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神様(仮)達の日常  作者: 葛葉 シナチク
4月
20/308

現実は受け入れ難い



長い長い夢を見ていた。そこは真っ白で、光が射し込んでいてーー。


「はっ!?」


ぱんっ!と言う音と共に覚醒する意識。鼻の辺りに有る冷たい感触。拭う。…鼻水だった。汚ない。鼻ちょうちんでも出していたのだろうか。


辺りを見回してみる。俺はベットの上に横たわっていた。腕からは管が伸びていて、点滴に繋がっている。服は病人服。どうやらここは病院みたいだ。横を見てみると真照が椅子に座ってうつらうつらしていた。


「真照。おい、真照」

「ふにゃ?…はっ!?」


真照が慌てて飛び起きる。そして俺をじいっと見つめ出した。真照の目に俺が映る。その俺がだんだん歪んできた。


「良かった…!万、生きてたぁ…!!」


次の瞬間、真照は大粒の涙を流して泣き始めた。だが、顔にあるのは悲しみではなく、安心、嬉びと呼ばれる感情だった。


話によると命に別状は無かったが、ずっと寝ている状態だったためこのまま行くと餓死してしまう所だったらしい。


ぐぅううう…


病室中に俺の腹が鳴る音が響く。神力は…使えるみたいだな。手持ちのお金とチーズを等価交換する。うん。今日もチーズは最高だ!


ん…?神力に履歴機能があるな。必要が無い様な気がするが…一応見てみる。


履歴


・リンゴ

・精神力


これか!俺が気絶した理由精神力が無くなったからか!かなりの力が出るが、気絶してしまうのでは諸刃の剣かもしれない。


「そう言えば、俺が寝ていたのって何日位だったんだ?」

「ええと…。2週間位かしらね」


寝すぎだな。精神力の回復には大分時間がかかるのだろう。


「…あんなに死ぬもんだって考えていたのに、運命を捻じ曲げちゃうだなんて…。凄いわね、万。尊敬するわ」


そう真照がしみじみと言う。


「1番大切だったのは真照の『死にたく無い』って言う気持ちだろ?俺は凄くは無いさ」


運命とはいえ捻じ曲がる事はある。運命がゴムだとして、遠くまで引っ張ると言う行為が真照の『死にたく無い』という気持ちの表れだとしたら、いつかゴムはプツリと切れる。これが運命が変わると言う事だろう。俺は精々が指だ。ゴムを引っ張る為の補助でしかないのだ。


「あ、そうだ」


照彦からアレを預かっているんだったな。えーと、どこ行ったかな?…お。あったあった。


ポケットからソレを取り出す。ソレは赤い紐リボンだった。


「あら、何かしら?…ソレ、オシラサマから?」

「ああ、そうだ。コレはオシラサマ…と言うか真照の先祖から、真照に渡してくれって頼まれたんだ」

「それ、あたしには万が死にかけたって言う風に聞こえたわよ…」

「いやいやいや、そんなまさか」

「そうよねー。そんな事無いわよねー」

「「あっはっはっはっはっ」」


…うん。怖い考え方はこれでやめにしよう。


「ありがとう。中々良い効果が付いているわ。使わせて貰うわね」


そう言って真照はそのリボンを髪につけた。真っ白な髪に赤が映える。


「…それだけでいいのか?」


俺には真照がリボンを貰って喜んでいる風にしか見えない。


「いいのよ。オシラサマには困らされたけれど、結果としては生きているし、このリボンはそれを差し引いてもあたしに利益が出るほどの良いものよ。こんな機能中々無いわね」

「そうか、真照が満足しているのならそれで良いが…」


そんなにリボンは凄そうに見えない。そこでふと違和感に気づく。


「なあ、真照。このリボンに触る前にオシラサマからって分かったのは何故なんだ?」

「それはね、ふふふ…」

「勿体ぶって無いで早く教えろ」


このドヤ顔は…照彦を彷彿とさせる。やっぱり親族か。


「ジャジャーン!あたしの神力がパワーアップしましたー!」


パチパチパチー!と真照は1人で拍手している。側から見て悲しくなってくるな。


「ノリが悪いわね…。あたしの鑑定の神力が、触らないで見るだけでも発動出来る様になったのよ」

「いつから出来る様になったんだ?」

「オシラサマを倒した直後からかしらね。触ったらもっと詳しい情報を知る事が出来る様にもなったわよ」

「凄い進歩だな!」


まるで経験値によるパワーアップみたいだ。


「他に変わった所は有るか?」

「変わった所?そうねー」


そう言って真照は鏡を取り出す。そこにも赤いリボンが付いていた。


「飾りが増えたわね。あ、万も自分の武器確認しときなさい。あたしの鏡みたいに欠点が有るかもしれないわよ?」


そんな事有るのだろうかと思いつつ生太刀を取り出してみると。


「……」

「……」


刃が潰れていた。これじゃあ切れない。木刀とどっこいどっこいの性能と化した。


高速フラグ回収お疲れ様です!!


「…ほら、ね。確認は大事よ。だから意識を戻してくれないかしら?そんな死んだ様な目で何も無い所を見ないで?」


そんな。これじゃあお化けと戦えないじゃないか。これでやっとお化けの恐怖から解放されると思っていたのに。


い、いや、冷静に、冷静になって考えるんだ!オシラサマと戦った時は刃があったじゃないか!だから何かしらの条件で刃が潰れているんだ!そうだ!きっとそうに違いない!


俺が真っ青になっていると、電話が鳴った。


「あ、万。ちょっと席はずすわね」


そう真照は言った後、鳴る携帯を持って部屋の外へ出た。


「はい。あ、お母様?如何したのかしら?」

「た、たたたた大変よ真照!!!」


真照のお母さんと思われる人の声は大きすぎて俺の耳にもちゃんと届いた。かなり慌てているのが分かる。


「うわ!?耳痛!?急に大きな声で喋らないで欲しいわ…」

「それどころじゃないのよ真照。落ち着いて聞いてね」

「え?ええ…。分かったわ…?」


真照は急な話に目を白黒させている。よく分かっていなさそうだ。


「あのね…。お父様が事故で重体、一緒にいた穂能も骨折したわ。真照の友達が入院している病院の1階に今いるから、急いで来て!」

「え!?ええ!?…分かったわ。すぐ行くわ!」


携帯を閉じて俺の方を向いた真照は俺と同じように真っ青になっていた。


☆☆☆


時は少し遡る。


『…行っちゃったね』


乃公は幸神 万という少年がいた方向を見て呟いた。まァ最期に人と話せただけでも幸運か。


『じゃあ乃公もそろそろ、行くかな』


そう言って目の前の門と向き合う。その門には菊と流水が描かれている。玖の字が書かれた提灯がぼんやり光っている。


『願わくば、彼女に幸多からん事を』


門をキィ…と押して開けた途端。乃公は白い光に呑み込まれた。















彼のお話はこれでおしまい。

次回キャラクター説明回となります。

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