エピローグ(1)
「おはよー」
俺はリビングのドアを開けながら、中にいる三人に挨拶をする。
「おはようございます」「おはよ」「おはよぉー哲人お兄ちゃん」
みのりはキッチンで朝ご飯を作り、麻衣はそのできた料理のテーブルへと運んでいた。ひかりちゃんは席に座ってテレビを見ている。
なぜ、朝から麻衣がこの家にいるのかというと、同棲を始めたからだ。そこまでの経緯を話すと、あの告白から二週間後までさかのぼる…。
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「麻衣さん、いつも大変じゃないですか」
夕食後、俺たち四人はいつものように、テーブルを囲みながら談笑に興じていると、みのりがそう麻衣に尋ねた。
「えっ、まぁ。でも、すぐそこだし」
麻衣はそういって、お茶を一口飲む。
「でも、哲人さんが毎日送ったりして大変じゃないですかぁ」
「いや、別に俺はそこまでではないけど」
俺がそう否定すると、「つまり、少しは大変だと思ってるんですよね」となんか外掘りを埋められた。
それを聞いた麻衣は、こちらを心配そうに見てきた。
「そ、そうなの哲…」
「そ、そんなことないって」
俺はすぐに否定するが、麻衣の心に一度生まれた不安はそう容易く消えることはない。麻衣の不安を取り除くために口を開こうとした時、俺よりも先に声を上げたものがいた。
みのりだ。
「実は、私に考えがあるんです」
その言葉に残りの三人がみのりに注目する。そして、みのりの考える策とは…。
――― 麻衣さんも一緒にここで住みましょう ―――
「まぁ、そうなるよな」
俺がそう口にすると、みのりは「えっ」と驚きの声を上げた。
いや、なんで言い出しっぺが驚いてんだよ。
「いえ。いつもの哲人さんならもっと、こう、驚くというか、拒否すると思ったんですけど…」
あぁ、そういうことね。
「まぁ、以前の俺だったらそうかもしれなかったが、その、麻衣はもう他人じゃないしな」
俺は自分で言いながら、その言葉に軽く恥ずかしさを覚え頬を紅くする。
ふと麻衣を見ると、麻衣も同じように少しうつむきながら頬を紅くしていた。
「わ、私は、哲がいいなら、い、一緒に住みたい、かな」
「っ。そ、そうか」
照れながら、いつもと違い素直にデレる麻衣に思わず息をのんでしまう。
俺は麻衣の顔を見るのが恥ずかしくなったので、横に顔をそらす。すると、今度はみのりと目が合う。
そのみのりはというと、少し頬を膨らませていた。どうやら機嫌が悪くなってしまったようだ。
「み、みのり?」
俺が声をかけると、みのりは一旦前を向くと黙ったまま俺の手に自分の手を重ねてきた。
俺はその手を黙って握り返してやるともう一度こちらを見て、そして、ニコッと笑った。
うん、かわいい。
だが、そこで俺はあることに気がつく。
「あれ、でも、そうしたら今借りている部屋はどうするんだ」
「それはもちろん解約するわよ」
俺は「そうか」と頷くが。
「でも、解約するには保護者の許可みたいなのがいるんじゃないのか」
そこで二人も気がついたのか「「あ、」」と声を漏らした。
ただ、そのうちの一人はとても楽観的で…。
「では、ご両親に挨拶に行けばいいんですよ!」
そんなとんでも発言をした。
「いやいや、やばいよそれは。いきなり大学生のみで親に挨拶とか。それにみのりもいるんだぞ! 殴られ
るだけで済むわけがない」
俺は挨拶に行って予想できる状況を考えてみのりに伝える。
「哲人さんならいけますよ」
まぁ、そのあともなんやかんやあって、麻衣のご両親に挨拶する運びとなった。
初めての作品なので読んでいただけるだけで感謝です。




