第六章 真実(3)
しばらくしてみのりは泣き止むと、俺が横になっているベッドに潜り込んできた。
そんな彼女に、俺はいつも寝る時のように腕枕を用意する。そして、そこにみのりは頭を乗せた。
俺たちはそのまま天井を見たまま、しばらくの間二人の時間を過ごす。
「…」
「…」
俺はふと隣に寝ているみのりに視線をやる。
すると、みのりも同じタイミングでこちらを向いたようで見つめ合う体勢になってしまった。
いくばくかの間見つめ合った俺たち。
そして、俺は自然と顔を近づける。
みのりも察したのか目を閉じその時を待った。
さらに近づいていき、そして…。
「待ってください」
みのりにそれを止められた。
「えっ」
俺はいきなりの拒絶に呆けてしまう。
それに気がついたみのりは慌てて言葉を付け足す。
「ち、違うんです。哲人さんとそういうことしたくないとかじゃなくて、えっと…」
「麻衣の事か」
「はい。今、私がここで越えてしまったら、麻衣さんが、どこかに行ってしまう気がするんです。ダメな
気がするんです」
みのりは「それに…」と続ける。
「私は哲人さんには、麻衣さんの気持ちにもこたえてあげて欲しいんです」
俺はそんなことを言われ一瞬眉をひそめてしまう。
そんな俺の些細な変化もみのりは見逃さない。
「だって、哲人さん。麻衣さんにも私にも向けてくれる目を向けているじゃないですか」
「い、いや…」
俺はまるで自分の心が見透かされているようで返答に口ごもってしまう。
(こ、これじゃあ、俺が女たらし見たいになってしまう)
だから、俺は自分の気持ちを抑えて言う。
「それは出来ない。そんな浮気みたいなことできないよ」
「…」
「…」
「違いますよ。私が認めているんだから浮気じゃないです」
「いや、でも…」
「哲人さん」
なかなか容認しない俺に対し、みのりが声を大きくする。
「な、なんだ」
俺が尋ねると、みのりは少し寂しいような、悲しいような顔をしながら言った。
――― 好きな人と一緒になれないのは、とても辛いんです ―――
その言葉に、俺はズキっと何かが胸に刺さる感覚がはしった。
(そうだ。この世界には勝者と敗者がいるように、好きな人と一緒にいれる人といれない人がいる。そし
て、一緒にいれない人は辛く、悲しい世界を過ごす。それはみのりも例外ではなかった。だからこそ、自分が選ばれてしまったことに負い目を感じているのかもしれない。ただ、みのりが優しいだけかもしれないが…)
「明日まで、少し考えさせてくれ」
少しの間考え込んだ後、俺はそうみのりに伝えた。
「分かりました」
そういうと、再び天井に視線を向ける。俺も、同様に天井へと向ける。
しばらくすると、隣から寝息が聞こえてきた。
それを聞きながら俺は考えをめぐらす。どういった答えを出すのかを…。
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退院の日。
「お世話になりました」
「はい。お大事になさってください」
俺と、母、みのりは病院の人に挨拶し外に出る。
「車まわしてくるから待ってなさい」
「あぁ」
そういって車を取りに行く母親。
その後、家まで着くと母親は俺とみのりを家で降ろすと、仕事があるためそのまま仕事場へと向かってしまった。
「いくか」
「はい」
俺は玄関の前でそう気合を入れる。
麻衣と会うのはあの事件以来初めてだ。みのりは何回かあっているらしいが、とても緊張する。
一応、もうあのことは気にしていないものの、ことが事だけに何も感じるなと言われるほうが無理であろう。
俺はいつもよりも重く感じる玄関を開け放った。
そして、そこで見たのは…。
「こら、ひかりちゃん。そのまま部屋に行っちゃだめでしょ」
「へっ」
風呂から出てきて全裸でリビングに向かうひかりちゃんと、それを追いかける全裸の麻衣の姿だった。
俺が間抜けな声を出したことにより、麻衣が俺の存在に気が付いた。
「っ!」
「キャアァァァーーーー」
そして、叫びながら自分の腕で身体を隠そうとしながら床にへたり込んでしまった。
それと同時に、俺も急いで外に出て玄関を閉めた。
初めての作品なので読んでいただけるだけで感謝です。




