地雷を踏み抜いて行くスタイル
「あ」
「どうしたんだ?」
急に真照が立ち止まる。俺達は今、それぞれの家に帰っている所だ。夕日が眩しい。
「筆箱…学校に忘れたわ」
真照はちょっと困った様に立ち止まる。
「取りに戻るか?」
「いえ、一回家に戻ってから行くわ」
「そうか。じゃあな」
「バイバイ、真照ちゃん」
「ええ、また明日」
そう言って真照は俺達と別れた。
夜神の家は真照の家と逆方向なのだが、ついて来ていた。あれ、夜神が…いない。まあ、どうせいつものストーカーだろう。真照に何かしようとした所で撃退されるのがオチである。心配しなくてもいいか。
俺も家へ向かう。ちなみに真照の家は西側だが、俺の家は北北西の方向にある。暗くなるとお化けの数も増える。早く帰ろう。
☆☆☆
その日の夜。俺の携帯が鳴った。
『♪ピザ・モッ』
「はい、もしもし」
曲が流れきる前に応答する。ちょっと著作権的にヤバイかな。画面を確認すると、真照からの様だった。だが。
『ウフフ……キャハハハハ……クスクス……』
「おい?」
『プププ……クスクス……ばーか……』
「誰が馬鹿だ!」
なんだこの迷惑電話は!?真照からの様だが、明らかに真照の声では無い。真照の声は高い方だが、この声はもっと高い。まるで子供の様な声なのだ。
『学校……』
「はい?何?学校?」
『ブツッ……』
ツー、ツー、と電話の切れた音がする。それが俺の不安を掻き立てた。時計を見る。現在時刻は午後8時。完全に夜だが…行くしか無いか。
☆☆☆
自転車で走る事早数分。俺は出て来るお化けを片っ端から屠っていた。これなんて無双ゲー?生太刀様々である。
色、大きさ、形、それぞれ違うお化けが俺というただ一つの標的を狩る為に一丸となっていた。だがそんなに構っていられない!そこをどけ!俺が通る!
☆☆☆
やっとの思いで学校に着いた。門は開いているな。校舎からも蛍光灯の光がちらほらと見える。
真照が忘れ物を取りに来たのであれば、必ず職員室へ行くはずだ。それぞれの教室には鍵があり、教室を開ける鍵を借りる為に必ず職員室へ行かなくてはならない。そこに聞きに行けば分かるだろうと思い、校舎へ足を踏み入れる。
その時だった。
りぃ〜〜んぐぉ〜〜んぐぁ〜〜んぐぉ〜〜ん りぃ〜〜んぐぉ〜〜んぐぁ〜〜んぐぉ〜〜ん
不協和音の様なチャイムが鳴る。余りにも嫌な音過ぎて、耳も、目も塞いでしまった。
チャイムが鳴り終わり、目を開く。すると目の前にはいつもの校舎の中…ではなく。
「な、なんだよ、これ…!?」
かなり古い一昔も二昔も前位の校舎の中に、俺は1人でぽつんと立っていた。
あちこちが木で出来ていたり、全体的にサイズが小さかったり、張り紙の文字の漢字が旧字体だったり、横書きの文字が左から右ではなく右から左へ読ませるタイプだったり等である。
暗くて右も左もわからないな…。後ろを見ると、扉だった。
開けられないかと思って揺さぶって見るも開かない。鍵がかかっているのとはまた違った感覚だな。見えないもので固定されているかの様だ。
とりあえず歩き出して見る。床が軋む音がした。ライトの代わりとなる携帯を取り出ーー!?
げしっ!
「がっ!?」
何かにつまづいて俺は盛大にすっ転んだ。手に持っていた携帯がガツッと俺の手から離れる。蹴られて呻き声を上げる何か。
「いたた…」
俺は慌てて立ち上がる。携帯を手にし、光を何かに当てる。その正体はーー
「い、痛いじゃないか、幸神くん…」
「や、夜神!?」
俺に蹴られて死にそうな顔をしている夜神だった。悪い。
「なあ、なんでここにいるんだ?」
俺は夜神に尋ねる。夜神は思い出したかの様な顔で、
「真照ちゃんの警備をしていたら、いつの間にかここにいて…。あ、そうだ!真照ちゃんは!?」
「俺も知らん」
「え、そ、そんな…」
夜神が絶望に染まったかの様な顔をした。そして頭を抱えてしゃがみ、何かブツブツと言い出した。
あ、やべ、夜神の地雷踏んだかも…。




