第二章 彼女がいる日常(4)
「で、これはどういうことなのか説明してもらおうじゃない」
今、俺たちは料理に並んだ机を挟み席についている。俺の向かい側には麻衣が、隣にはみのりがいる。
「いや、違うんだよ。これは誤解で」
「何が誤解よ! てか、あんただれよ」
「えっ、私ですか。私は哲人さんの妻です」
「つつつ妻ぁぁぁぁぁ」
「変なこと言わないでください。麻衣、今のはみのりの冗談で断じてそういう仲じゃないんだ」
「そ、そんな。一緒に寝た仲じゃないですか」
「ねねね寝た! 一緒に寝た?」
「ただ寝ただけだろ! なんかあったみたいないい方は止めてください」
「じゃ、寝たことは認めるのね」
「うっ」
「この変態!」
「違うんですよ、哲人さんは悪くないんです。えっと…」
「麻衣よ。大沢麻衣、こいつとは幼馴染でこーんな小さいころから一緒に遊んでたんだから」
そういって親指と人差し指をぎりぎりまで近づける。
麻衣よ。それじゃ、俺もお前も生きてないぞ。
「麻衣さんですか。よろしくです」
「私は大友みのりです」
「そー」
「で、説明してもらおうじゃない」
みのりがかわいそうだから、そんなじゃけんにしないでやってくれ。天然なだけだから。
「実は、かくかくしかじかで…」
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「はぁぁぁ! ほんっとあんたってとんだお人よしね。見ず知らずの人を止めてあげるなんて、しかも自分の家に入った泥棒を。バカなの? ねぇ、大バカなの?」
俺は今までのことをありのまますべてを話した。あ、一部面倒くさくなりそうなことは言ってないや。
とりあえず、見ての通り話し終えた直後になじられた。
「だってよ、ほっとけないじゃんかよ」
「黙りなさい!」
「はい」
「まったく。それに、大友さんも大友さんよ」
「はい?」
「こいつがへたれチキンだったからよかったものの、知らない男子の家に泊まるなんて襲ってくださいっ
て言ってるようなものよ。男はみんな狼なのよ。わかってるの」
「いえ、哲人さんじゃなかったら泊まってませんよ?」
あれ、なぜか間接的に俺が傷つけられている気がするんだが気のせいだろうか。うん、気のせい。
「そういうことを言ってるんじゃないの!」
「はぁ、もういいわ」
どうやら終わったみたいだな。あれ? そういえば。
「てか、お前は何をしに来たんだ」
「そ、それは」
ん? どうしたんだ麻衣の奴、急に顔を赤くして。
「こ、これを持ってきてあげたのよ」
そういうとタッパーらしきものを俺の前に出してきた。
「これは、肉じゃが、か」
「べ、別にあんたのために作ったわけじゃないし。ちょっと作りすぎちゃって、どうせ今日もコンビニと
かだと思ったから持ってきてあげたのよ。そしたらあんたが女を連れ込んでたってわけよ」
「べつに連れ込んだわけでは」
「なに?」
「ナンデモアリマセン」
くそ、なんでこうついてないんだ。てか、なぜみのりはさっきから笑っているんだ。もとはといえばお
前のせいだろうが。
はぁ。まぁ、ここにいるのを認めたのは俺だしな。結局もとをたどると俺が悪いか。
「それで、なんで一食分ご飯が増えてるの…」
「麻衣さんの分ですよ」
みのりよ、なぜ余計なことをした。こいつには早々に引き取ってもらいたかったのに。
「なに? 私がいたら不都合でもあるの」
いや、すでに不都合が起きているのですが。まぁ、そんなことは口が裂けても言えないので沈黙を貫くしかない俺である。
その間に、みのりは麻衣の持ってきてくれた肉じゃがを温めてテーブルに持ってきたので、改めて食事をすることにした。
初めての作品なので最後まで読んでいただけるだけで感謝です。




