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居候彼女は泥棒猫  作者: こうたろう
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エピローグ(3) ~ 完 ~


「「「「いただきます」」」」


 俺はふと頬を手でなぞる。すると、少し痛みが走る。未だ、大樹さんに殴られた傷が残っているためだ。


「大丈夫ですか」


 俺の考えていることが分かったのだろう。みのりが心配そうにこちらをのぞき込んできた。


「あぁ、問題ない」


 そう答えると、俺はみそ汁に手を伸ばす。

 ちなみにあの後、ひかりちゃんの父親から電話があった。

 電話の内容はというと、俺たちが麻衣の家に挨拶に行くことを聞いていたひかりちゃんが、自分で家に電話し、「結婚したい」と迫ったらしい。

 そして、そのことを伝えるために俺に直接電話が来たということだった。


 もちろんその返事は…。


「うちの娘は任せたぞ! 哲人君」


 以上だった。

 本当に、この過程は大丈夫だろうかと心配になってしまう。

 そんなわけで、今俺の嫁は合計三人となった。なってしまった…。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 時は流れ…。今日は十二月二十四日。家の外はクリスマス真っ盛りである。

そして、今日は全員でお出かけ。クリスマスデートである。


「お待たせしました」 


 俺が玄関前で待っていると、三人が家の中から姿を現す。

 そして、俺はその三人の姿に息をのんだ。

 今日は、みんないつもの家にいるラフな格好ではなく、三人ともオシャレをしておりいつもキレイなのだが、さらに倍増されている。


 こんな三人が町中を一緒に歩いていたら、すれ違う人誰もが三人を見てしまうのではないかと思ってしまうほどだ。


「キレイだ…」


 気が付くと、俺の口がそう言葉を発していた。


「す、素直にそういわれると、やっぱりちょっと恥ずかしいですね」


「そ、そう…」


「あ、ありがとう。哲人お兄ちゃん」


 それを聞いた三人は、みんなそれぞれに反応を示した。


「じゃ、じゃあとりあえず行こうか」


 俺も自分で言いながら気恥ずかしさを覚えたので、みんなを促す。

そして、俺たちは駅へと向かった。




「ついたぁぁぁぁーーー!」


そう駅の前で人目も気にせず声をあげたのはひかりちゃんだ。

そして、ここからは奥の方には火山や海が見える。道には南国風の木が生え、あたかも別の国にいるような錯覚を覚える。

そう、今俺たちがきている場所は千葉ラーランドの最寄駅、舞浜駅の改札前だ。


「ほら、ひかりちゃんいくわよ」


「うん」


麻衣はそういうとひかりちゃんの手を握る。

ひかりちゃんと麻衣には少々慎重に差があり見方によっては親子にも見えてしまわなくもないが、それをいうと大変なことになりそうなので黙っておく。

そして、俺たちは四人並んで千葉ラーランドのもう一つの方、千葉シーランドへと向かった。




「うわぁぁぁーーー」


ゲートをくぐると、ひかりちゃんが大きな地球儀を見て感嘆の声を漏らす。

ここにくる前にきたが、俺と麻衣以外は二人とも千葉ラン初体験だそうだ。


「じゃあ、写真でも撮るか」


俺はそういうと、近くのキャストさんに声をかけ、三人を並ばせる。

順番は左から俺、麻衣、ひかりちゃん、みのりだ。

周りから見たら、とてもデートには見えないだろう組み合わせだ。

そして、写真を撮り終わった俺たちは今日という日を楽しむべく、夢の世界へと歩みを進めたのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「すごかったわねぇ」


