第一章 いつも通りじゃない日常(7)
その日、俺は夢を見た。記憶にはないような気がするが小さい頃の者のようで、俺の体は小学生低学年くらいの体系になっていた。
そして、とこかの道を歩いているようだった。しばらくすると、公園の前で立ち止まり中の様子をうかがっているようだ。視線の先に目を向けるとそこには、ランドセルの中身を散乱させ泣いている少女の姿があった。
俺(小学生)はその子に近づいていき、何か話しているようだ。しかし、夢とは不便なもので音声は全くと言いていいほどなかった。けれど、最初は警戒していた少女も俺が教科書などを拾ってあげ、しばらくするうちに心を徐々に開いてくれているようだった。
しばらくその様子を見ていると、もうそろそろ帰るらしく二人は荷物を持って何かまた話しており、最後に俺は彼女に何かを渡していたようだったが夢はそこで途切れ、だんだんとその映像は白くまぶしい光に包まれていった。
「ピピピピピピピピp」
耳にうるさくこだまする携帯のアラーム音で俺は目を覚ました。そして、アラームを止めて思い出したように右側を確認するがそこには誰もいなかった。
その代わりといっては何だが、いつもは感じることのないあたたかさとみそ汁のおいしそうな香りが台所の方から感じられた。
「あ、おはようございます。台所お借りしてますね」
「おはようございます。すみません、なんか」
「いえいえ、お邪魔している身ですから」
俺は寝ぼけナマコな目をこすりながら洗面台に行き顔を洗い、再びリビングへと戻る。机にはすでにベーコンエッグとスクランブルエッグ、そして先ほど作っていたと思われるみそ汁が置いてあった。
なんというか、とてもみそしるだけういてしまっているが、触れないでおこう。
そんなことを思っていると茶碗にご飯をついでこちらに大友さんがやってきた。
「さぁ、座って食べましょう」
「あ、はい」
俺は促されるがまま彼女の正面に腰を下ろす。
「いただきます」
「いただきます」
俺は、初めにみそ汁へと手を付ける。
「ほっ」
何だろうか、とてもあったまる感じがする味である。身体的な意味もあるが、主に心の方である。
「お味はいかがですか?」
「すごくおいしいです」
「ふふ、それはよかったです」
彼女は俺の返事を聞くと嬉しそうにほほ笑む。
「それにしてもこのみそ汁あったかい感じがします」
「あぁ、コチュジャンを入れときましたから」
「かっれれれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
どうやら暖かく感じたのは気のせいではなかったらしい。
「でも、なんかいいですね」
「ん? 辛いのですか」
「みそ汁の話じゃねぇ」
「違うんですか?」
「全然ちがいますよ。いや、全然じゃないですけど」
「なんていうんですかね、こうやってちゃんとしたご飯を誰かと一緒に同じものを食べることがです」
「そうなんですか。そういえばご両親は」
「うちは共働きの社畜なんでほとんど家にいることはないですね」
そう、俺は小学生の時からずっと一人だった。朝起きても、学校から帰ってきても、ずっと一人。ごくまれに家にいることがあってもまたすぐに出かけてしまう。
「そう。私もずっと一人だったんですよ」
「そりゃ、一人暮らしですもんね」
そう突っ込みをいれながら超絶辛い味噌汁を一気ににも干した。
初めて書く小説なので最後まで読んでいただけるだけで感謝です。