第二章 彼女がいる日常(10)
今、俺はベンチに座っている。もちろん右隣には麻衣がいる。だが、俺たちの間に何の会話もなくただ時だけが過ぎていた。
くっ、なんて気まずい空気なんだ。どうしよう、来た時にすぐ話してしまええばよっかった。でもこのままじゃらちが明かない、よし。
俺はそう意を決し口を開く。
「あの」「あのさ」
はい、出ました。二人同時に話し始めちゃう奴。漫画の世界なだけなようで以外にあるんだよね。
「えっと、先いいよ」
とりあえず、先に麻衣に譲ることにする。
「あ、うん。その、朝はごめん!」
「罰にそんな気にしないで大丈夫だぞ。よくよく考えればみのりがあんなことしたからだしな」
そうだ、みのりがあんな格好しなければ俺が殴られることなかったんじゃないか! くそぉ。でも、見たくなかったと言ったらうそになるな。って、俺はなにを言っているんだろうか。
「でも、あの後哲が気を失っちゃって、このまま目が覚めないんじゃないかって思っちゃったし。ほんと
は目が覚めるまで居たかったけど、みのりちゃんに「学校で待ってあげてください。ただ寝ているだけですから」って言われたから来たけど、ずっと気が気じゃなくて、でも声かけずらくて…」
「ペシッ」
「ひゃっ」
俺は麻衣の頭を軽くはたく。
「何すんのよ!」
そして、怒った麻衣の頭を今度はなでながらこう続けた。
「お前はバカかよ。俺がこんなことでどうにかなるわけないだろ? それに、俺は全然気にしてないし、たまたまタイミングが悪かっただけだよ。だからさ、その、また肉じゃが食べさせてくれよ」
俺は少し恥ずかしくなったので頭を掻きながら視線を横にそらす。
「ん、んん。しょ、しょうがないわね、そんなに食べたいならしかたなくだけど作ってあげてもいいわ」
フンッ! と麻衣は腕を組みながらそう言ってきた。
どうやらいつもの調子に戻ってくれたようだ。
「やばっ! そろそろ時間」
ちょうど話が終わると、もう次の授業の始まる五分前だったので、俺たちは急いで教室へと向かった。
「ただいま~」
あの後、午前中の授業中寝たからか三コマ目は普通に授業を受けられた。そして、平常運転に戻った麻衣と軽く挨拶をして俺は家へと戻ってきた。
「おかえりなさい」
玄関を開け部屋部屋へと向かうとみのりが出てきてそう挨拶してくれた。
やっぱりだれかが家で待っていてくれるというのはいいなと思う今日この頃である。
「今日はバイトがあるから先に寝てて大丈夫ですよ」
「大丈夫です。起きてます」
「いや、でも」
「それに、哲人さんがいないとどっちにしろ寝れませんか」
「あぁ…」
すっかり忘れてた。
「じゃ、出来るだけ早く帰ってきますね」
「はい! おまちしています」
そういうと嬉しそうにほほえんだ。俺はこの生活がずっと続いたらいいんなと心の中で微かに思うのだった。
その後、バイトの時間までみのりとゆっくりしてバイト先へと向かった。
初めての作品なので読んでいただけるだけで感謝です。




