね?」
夜神に滅茶苦茶睨まれている。赤い女に酒を振る舞った事に対して怒っているのだろう。離して貰えるまでに小一時間程かかったからな。
「全く…七不思議を調べ終わるまで真照ちゃんは解放されないんだよ?時間が伸びちゃうじゃないか」
「ほんと…すいません」
スタスタと歩いて行く夜神の後ろにとぼとぼついて行く。そうこうしている内に校長室の前に着いた。
「わぁ。大きな鏡だね」
夜神の言う通り大きな鏡だ。全身が映る。真照の鏡とはまた違うな。洋風で、細工が細かい。校長室に相応しい立派な鏡だ。
「これが七不思議の一つ、『鏡の虚像』か?」
立派な鏡にしか見えない。とてもじゃないが七不思議には見えないな。
俺が手をブンブン振ると、鏡の中の俺も手をブンブンと振り返した。
「大変な事になる前に壊すか?」
「それが良いかもね」
俺は生太刀を構える。そして鏡に一閃。鏡に生太刀が触れた、その瞬間ーー
「うわっ!?」
眩い光が辺りを満たした。
「幸神くん!?」
俺が最後に聞いたのは夜神の驚く声だった。
☆☆☆
いてて…。ここはどこだ?
回りは真っ暗闇で前後左右も分からない。唯一の光源は生太刀だけだ。生太刀を照明替わりとして辺りを照らす。すると、目の前に人影が見えた。
目の前の人物は俺にそっくりな男だった。青髪に青目だが、その表情は笑顔だ。ニコニコしていて何を考えているのか分からない。服は着物で、青海波が描かれていた。キョロキョロと辺りを見回している。
「 」
口をパクパク動かして何か言っている様だが、聞きとれない。
俺も話しかけてみるが俺そっくりの人物…仮にドッペルゲンガーと呼ぼうか。ドッペルゲンガーも何を言っているのか分からない様だ。首を傾げている。
どうしようかと思っていたら、ドッペルゲンガーは紙と…筆を取り出した。
筆…だよな?何でこの時代に筆なんか持ってるんだろうか。持ち運びしずらそうなのに。
ドッペルゲンガーは紙に書いた文字をこちらに見せるが…読めない。知らない文字だった。
俺もメモ帳に『読めません』と書き込んで見せてみる。すると、ドッペルゲンガーは頭を抱えてしまった。一体どうしたんだ?
困ったように笑ったドッペルゲンガーは指を俺の方に差して来た。
俺か?と思い自分に指をさす。違う、そうじゃない、とばかりにドッペルゲンガーは手を横に振る。そして俺から少しずれた所の…生太刀を指した。これか?と俺は生太刀を指さす。するとドッペルゲンガーは頷いた。合っている様だ。
確かに、文字もダメなら身振り手振りで示せばいいのだ。
と、関心していたら、ドッペルゲンガーは生太刀そっくりの太刀を取り出した。心なしかあっちの方が豪華に見えるが…。
ドッペルゲンガーは俺を指し、ドッペルゲンガー自身の目を指し、自身の力こぶのある腕を指す。
俺?目?腕?何を言っているのか全然分からん。
俺が困惑しているのを良い事にドッペルゲンガーはいきなり切りかかって来た。
「っとぉわっ!!??」
危な!慌てて生太刀で防御する。刃がないから心もとない…と思っていたが、刃はまるでもともとあったかの様に生えていた。一体どういう条件なんだ!?
刃と刃がぶつかり、火花を散らす。若干ドッペルゲンガーの方が押しているな。このままでは危ない。等価交換で筋力を上げ、太刀を弾いて逃げる。
等価交換で瞬間移動は出来ないのかと思うかもしれないが、出来ないのだ。一回本場の瑞国に行ってチーズを買ってこようとしたが、出来なかった。どうやら自分自身は等価交換の対価にはなれないらしい。
そのまま追撃して来るドッペルゲンガー。それに対してーー俺は逃げ出した。
七不思議の『鏡の虚像』の話では、あくまで『勝つ』か『逃げきる』かでこの話を終わりにする事が出来る。ドッペルゲンガーはとても強い。勝てる気がしないし戦っていたら時間もかかる。それなら選択肢はただ一つ!
逃げるんだよォ!
俺は敵に背を見せて逃げ出す。かっこ悪いとも思うし、良くない事だとも思うが、これしかないのだ。
速さには自信がある!出来るだけ遠くへと足を踏み出す。
しかし まわりこまれてしまった!
目、目が笑ってない…。言葉は分からないが、『ダメじゃないか、逃げ出しちゃあ』と言っている様な気がした。
「 」
ドッペルゲンガーが何か唱える。次の瞬間、ドッペルゲンガーの方の生太刀が青く燃え出した!
その火は、場違いにも美く、幻想的な光だった。
一瞬でも見惚れてしまった俺はもろに炎を纏った生太刀に切られてしまった。
「がっ…!!」
パリンッ
そのまま吹っ飛び、何かを突き破る感触がした。
☆☆☆
「ねぇ、幸神くん!起きて!」
「ううあ…」
ぼんやりする目をこする。起きて辺りを見渡すと鏡の破片が散らばっていた。
「一体どうなったんだ…?」
「幸神くんが鏡に吸い込まれて、しばらくした後出て来たんだけれど傷だらけで…。応急手当はしておいたよ」
「そう、か…ありがとうな」
俺は、見逃されたのか…。あの位の事が出来るのなら俺なんて一瞬で殺せただろう。それでもあえて、見逃された…。
あれは本当にお化けだったのか?俺を吹っ飛ばして終わりって…。疑問は絶えない。




