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居候彼女は泥棒猫  作者: こうたろう
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第六章 崩壊(5)~ 大沢麻衣

麻衣の話です。


(会えた、やっと会うことができた)


 私は哲と再会したとき心の底からそう思った。だけど、私には勇気がなかった。

 怖かった…。また哲がどこか別の場所にいてしまうのではないかと。

 だから、私は一歩を踏み出せなかった。


 そんなある日、一人の女性が現れた。


「はい。どちらさまですか」


「え、誰…」


 一言目はそれだった。

 その時私は何回か表札を見直したことを覚えている。

 その後話を聞くに、みのりちゃんは家を追われた身らしい。それに加え、哲の家に盗みに入ったとも聞いた。


 その話を聞いたとき、何を考えてるんだって思った。

 でも、同時に呆れもした。哲に対してじゃない。自分に対してだ。

 そういうどうしようもなく優しい哲が私は好きなのだと。


 だから、その日初めて一緒に眠れた時は今まで生きてきた人生の中で一番幸せな時間だった。

 だけど、それと同時にみのりちゃんに対する嫉妬が心の中で渦巻いた。


(ダメだ。こんな気持ち、ダメだってわかっているのに…)


 夏が来た、夏祭りに行った。

 とても楽しかった。こんな日がいつまでも続けばいいと思った。

 祭りでみのりちゃんがいなくなった。私はその理由に気が付いていた。

(あぁ、彼女も私と同じなんだ)と思った。


 それから、たまに二人だけで会うことも何度かあった。お互いの気持ちを話したこともある。

 私もだんだんと打ち解けていった。友達という仲にもなれた。

 それでも、私の中にあるいけない気持ちが収まるわけではなかった。


(みのりちゃんは、いつも哲と一緒にいる。同じ屋根の下で、同じ食べ物を食べている)


 そう思っただけで、どうしようもない怒りが湧き上がる。


(哲、ねぇ哲。私はこんなにも大好きなのに…。こんなにも愛しているのに…。哲、哲、哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲哲)


 大学祭のサポートに誘われた。


(あぁ、やっぱり哲には私が必要なんだ)


 その日は久しぶりに二人で遊べた。とてもうれしい。

 ご飯も一緒に食べれた。でも…。


「みのり」


「はい、どうぞ」


「哲人さん」


「はいよ」


「…」


 その時、私の中で何かが壊れる音がした。


(あぁ。だめだ。だめだ。は、ハハハ)


 翌朝目を覚ますと、枕が濡れていた。

 昨夜のことを思い出す。


(あぁ、もう駄目だよ。耐えきれない)


 この時の私の心は、もう既に黒く染まってしまっていた。





初めての作品なので読んでいただけるだけで感謝です。

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