第六章 真実(4)
その後、みのりに先に家に入ってもらい何とかしてもらい、しばらくしてから俺も家の中に入った。
そして今、俺と麻衣はリビングのテーブルに向かい合って座っている。
ちなみにみのりとひかりちゃんは、席を外してもらっている。
「…」
「…」
もう十分ぐらい二人とも黙ったままだ。
だが、意を決して麻衣が口を開いた。
「ごめんなさい」
そう言いながら、椅子から立ち頭を下げる麻衣。
「私がやったことは、絶対に許されない行為だった。本当にごめんなさい。もう、哲の前には現れないか
ら」
そういい終えると、麻衣はすぐにリビングを出ていこうとする。
すかさず俺は麻衣の手をつかみそれを止める。
「待て」
「なんで、止めるの…」
「どこ行く気だよ」
「家に決まってるでしょ」
「ダメだ」
「なんでよ」
俺の言動に対し、苛立ちの念がこもった返事をする。背中を向けたままで。
「それは…」
――― お前が心配だからだよ ―――
そこで初めて、麻衣はこちらを見た。涙で顔を濡らしながら。
「な、んで…。なんでなのよ」
俺の手を振りほどきながらそう言い放つ。
「私は哲を刺した。本当なら警察に捕まっているはずのことをした。だから、私はここにいる。だけど、
だけど。私はここにいちゃいけないの」
「そんなことない」
「あるよ。だって、哲の隣にはみのりちゃんがいるじゃない。だから、私は哲の隣にいちゃいけないの。いなくならなきゃいけないの」
「…」
そこまで言うと、麻衣は踵を返し再びリビングの扉に向かう。
「なっ」
俺はそんな麻衣を、後ろから黙って抱きしめる。
「何するのよ」
麻衣の声は震えている。それはまるで壊れかけの建物が崩れる寸前のように。
「誰が隣にいちゃいけないなんて言った…」
「えっ…」
俺の言葉に驚いた麻衣が声を上げる。
「俺の隣にいろよ、麻衣」
「っ…」
再び、麻衣から涙があふれだす。
「だ、だって、みのりちゃんは…」
その問いに、俺は正直に答える。
「もちろんみのりも一緒だ」
「それって…」
「ま、まぁ。人でなしでも、なんとでも言ってくれ」
俺は申し訳なくなり、少し抱擁の力を緩める。
すると、俺の腕に麻衣の手が触れた。まるで、「離さないで」とでも言いたげに。
「言わないわよ。だって…、そういう優しいところが、私は好きなんだから」
麻衣の告白に対し、俺は抱擁を強めながらそれに対し応える。
「俺も、麻衣のことが好きだ。天真爛漫なところとか、面倒見がいいところとか…。麻衣、一生俺の隣にいてくれ」
麻衣は、軽く頭を縦に振りながら「はい」と答える。
そして、しばらくの間俺と麻衣はそのまま過ごした。
「いつまで待たせるんですかっ」
十分くらいそうしていたら、突然ドアがバァーンと開きみのりとひかりちゃんが入ってきた。
「哲人お兄ちゃん、私との婚約も忘れてないよね」
「まさかのハーレム展開ですね」
今までの雰囲気とは一変し、一気に騒がしくなったのだった。
初めての作品なので読んでいただけるだけで感謝です。