「そうですねっ」


夜のショーを見終わった俺たちは、今、パークの海側に展示してある大きな船の甲板にいる。

この場所は、ライトアップとクリスマスということもあってか、雰囲気がすごく出ている。

ひかりちゃんは柵につかまりながら、みのりと麻衣はその少し後ろでパークの方に目を向けている。

そして、耳にはクリスマスソングがどこからともなく流れてくる。

少しの間感傷に浸り。


「ひかりちゃん。麻衣。そして、みのり」


俺は三人の名前を呼ぶ。

すると、俺の表情と雰囲気から何かあるのだと察して、パークを背に俺に向かい合う形で三人が並ぶ。


「…」


「「「…」」」


俺は緊張で固まる口をなんとか動かす。


「俺は、情けないことにお前ら全員のことが好きだ。自分でもクソみたいなやつだとりかいしている」


「それでも、俺はお前たち全員を幸せにしてみせる」


「だから、こんな俺でもいいというなら」




――― 俺と結婚してくれ ―――





俺はそういうと、三つの指輪が入った箱を開き、片膝をつきながら首を垂れた。


「…」


「「「…」」」


しばしの沈黙が訪れる。


そして…。


「当たり前じゃないですか。私はもう、哲人さんなしではいきていけませんから」


最初にみのりが。


「こ、こんな私を貰ってくれる物好きはあんたしかいないんだから、断るわけないわ」


次に麻衣。


「ひかりはその言葉をずっと待ってたよ」


最後にひかりちゃんがそう答えた。

俺はその言葉を聞いて顔を上げる。


「っ…」


だが、その瞬間三つの感触が襲ってきた。

二つは両頬に、そしてもう一つは唇に。


「えへへ、哲人お兄ちゃんのほっぺにチューしちゃった」


「っ…」


「わ、私は今、とても幸せです」


三人が顔を離したことにより、状況を理解する。

左からひかりちゃん、みのり、麻衣という立ち位置から、どうやらキスをしたのはみのりとだったらしい。


「…」


俺が突然のことだったので未だ呆けていると、顔を真っ赤に染めたまま麻衣が口を開く。


「ほ、ほら。早く指輪をつけてちょうだい」


「あ、あぁ」


そう言われて、俺は指輪を嵌めるべく一つを手にとる。


だが、はめる順番はどうしようと考えたんだが、麻衣が一歩近づいてきて、二人が何も言わないことか

ら、あらかじめ決めてあったのだろう。

俺は麻衣の右手を取り、薬指に指輪を通した。

麻衣はその指をじっと見つめると、涙を零した。


「ありがと。哲」


俺はそんな麻衣を黙って抱きしめた。

しばらくしてから抱擁を解くと、一歩下がり、それと同時に今度はひかりちゃんが前に出た。

緊張の面持ちで右手を差し出してくるひかりちゃんの右手を取り、先ほどと同じように指輪をはめてやる。


指輪をはめ終わると、ひかりちゃんはそのまま抱きついてきた。

だから、俺もひかりちゃんの背中に手を回し抱きしめ返す。

またしばらくして、ひかりちゃんが離れ一歩下がる。

そして、みのりが俺の目の前へ来る。

だが、みのりが右手を出してこないので「なんだ?」と思っていると。


「哲人さん」


「どうした」


「愛しています」


そう言いながら右手を差し出してくる。


「あぁ、俺もみのりを愛している」


俺もみのりにそう答え、右手を取り指輪をはめた。

 そして、ひかりちゃんのように抱き着いてくるかと思い身構えるが…。


「私は先ほど初めてをいただいたので、今回は遠慮しておきますね」


 そういって一歩下がると、横一列に並び。


「「「これからよろしく、あ・な・た」」」


 三人そろってそういった。


「あぁ、よろしく頼む」


 俺の選択が、判断が正しかったのか今の俺にはまだわからない。多分一生分からないのかもしれない。

ただ、後悔するような決断を俺はしたつもりはない。


 だから、俺はこの先にどんなことが待っていようとも必ず三人のことは幸せにして見せる。


 そう、俺は夜空に浮かぶ名前もしらない光輝く星に誓うのだった…。






                                ~ Fin ~






 あんまり作品としては長くないですが、約一か月間お読みいただきありがとうございました。

 いちおう、この「居候彼女は泥棒猫」はこれで完結とさせていただきます。気まぐれで後日談などを書くかもしれないですが、その辺はまたその時に。

 今回、この作品は私の処女作であります。本文中には多々目に余る場所もあったかと存じますが、温かい目で見ていただきありがとうございました。

 これからも、応援よろしくお願いいたします。



 ~ 予告 ~


「ふむ、我は魔王なのだ。存分に敬うがいいぞ」

 そういいながら両手を腰に当て、ない胸を張る魔王。

「はぁ」

 いまだ何が起きているのか理解できていない俺は何とも言えない声を漏らす。


 次回(明日)からの投稿はお昼のみとなりますので、ご了承ください。


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