第六章 真実(2)
「…。えっと、それでお二人はどうしてこちらに?」
俺はそれを言ってから「やばい」と思う。
どうしても何も、勝手に人の娘と同居してたんだから「ふざけるなっ」といきなり怒鳴られても文句は言えない。
そう思った俺は急いで弁明しようとしたその時だった。
「「ごめんなさい」」
「すまない」
みのりの両親も俺の両親も、四人全員が頭を下げていた。
「へっ…?」
俺はそのことに驚き変な声が出てしまう。
「どどどういうことですか? とりあえず頭を上げてください」
とりあえず俺は四人に頭を上げるよう促し、理由を尋ねる。
「とにかく驚かずに聞いてくれ」
そういいながら申し訳なさそうな顔をするのは俺の父親だ。
俺は黙っておやじを見つめる。
「実は、お前は俺たちの本当の子供ではない」
「っ…」
それを聞いた瞬間、俺の頭の中ハテナマークがうめつくした。
(ん? 実の子ではない。どういうことだ? はっ?)
俺が衝撃の告白を聞き放心していると、さらにとんでもないことを出だした。
「そして、この二人がお前の本当の両親だ」
そういうとその二人。つまり、みのりの両親が一歩前に歩み出る。
「はい?」
(どういうことだ。俺が親だと思ってた人達は赤の他人で、みのりの親が俺の本当の親だと)
「えっ、つまり…」
「そうだ。お前とみのりさんは兄妹ということだ」
それを聞き、俺とみのりは顔を見合わせる。
すると、みのりは突然泣きそうな表情になると叫び声をあげた。
「嫌っ」
それを聞いていたここにいる全員が「どうしたんだ」と言いたげな表情を作る。
そこで、俺が未だ泣きそうなみのりに尋ねる。
「どうしたんだよ、そんなに俺と兄妹だったのが嫌なのか」
(これでイヤと言われたらすごく傷つくんだが)
だが、俺の予想に反せず「そうです」とこたえた。
「えっ…」
俺はそれを聞きうなだれようとしたが、それより前にみのりが言葉を続ける。
「だって、そしたら…」
――― 哲人さんと結婚できないじゃないですか ―――
「なっ」
不意をつかれた俺は驚きの声を上げる。そして、おそらく俺の顔はリンゴも驚くほどに真っ赤になって
いるに違いない。
それは本人も同じようで、今のみのりの顔は真っ赤になっている。
親たちはというと、みんな同じように固まっていた。
しばらくし、最初に口を開いたのは俺の父だった。
「そういうことだったのか」
次にそれを聞いた母が口を開く。
「そうね、同棲までしてたんだものね…」
そこまでいうと、みんないろいろと思うところがあるのか再び沈黙が訪れる。
どれくらい時間が経っただろうか。それくらいの時間、静寂がこの場を支配していた。
だが、俺はその沈黙を破るように言葉を紡いだ。
「ごめん。ちょっと、みのりと二人にしてほしい…」
そういうと、四人は各々に声を一言かけてきてから部屋を後にした。
二人きりになった部屋の中で、俺たちは互いに顔を見合わせる。
「みのり」
「はい…」
俺は、今更ながら言わなければならないことを言葉にする。
「俺も、みのりのこと好きだ。時間を重ねていくうちに、みのりは俺にとってかけがえのない人になって
た。一生俺と一緒にいてほしい」
俺はみのりから視線を外さない。
すると、みのりの頰に光るものが流れた。
「私も、私も哲人さんのことが好きです。大好きです。ずっと一緒にいたいです」
そう言って俺の胸の中に飛び込んでくると、声をあげて泣き始めた。
その涙は嬉しさからか、はたまた一緒になれないことへの悲しみの涙か、俺にはわからなかった。
だから俺は、そんな彼女の背中に手を回し、彼女をだきとめることしかできなかった。
初めての作品なので読んでいただけるだけで感謝です。




