第一章 いつも通りじゃない日常(1)
「つまり、あんたは高校を卒業した後就職したが、職場でのいじめやパワハラにあい辞めてしまったと」
「はい」
「で、それが親にばれてしまい仕送りを止められてしまい再就職しようにもなかなかうまくいかず、お金が無くなったために盗みに入ったと」
「そうです…」
俺は今、椅子に座らせた盗人に尋問をしているところである。はぁ、しかし…。
「それで、その格好の理由は?」
俺は初めから気になっていたことに話を振る。なんてたって、猫耳に黒ずくめの衣装、そして服の特性上少々体のラインが出ていてとてもかw、いやいやこいつは泥棒なんだ! 俺は何を考えているんだ。
「えっと、前にテレビで泥棒がこんな格好をしていたので」
「どんなテレビだよ」
てか、そんな恰好したら泥棒ですと言っているようなものではないか。この人は本当のバカなのだろうか、それとも天然なのか。
「はぁ、まぁ大体わかりました」
「今日のところはいろいろ事情があったんでしょうし、警察には連絡しません。でも、次こんなことがあったり見かけたりしたら容赦なく突き出しますからね」
「はい」
「あ、そういえば聞き忘れてましたね、お名前なんて言うんですか?」
「大友 みのり、十九歳です」
「わかりました。俺は高島 哲人。大学一年生です」
「哲人さんですね。大学一年ってことは同い年ですね! よろしくお願いします」
「いや、俺は今度なんかあった時に警察に言うために聞いたんで、何もよろしくしないですよ?」
「そ、そんなぁぁぁ」
「いや、そういわれましても、自分の立場分かってますか」
「もちろん!」
そんな自信満々に言われてもそんな誇れることではないんだが。
「じゃ、もう帰っていいですよ」
俺はそういって彼女の手を縛っていた結束バンドを外す。
「ありがとうございます」
彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。そして、玄関のほうへと歩いていく。そのあとを俺は追う。
しかし、猫耳はつけたまま帰るのだろうか。
「ご迷惑おかけしました」
彼女は玄関まで行くとげた箱から靴を出してそれをはくと振り返りもう一度頭を下げてきた。おそらく、根はいい人なんだろう。てか、なんでげた箱に靴を入れていたんだろう。
玄関から彼女が出ると俺も靴を履き玄関を出る。
「どうかなされたんですか?」
俺が玄関から出てきたのに気が付いた彼女が不思議そうに問いかけてくる。
「家まで送りますよ。もう夜も遅くて危ないですから」
「いいですよ、そんな。見逃してもらったのにこれ以上ご迷惑をかけるわけには」
「それとこれとはまた別ですよ。俺もそこまで薄情じゃありませんから」
「本当にすみません…」
「じゃ、行きましょう」
そういうと彼女は再び歩みを進め始めたので後をついていった。
初めて書くので、最後まで目を通していただけるだけで感謝です。