第二章 彼女がいる日常(11)
家から自転車をこいで五分、国道沿いにあるうどん屋が俺の務めているバイト先である。
「おはようございます」
俺はバイトで決まっている挨拶をして事務所へと入る。
「おはようございます。あぁ、なんだ先輩ですか」
そう失礼な態度を取るのは俺が通っていた高校の現二年生である華の女子高生鈴木沙希である。つまり、俺からすると高校の後輩であり、バイトの後輩でもあるのだ。彼女は今時の女子高校生という感じで、髪はショートカットボブで少し茶色がかっていて、体は少々小柄である。
「おい、なんだよそれは。一応これでも先輩だぞ」
「でも先輩私より頭悪いですよね」
そうなのだ、こいつは態度も悪く今時の女子高生って雰囲気なのに頭がとてもいいのだ。高校の試験では必ず一位で模試は常に上位に食い込んでいる。俺は普通と比べたらいい方だと思うのだが。まぁ、今の大学に入るのに実は後輩の力を借りていたなんて口が裂けてもほかの奴には言えない。
だってそうでしょ? 大学受験を高校一年生に教わる俺って何?
「う、まぁ、今と昔じゃ違うからな」
「そうですね、先輩馬鹿だから比べられないですもんね」
ちょっとこの子殴ってもいいかな? いいよね?
「やぁやぁ、おはよ〜諸君」
そんなことを思っていると事務所に入ってきた人物がいた。この店の店長である。
「「おはようございます」」
俺と鈴木はちゃんと挨拶をする。
てか、鈴木が失礼なのは俺だけになんだがどうにかならないのだろうか。
店長は、もうすぐ四十近いのに二十代ばりの容姿をしているのだが未だ独身である。
「おっ! 今日は高島くんの日だったか、どうだね仕事に尽くすだけでなく私に尽くさないか?」
「お断りします」
「おいおい、冗談じゃないに決まってるだろ」
「店長、怖いです」
「ん? 何か言ったかね鈴木」
「イイエ、ナンニモ」
早くだれかこの人をもらってあげてほしいところだ。誰がいつ食われてもおかしくない。そして、女子高生などには時折高圧的になる。
あ、そういえば。
「店長少しお話が…」
「む、なんだ? プロポーズなら大歓迎だぞ」
「先輩、さすがにそれは…」
こいつらめんどくさいな。
「いいえ、ちょっとシフトを増やしてほしくて」
「べつに構わないがどうしたんだ、さては私ともっと一緒に居たいのだな。そういうことならそうと言ってくれたまえ、一生そばにいてやるぞ」
「いえ、ちょっとお金が必要になりまして」
「そうか、まぁいい。後で調整して連絡しよう」
「はい、ありがとうございます」
これでお金の心配はなさそうだな。まぁ、俺の体力しだいだが。
そんなことをしていると勤務時間になったのでパソコンに入力して厨房へと向かった。
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「疲れた~」
時刻は十時半。俺はそういいながら勤退をパソコンに打ち込む。
「先輩早くしてください。いつまで待たせるんですか」
そう俺に生意気な口をたたくのは先に上がっていた鈴木だ。高校生は十時以降は働くことができないので先に上がるのだが、時間も時間なので女子高生一人を一人で返すわけにはいかないので俺がいつも家まで送っていくのだ。
「もう少しゆっくりさせてくれ」
「はぁ、女の子を待たせるなんて最低ですよ!」
なんでだろう、とてつもなくイライラするんだが。
「わかったから少し待ってろ」
「早くしてくださいね」
「ハハ、相変わらず仲がいいなお前らは。まったく、いらいらしちゃうじゃないか」
あ、なんかすみません。
「べつに仲良くなんてありません。ほかの人に迷惑かけるわけにはいかないのでしょうがなく先輩を使ってるだけです」
あれ? 俺の迷惑は考えてくれないの。
だが、そんなこと言っても俺の意見なんか通るわけがないんので黙って帰りの支度を進める。
「よし」
「もう、私先出てますからね」
そういうと、さっさと事務所から出ていく鈴木。
「はぁ。じゃ、店長お疲れ様です」
「あぁ」
俺がそう言って事務所を出ようとすると店長に呼び止められる。
「高島」
「はい?」
「いつもすまないな、鈴木のこと送ってもらって」
「いえ、当たり前のことですよ。店長も気を付けてくださいね」
「もちろんだ。すまんな呼び止めてしまって」
「いいえ、では失礼します」
そして今度こそ事務所を出る。
「まったく、知らず知らずにフラグを立ておって。本当にもらってしまおうか…」
初めての作品なので読んでいただけるだけで感謝です。




