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居候彼女は泥棒猫  作者: こうたろう
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第五章 終末(2)


「バァーンバァーン」


 空で大学祭を祝う空砲が弾ける。


「よし。みんな、今日は売って売って売りまくるぞぉぉぉ」


「おおぉぉぉーーーー」


 キャプテンの掛け声に対し、その他の者が雄叫びを上げる。


『ただいまより第八十三回、○△祭を開始いたします』


「いらっしゃいませぇ」


「ひとつください」


「はい、四百円になりますね」


「ありがとうございました」


 時刻はもうそろそろお昼。売り上げは上々というところだ。


「まだ数時間なのに、もう疲れた…」


「何言ってんのよ。大した仕事してないでしょ」


 横で弱音を漏らす俺に対し「シャキッとしなさい」と麻衣が俺の足を踏んでくる。


「いてぇよ」


「そんなに喜ばないでよ」


(え、俺の言ったこと聞こえてた?)


 そんなことをやっていると、後ろから声がかかる。


「二人とも交代。遊んできていいよ」


「あ、はい。ありがとうございます」


「ありがとうございます」


 俺たちはシフトの時間を終えたので、エプロンを外し屋台の裏から外に出る。


「さて、どうすっかなぁー」


 俺は伸びをしながらそうこぼす。

 すると、麻衣が「ねぇ」と話しかけてきた。


「あ、あのさ哲。よかったらこの後…」


「哲人おにいちゃーん。麻衣おねえちゃーん」


 麻衣が何かを言い終わる前に、二人を呼ぶ声が聞こえてきた。


「光ちゃん。とみのりも一緒だったのか」


「はい。途中でちょうどあったんです」


 ちなみに、光ちゃんはどこかに所属してなにか出し物をしているわけじゃないが、友達と一番初めから参加している。


「お二人とも休憩ですか」


「あぁ。なぁ、m」


 その時ふと麻衣に視線を向けると、ものすごい目をでみのりを見ていた。

 だが、それはほんの一瞬で「はっ」となった瞬間にはいつもの麻衣に戻っていた。まるで、さっきの異変が幻覚で何もなかったかのように。


「ん? なに、哲」


「い、いや。みんなで一緒に回らないかと思って」


 俺は、先ほどの映像がいまだ頭に焼き付いており、少々びくつきながら尋ねる。


「いいわよ。別に」


 俺の不安とは裏腹に、いつも通りの口調と態度で答えた。

 そんな不安を吹き飛ばすように、光ちゃんが俺にぶつかってきた。そして、そのまま手を引いてくる。


「早くいこ! 哲人お兄ちゃん」


「あぁ」


 そして、返事をするともう一方の手ではなく、腕を組んできた。


「ダメですよ、光ちゃん。哲人さんは私のものです」


(いや、誰のでもないんだけど…)


「…」


「はぁ。いくぞ」


 周りから鋭い視線を受けつつ、俺たち四人は、人ごみの中へと足を踏み入れた。

 その後、主に光ちゃんとみのりに振り回されながら会場を回った。

 俺と麻衣はその後ろを追っかけまわしたり、引っ張られたりしてとても大変だった。


『これにて、第八十三回○△祭を終了いたします』


「お疲れ様です」


 俺と麻衣、みのりは屋台の片付けのためにサークルの場所に戻ってきた。

 みのりと麻衣には先に帰っていいといったのだが、みのりが手伝うと言い出したので一緒に来ている。


「じゃあ、力仕事はしなくていいから、それ以外のこと頼むわ」


 そういって、俺は二人から離れて作業を始めた…。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 


ある程度片付いてきたので、二人の様子が気になり周りを見回した。

すると、いるはずの麻衣とみのりの姿が見当たらない。


「麻衣、みのり」


俺は二人の名前を呼ぶ。しかし、どこからも反応はない。

すると、後ろから肩を叩かれる。あの先輩だ。


「あの二人なら先にお前の家に行くと言っていたぞ」


それを聞いた瞬間「ぞくっ」と何か嫌な感覚が体を走った。

そして、今日ふと目にした麻衣のみのりを見つめる視線が頭の中をよぎる。


「お、おい」


 次の瞬間、俺は先輩の静止を聞くよりも早く走り出していた。



初めての作品なので読んでいただけるだけで感謝です。

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