第一章 いつも通りじゃない日常(2)
「ここです!」
「ここですか?」
「はい」
俺は今猛烈に頭の中にはてなマークが浮かんでいた。なぜなら…
「ここ、只の公園ですけど」
「はい」
「いや、ハイじゃなくて」
「いやぁ、実は今朝アパートの家賃を滞納しすぎまして、追い出されちゃいまして。それで、どこかいいところないかなーと思っていたらここを見つけたんです! ほら、荷物もここに置いて…てっ、あれ? ない。」
「そりゃ、そうでしょうよ。こんなところに荷物が置いてあったら普通に盗まれますよ」
「そ、そんな…。あのカバンの中に着替えや最低限の食糧が入っていたのに…」
「なんで、なんで私ばっかりこんな…」
「何にも特別なことは望んでないのに、子供の時だって、ずっと一人で、なんかわからないけどいじめにあって、物はすぐになくなるし、忘れ物ばっかりするし、なんかわからないけど階段からはよく落ちてたし。なんでこんなにもついてないのよ…。なんで、私ばっかり」
いや、階段とかは全然なんかわからなくないだろ。普通にあれだろ、って今言うのはおかしいか。でも、いろいろ苦労してきたんだろうということは今の姿を見ればよく分かる。
だが、どうしたもんか。これは困ったことになった。家まで送ったらすぐに帰る予定だったんだが。ここに置いていくわけにもいかんしな。いくら泥棒とはいえ、か弱き一人の女の子だ。それに、今この人を一人にしてしまうと自殺もしかねんしな。はぁ。
「大友さん」
「ひっぐ、な、なんでずかぁ」
俺は地面に泣き崩れている彼女の前に周り目線を彼女の高さまで合わせる。そして。
「もしよければ、うちでよければ来ますか?」
「ぅえ? でも、でも、わだじは…」
「いいんですよ、盗みに入ったことはもう。いや、良くはないか。まぁ、さすがにこんな夜遅くにこんな
女性を一人で置いていくわけには行けませんしね」
「とりあえず、今夜はうちに泊まってください」
「え、えっど、へ、変なこどしないでくだざいね」
やっぱり泊めるのやめようかな。
こうして彼女は一時的に打ちへ来ることになった。